第15話 異世界3日目の夜
こちらは本日2話目です。
前話は12時の更新となります。
未読の方は是非ご覧になってください。
「――というわけなんだ、なんかこの地の情報を教えてくれ。」
『もうしょうがないわね、私がいないと何もできないんだから♪』
今日もなぜかテンションの高いアイネさんに問題解決のためにヒントをいただく。
……ほんと昨夜からどうしたいんだろう?
変なもの食べたりしたのかね。
『ふふ、いいのよ。私は至って正常。何も心配はいらないわ。』
どんどん化けの皮が剥がれていくな、このチョロ女神。
最初に会ったときの荘厳さがまるでない。
まあこれが親しくなった人にのみ見せる素の顔なんだろうな、と思うことにした。
もはや秒読み感がプンプンしている。
「あ、ああ、じゃあよろしく頼むよ。」
気を取り直して、聞きたいことを整理する。
今やりたいこととしては5つある。
1つ、室内の光源確保。
1つ、調味料の確保あるいは生産。
1つ、衣服の素材確保。
1つ、各種金属の素材確保。
1つ、人手不足。
これらが目下の課題である。
一応上から下へと優先度が変わっていく。
勿論上に行くほど優先度は高い。
『……室内の光源確保ね。光源がないと、なにか支障でもあるのかしら?』
「夜に作業できそうなものは夜のうちにしてしまいたいんだ。月明かりでもできなくはないが、より確実に作業をできるようにしたい。明かり目的で火を使うのは延焼防止のために避けたいんだ。」
『なるほどね……一応方法としては2つあるわ。』
そう言ってアイネは提案してくれた。
一方はブライトモスという、いわゆる暗闇で光るコケだ。
水と空気があれば、このコケは生命維持できるらしく手間がかからないと利点がある。
ただこれは半永久的に夜間は光り続けるらしく、このコケが光らないようにすることはできないとのこと。
もう一方はルミレットフライという、いわゆるホタル型の魔物だ。
この魔物の臀部にある発光器官と魔石が繋がっており、簡易的な電球になるらしい。
さらに少し手間を加えると、光量の操作も可能とのこと。
ただし魔石の定期交換が必須であり、同種の魔石か魔石ランクB以上の適正光の魔石でなくてはならないらしい。
どちらも一長一短って感じか。
まあ両方とも洞窟に行けば素材として確保できるらしいから、実際に作るときに考えればいいか。
『調味料は確かに大事ね、ただすぐ手に入りそうなものは塩しかないわ。他のものは樹海外に行って交換するか種を手に入れて栽培するかしかないわ。』
うぐ、想定はしていたがやはりそうか。
この地に普通の調味料になりうる植物なんて生えてないだろうしな。
塩があるだけでもありがたい。
ちなみに主食になりうるものはイモの一種があるらしい。
落ち着いたらそれの栽培でも目指してみるか…
『塩は、海と山に囲まれていることもあるから岩塩と海塩両方とも手に入るわよ。多少テイストも違うらしいし、参考にしてみてね。』
なるほど、塩でもバリエーションがあるならまだマシかな。
山方面は洞窟の都合上行かないといけないし、海は魚を手に入れられそうだな。
よし、両方とも行こう。
「衣服の素材の確保は、簡単に言うと糸が欲しい。動物由来でも植物由来でもいいから、とりあえず長持ちしそうな強度が好ましいな。」
こちらの世界に来て3日だが、その間ずっと高校の制服を着ている。
一応、リメに頼んで、生活魔法の中の《洗浄》という魔法で洗濯して、清潔に維持している。
ちなみに生活魔法とは、こちらの世界の住人なら10歳になると自動的に取得できるというスキルらしい。
持っていて当たり前のスキルらしく、《鑑定》系の能力で見てもスキル名として浮かび上がらないらしい。
俺の《情報分解》でリメを見た時も出てこなかった。
とりあえずTPOに応じた服が欲しいのだ。
制服は動き辛いし、あと癖でなるべく汚さないように意識してしまうので行動に制限がかかってしまう。
建築作業用、農作業用、狩猟用、夜間着…
この辺りは是非とも作りたい。
『そうなると、動物系になるわね。一番いいのはクモ型の魔物の紡いだ糸ね。それか少し劣るものの、蛾型の魔物の幼生体が吐き出す糸もあるわ。』
「前者でお願いします!」
食い気味に答えたのには訳がある。
実は個人的に苦手なものの1つが、脚らしき脚のない這う系の虫である。
蛾の幼生体ということはすなわち幼虫であり、確実に這ってくる。
……考えただけで鳥肌が立ってきた。
『ふふふ…』
「な、なんだよ。」
『いえ、ジョーにも苦手なものがあったと思うとね。それを知れてちょっと嬉しいの。』
「……ふーん、そうか。それはなによりだ。けどまあそれを利用して脅かしてくる子は俺は嫌だな。」
「そ、そうなの?お、覚えておくわ…」
チョロ女神様に一応牽制しておく。
多少なら勿論許せるが、調子に乗られたくないと思って思わず釘を刺してしまった。
反省。
けどまあ案の定俺から嫌われないようにしていることが確認できた。
不幸中の幸いといったところか。
「少し強く言い過ぎたな、悪かった…」
『いえ、いいのよ。じゃあ話に戻るわね。』
クモ型の魔物は種類も多いが、大体は森の中に巣を張り巡らせて生活しているらしい。
まあ先の2つの問題解決中に遭遇しそうだし、その時に採取すればいいか。
『鉱石ね……これは山方面行けば手に入るわよ、なんなら洞窟行くんだし取り放題よ。』
まあそうだよな。
洞窟のくだりで想像はついていたよ。
『まあ、鉄、銅、ボーキサイトといったものはここからほぼ真西にある洞窟内に鉱脈があるから参考にしてみてね。』
よし、有益な情報ゲット!
探さないといけないと思ってた洞窟の位置まで知ることができた。
これは非常に助かる。
『人手に関しては、ちょっとどうしようもないわね。私はこちら側から手出しできないし、かといってそこを訪れる命知らずもいないだろうし…』
この問題は解決できたらいいなぐらいのものだから、想像通りの結果だ。
早くこの環境整えてしまわないとな。
「聞きたいことは聞けたよ、ありがとう。これで明日からのやることが決まった。」
『そう、頑張ってね。応援してるわ。』
すると、アイネは一息ついた。
俺が次の言葉を待っていると、アイネは声色を変えて聞いてきた。
『……ねえ、今日の昼過ぎぐらいなにしてたの?』
ん?おかしな質問だ。
「え、なにって言われてもリメと一緒に狩りをしに行ってたよ。」
『そ、そうなの?あのね、それぐらいの時間帯にあなたのことを感知できなくなったの。それで何かに巻き込まれたんじゃないかと思って…』
「いや、そんなことないよ。いたって平和だったさ。危険な魔物に遭遇どころか、動物にすらほとんど会わなかったよ。」
俺は笑いながらそう答える。
すると、アイネは少し悩んだように唸ってから一言述べた。
『ジョー、もしかして《隠蔽》とか《気配遮断》のスキルでも覚えた?』
まさか、と笑いながら俺は自分に対して《情報分解》を使用した。
………能力が進化してやがった。
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