第67話 魔道具の問題
すみません、投稿ミスで一昨日の18:00更新分を投稿し忘れてました。
そのため、今日急遽更新します。
今後はこのようなことがないよう気をつけます。
本日はこの1話のみの更新となります。
魔道具。
ファンタジー定番中の定番。
おそらく多分きっと地球にはなかったであろうもの。
古代遺跡から見つかる高度な技術のオーパーツは実はそれなのかもしれないが、今更確認する手段はない。
レインからこの世界の常識ということで教えてもらっていた。
なおかつ、異世界ものによく出てくる物であった
だけに存在自体はすっと受け入れることができた。
簡単に言うと、電気の代わりに魔力で動く道具である。
厳密には魔力ではなくそれの元になっている魔素がエネルギーとなっている。
動作が単調である場合に関しては、ただ魔力ないし魔素を通すことのみで魔道具として働く。
動作が複数必要になったり複雑な動作が求められる場合は、魔力板ーー電化製品でいう基板が必要となる。
魔力板作成は《魔道具作成》などの魔道具を作るためのスキルが必須となり、スキルを持たざる者が複雑な魔道具を作ることは不可能となっている。
逆を言えば、簡単な魔道具に関しては、スキルを必要とせず知識のみで作成することが可能だ。
大層なことを言っているが、その実電化製品ほど発達しているわけではない。
スマートフォンやテレビ、パソコンのようなものは存在していない。
車や電車、飛行機なども同様にその影はない。
冷蔵庫やクーラーは似たようなものがあるものの、技術的なことを言えば、地球における初期のそれと変わらないレベルだ。
それの原因であるのが、魔法という文化だ。
この世界ではその文化が成熟しているため、科学的な分野はほとんど発達していない。
魔法はそれ自体で様々なことを引き起こせ、使い慣れると自分の手足のように扱える。
何か道具を用いずとも、生活が苦になることはなくなり、魔道具に頼る必要もあまりないのだ。
そのため、魔道具の発展は緩やかになっている。
こんなところかな。
レインに聞いたことをまとめてみたが、大筋は合っていると思う。
「この認識で大丈夫ですか?」
俺は双子妻に確認を取る。
今、俺はOXさん家のリビングにある机越しに彼女らと話をしている。
勿論、OXさんからはその許可を得ている。
許可を得ないと間男みたいな感じがして、申し訳なく思ったからだ。
ちなみに、俺の隣にはニコニコしながらルテアが座っている。
「合ってるわよ、認識で。」
「それで作れというの、魔道具を?」
うーむ、ほんとに見た目がそっくりだな。
今は髪飾りの形と位置で見分けられてはいるものの、同じ物を同じ位置につけられたら、到底俺にはどちらがどちらか当てることはできないだろう。
ウェス、イースの順で話したのが分かったのも髪飾りのおかげだ。
「イースさんの言う通りですよ。拠点の発展のため、是非作っていただきたいのです。」
うーむ、この2人の前だと自然と敬語になってしまうな。
OXさんにはバリバリのタメ口で行けるってのに。
これが30越えた女性の…ひっ、何でもないです…
思考を読んだかの睨みに怯んでしまった。
「……はあ、別に構わないけど。」
「いくつか質問に答えてくれる?」
「はい、どうぞ。それは当然の対価です。」
対価と言えるほどの対価ではないけどな。
質問に答えることなぞ難しくない。
「なんで私達に頼むの?」
「うぐ…」
イースの質問に思わず唸ってしまった。
そう、俺は双子妻が《魔道具作成》のスキルを持っていれことを本人達から教えられていない。
しかし、この世界の常識的にスキルを持たざる者に魔道具を作ってくれと言うのはおかしいのだ。
それなのに、俺は魔道具を作ってくれるように頼み込んでいる。
ここで矛盾が生じているのだ。
俺が能力で確認しましたというのは、本来なら簡単だ。
実際、《情報分解》を使って知ることができたんだからな。
たいていの場合はおそらくこの一言で片がつく。
しかし、厄介なことに双子妻は《隠蔽》のスキルを持っている。
戦闘力に差がない限り《鑑定》で相手の能力を知ることはできないはずなのだ。
双子妻はこう見えて、拠点内でもトップクラスの戦闘力を持つ。
それなのに俺が能力を見抜いてしまった。
その結果、俺は隔絶した戦闘力を誇るか、《隠蔽》すら無効化する《鑑定》の上位スキルを持つという結論に至ったのだろう。
だから、先の一言は決して言葉通りの意味ではない。
どうやって自分達の実力を暴いたのか教えろ、ということだ。
「たしかに魔道具を作ることはできるわよ。」
「それをどうしてあなたが知ってるの?」
追求が止まらない。
素直にゲロっちゃうのが得策か?
