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第69話 水上の問題②

評価ポイントが念願の1,000pt超えました!


こちらは本日2話目です。

前話は12時の更新となります。

未読の方は是非ご覧になってください。

ガンッ、グラッ!


なんだ?


2日目も順調に進んでいた。

どうやら山脈の方で大雨が降ったらしく、昨日より明らかに水量が増していたが、気にする程度ではなかった。


ただ何かがぶつかった音が聞こえ、船体が大きく揺れてしまった。

思ったより揺れが大きく、勢いを殺せずワーネを押し倒してしまったが、まあ問題ではないだろう。

幸いにもワーネも若干頬に赤みがあるものの、倒れたことで怪我を負ったようではなかった。


だから、リーク怒らないでくれよ。

とりあえず武器に手を掛けるのはやめてくれ。

俺もわざとではないんだ。


……コッポコッポ…


嫌な音が船底から聞こえてくる。

まるで何かが入り込んでくるような…

そこまで思い至った俺は音が聞こえたであろう船室に駆け込む。


船室には幸いにも、音の発生源らしきものは見当たらなかった。

どうやらこちらではなかったらしい。


では、と船前方部にある倉庫の方へと向かった。


ゴポゴポ…


案の定船底に穴が開いていた。

しかも、かなりの量の水が入り込んできている。

増水した川の水のためか、濁っている。


「どうしたのだ?こ、これは!」

「まずいな、もう2割近くも水が入ってやがる。」

「穴もかなりの大きさだ。」


OXさん達も次々と倉庫の方へ来て、船底の状態を確認する。

そして、同時に事態の深刻さも理解しているようだ。

たしか〈レンテンド王国〉は海軍も持っていたな。

おそらく軍人にもなれば船の知識はある程度持っているようだ。


ここで考えられる選択肢は2つ。

1つが船を捨てて、岸まで泳いでたどり着くこと。

もう1つがなんとか船を維持したまま、接岸させて改修すること。


前者は、迅速な行動が可能だ。

幸いにも物資は少ないし、リメの《ストッカー》もあるから問題はない。

ただし、ここで船を捨てることになるため、海を目指すにしろ〈安息の樹園〉に戻るにしろ新たに造船する必要が出てくる。

これはご遠慮願いたい。


後者は、先を見越した行動になる。

川岸まで至るまで、船を維持し続けるのは、増水したことも踏まえるとかなり困難である。

だが、穴を塞ぐだけで、またすぐに船を使用することが叶う。

ケングもいるので、おそらく1時間程度で動けるだろう。

船を失う影響を考えるとこちらの方が好ましいか…


後者を選んだ方が良さそうだな。


そうとなれば…


「リメ!」


肩に乗っていたリメに声をかける。

詳しい指示を出そうとするも、それよりも先に俺が望んだ行動を始めてくれた。


穴を自分の身体で埋め、更なる水の流入を防ぐ。

また、倉庫内の水を一度ストッカーで受け入れ、その水を船外へと排出する。

同時並行で損害を解消していく。

このまま直せるのがベストだが、厳しそうだ。


リメにその場を任せ、皆でオールを握る。

すでに下流域なのか、川幅は広くなっており岸までおよそ20mといったところだ。


「よし、行くぞ!岸まで着けば何とかなる。」



不運は続くとよく言われたもの。

泣きっ面に蜂とはまさにこのことか。


「アクアスキッパーの軍団だ!」


誰かが言うや否や次々とアクアスキッパーが現れる。

狙いすましたかのようなタイミングに思わず、舌打ちが飛び出す。

しかも、数が多い。

先のアクアスキッパーの襲撃は様子見だったと言わんばかりだ。

10…20…30…確認できただけでも今まで襲われたことないほどその数は多い。


「おい、なんだあいつは…」


リークが指差した先には明らかに今までのアクアスキッパーとは違う奴がいた。

いや、アクアスキッパーであることは間違いないだろう。

ただその体躯は他の奴の2倍はあり、頭には王冠らしきものを被っている。


素早く《情報分解》をして確認する。



名前:名無し

種族:キングアクアスキッパー

立場:[敵(嫌悪)]水辺の住民の王

能力:《流体ボディー》《異種族嫌悪》

   《統率者:アクアスキッパー》

   《領域感知》Lv4《身体操作》Lv6

   《水魔法》Lv5


《流体ボディー》

  《流体移動》の上位互換スキルであり、固有ス

  キル。

  《流体移動》とは違い、容量的な制限は存在せ

  ず、自分の身体の大きさ未満の液体の中でも移

  動することができる。

  また、打撃系統による外傷を一定まで軽減す

  る。


《統率者:アクアスキッパー》

  《統率》の上位互換スキル。

  従来の能力に加え、認識した統率対象に対する

  絶対的な意思決定権を有する。

  また、統率対象に対する特効を持ち、被統率者

  に与えるダメージが2倍となり、受けるダメー

  ジは半分になる。



やはりと言うか、この周辺のアクアスキッパーのボス様らしい。

他のアクアスキッパーやそれのリーダー格とは一線を画す能力を持っていやがる。


本来のアクアスキッパーは群れると厄介なだけで、単体ではそこまで強くない。

魔物のランクで言うとギリギリCランク、リーダー格でもBランクあるかどうかである。

しかし、おそらくこいつはAはある。

もしかしたら、それ以上かもしれない。

集団で考えると、最早軍隊だろうな。

街レベルなら落とせるんじゃないか?