けど、今後も味方でいてくれる保証がない相手には教えたくないんだよな。
「……ねえ、ジョー君の能力見てみてよ。」
「なによ…あら、見えないわね。」
しまった、ついに《鑑定》も使われたのか!
これも俺には通用しない。
おそらくだが、固有スキルレベルの鑑定系スキルでも見ることは叶わないだろう。
なぜなら、俺は【分解】の権能の1つである《認識分解》で無効化させているのだから。
けど相手からしたら、また謎が深まったのだろう。
双子妻の顔が怪訝なものへと変わっている。
しょうがないから、能力の詳細は伝えずに種明かしをするか。
「自分の能力で調べました。ちなみに俺の能力が見れないのも、能力の1つです。」
「「ふーん…」」
若干視線が痛い。
「「まー、いいわ。」」
大丈夫らしい。
「ただ勝手に能力を見るのはいただけないわね。」
「もう少しデリカシーというものがないのかしら?」
「うっ、ごもっともです。」
なんかいつも迫力に押されている気がする。
ただデリカシーという問題では、あながち否定はできない。
……今後は留意いたします。
「それで魔道具を作れって話よね。」
「さっきも言ったけどそれ自体は別に問題ないわ。」
「そうか、助かる。」
丁寧な言葉遣いをしてたら、嫌だと言われたので双子妻相手にもタメ口にした。
うーん、なんかタメ口でいい気がしないんだよな。
「けど私達は戦闘系の魔道具なんて作れないわよ?」
この世界で魔道具は大きく分けて2種類ある。
それは戦闘系か非戦闘系かである。
勿論構造の問題とか、魔力盤の有無とかで分ければ、もっと細分化はできるが大きく分けるならこの2つになる。
戦闘系はいわゆる剣とか杖とか、戦闘を補助する為の物だ。
一方の非戦闘系はいわゆるコンロとか証明とか、生活などの非戦闘領域で用いられる物だ。
おそらく双子妻は戦闘系の魔道具を頼まれると思ったのだろう。
なにしろここは〈不抜の樹海〉。
今日明日で死んでしまってもおかしくないような場所なのだ。
戦う為の手段が必要だと解釈したのだろう。
俺はそんな物騒な魔道具は欲していない。
十分に俺の持つ能力で生きて戦い抜くことができる。
「――ちょっと聞いてるの?」
「ん?ああ、別に戦う為の魔道具が欲しいわけじゃないよ。」
「じゃあ非戦闘系ってこと?」
「そういうことだ。」
「まあ非戦闘系なら比較的簡単だから全然構わないのだけど…」
「具体的にはなにが欲しいの?」
「とりあえずは照明を作って欲しい。今はルミレットフライの発光器官を使い回しているだけだから。」
「へえ、魔道具だとばかり思ってたのだけど。」
「……よく見るとそうね、もっと効率良く光らせることができそう。」
そう、今の照明はあくまでもルミレットフライの発光器官の使い回しに過ぎない。
そのため、魔石はルミレットフライの物かBランク以上の適正光の魔石しか使えない。
魔石はたくさんあるとはいえ、限度がある。
適正光の魔石はそのものがまずレアだ、ましてBランク以上となると見たことがない。
そうなると、魔石の在庫は十分とは言えない。
そのため、まずはどの魔石でも使える照明器具をこさえて貰いたいのだ。
効率は多少悪くてもいいが、せめて魔石の適正をなくしてもらいたい。
このままだと、何ヶ月に1回のペースで例の洞窟まで赴かないといけない。
しかも、ルミレットフライの数を調整しながら採取しないと、個体数が減っていき、最悪の場合二度と取れなくなる可能性すらある。
だから、頑張ってもらいたい。
「まあ、それなら。」
「1週間もあれば。」
「ほんとか!じゃあよろしく頼むよ。必要な材料があったら、用意するから言ってくれ。」
とりあえず照明の魔道具を作ってもらえることになった。
そう、あくまでもとりあえず。
ふふふ、数年後には地球に似た環境になってるかもな。
俺は地球の頃に分解したことのある電化製品を次々と思い出した。
次回更新日は10/4(日)です。
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