……どうやら、のんびりはしていられないらしい。

次々に周りのアクアスキッパーに指示を出している。

残念ながら、何を言ってるかまでは分からない。

独自の言語を持つと言っていたからな。

しかし、やりたいことはなんとなくだが分かる。

徐々に包囲して近づいてきているからな。


リメには申し訳ないが、しばらく耐えてもらわなくてはな。


「総員戦闘態勢を取れ!死角をなくし、連携を取り続けられるよう気をつけろ!」


OXさんからの指示が飛ぶ。

それはそうだ。

今の最優先事項は、アクアスキッパーの群れへの対処だ。

オールなんて持ってる場合じゃない。


お互いの距離が次第に近づいていく。

今から起こるのは、戦闘じゃない。

戦争だ。

不思議と汗が滲み出てくる。



『ケェーー!』


キングアクアスキッパーの掛け声と共に、アクアスキッパーが船へ襲いかかる。

皆はお互いに気をつけながら、船に乗せまいと奮戦する。

《流体移動》のスキル効果か、機動力が信じられなく早い。


ザザザザザザザザ…


チャポン。


絶え間なく襲いかかってくる。

右へ左へ後ろへ前へ上へ下へ…

目まぐるしく相手の位置どりは変化していく。


ただこちらも陣形を保っているおかげで、被害はあまりない。

切り傷や打撲程度で済んでいる。

女だからかワーネの位置がよく狙われているが、俺とリークでフォローしている。


だが、このままだと戦況は膠着状態に陥る。

何とかしなくてはならない。



『ケェー、ケッケ!』


いつまでも続くかと思われたが、ついにキングアクアスキッパーが痺れを切らし、動き始めた。

そのスピードは他のアクアスキッパーでは比較にならないほどだ。

一瞬にして、OXさんの前に現れたかと思うと、その剛腕で殴ってきた。

どうやら指揮官であるOXさんを潰すことにしたようだ。


OXさんもなんとか視認できたようで、慌てながらも剣でしっかりと受け止める。

さすが《自重操作》持ちというべきか、完全に衝撃を殺しきっている。

しかし、お陰で若干船が傾いたな。

いや、一瞬で持ち直した。


その後も何度かOXさんを強襲する。

剛腕で殴るだけでなく、水魔法による攻撃も与えてきた。

しかし、OXさんもその度に船が大きく揺れるものの、無傷で受け止め続ける。

勿論俺達は他のアクアスキッパーを撃退し続ける。


およそ十数回にも及ぶ剣戟の末、キングアクアスキッパーは船から距離を置いた。

これで一安心かと思いきや、またアクシデントが起こる。


「きゃっ!」


船が大きく揺れ、ワーネが思わず小さな悲鳴をあげる。

その結果、体勢を大きく崩してしまうことになった。


ーー隙が生まれてしまった。


『ケェーケ!』


狙いをワーネに変えたのか、その位置から水魔法を放ってきた。

先ほどまでも見た同じ技だ。

しかし、なんだか嫌な予感がする。


「避けろ、ワーネ!」


声を掛けるもまだ安定しきっていない船の上であるせいか、迎撃体勢を取れていない。

これは一刻も争う事態だ。


「すまん!」


気づくと俺はワーネの方へ駆け出し、ワーネを逆サイドにいたリークの方へと押した。


「ぐむっ。」


リークもなんとか受け止めてくれたようだ。


そして、嫌な予感は当たった。


俺の目の前に迫る水魔法の中からキングアクアスキッパーが現れた。

今まで見せたことなかった攻撃手段だ。

これはおそらく《流体ボディー》の能力を活かした攻撃、奥の手であったのだろう。


飛び込んできたキングアクアスキッパーの目にも、トドメだ、と言わんばかりの感情が見て取れた。

時間が止まったように思えるほど、遅く過ぎていく。

俺が弾き飛ばしたワーネも必死な表情を浮かべている。



ああ、これは危機的状況に陥ると起こる現象か…




まあ、問題ないんだがね。


俺は《分解結界》を張り巡らせた身体で受け止めると、そのまま同じように《分解結界》を張った異刀:不抗の一太刀で切り捨てた。


断末魔も発せないよう、綺麗に頭と胴を切り分けた。

他のアクアスキッパー同様に、紫色の血が身体に降りかかってくる。

汚いな、まあ《分解結界》で汚れは勝手に流れ落ちてくれるからいいのだけどな。


周りのアクアスキッパーはボスが討ち取られた様を見て、恐慌状態へと陥ったようだ。

周りを見ずに逃げる者、ヤケクソで襲いかかってくる者。

後者を切り捨てながら、騒ぎが収まるのを待つ。


これでしばらくはこの川も安全に航行できそうだな。

そんなことを思っていたら、俺が間一髪のところで避難させたワーネが側に来た。


「ありがとう、助かったわ。これはそのお礼。」


言い終わるや否や、俺の頬に()()()()()()が残る。

ふふっ、これは色々とまずいな。

しっかりとリークに見られていたようだ。

毛が逆立ったように怒っていやがる。



この後、どう宥めるか考えながら、皆でオールを漕ぎ川岸へと向かった。

次回更新日は明日です。お見逃しなく…


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