設定資料① 三人の名前に隠された意味
このあとがきでは、登場人物の謎や世界観の設定など、物語の中で語りきれなかった世界の裏側を、作者の視点から解説していきます。
※ 本編のネタバレを含みます。未読の方は、先に本編をお読みください。
『HOME』の主な登場人物の三人の名前には、それぞれの物語における役割が込められています。名前の意味を知ると、この物語の構造がより鮮明に見えてくるはずです。
ハンナ ── 花
ハンナは、もともと「ハナ(花)」という名前でした。それではあまりに直接的なので「ハンナ」に変えましたが、意味は同じです。
第1章のタイトル「根のない花」——これはそのままハンナ自身を指しています。どこにも根を張れない。この世界に属せない。美しくはあっても、土と繋がっていない花。それがハンナという存在でした。
レン ── 蓮
レンは「蓮」を意味しています。
ハンナとレン——二人とも植物の名前を持っています。これは偶然ではありません。二人はどちらも超古代文明の血筋であり、巨樹と繋がりを持つ存在です。植物の名前を持つ二人が、植物に支配された世界の秘密に近づいていく。名前がそのまま、二人の運命を暗示しています。
ツムギ ── 紡ぎ
ツムギは「紡ぎ」を意味しています。
紡ぐ——糸を撚り合わせて一本にすること。そこから転じて、人と人との絆を意味する言葉です。
ツムギは植物の名前を持っていません。巨樹との繋がりも、超古代文明の血筋も持たない。ツムギはこの世界の秘密とは無関係な、ただの人間です。
しかし、だからこそツムギにはハンナとレンにない力がありました。二人の未来を紡ぐ力です。
レンの背中を押して森へ送り出したのはツムギでした。フェンスの前で待ち続けたのもツムギでした。そしてハンナに「おかえり」と言ったのも、ツムギでした。
ハンナとレンが植物の名前を通じて巨樹の世界と結ばれているなら、ツムギはその名の通り、二人の間に絆を紡いだ存在です。ツムギがいなければ、レンはハンナを迎えに行けなかった。ハンナは帰ってくる場所を見失っていた。
根のない花と、泥の中から咲く蓮。その二つを結びつけたのは、巨樹の力ではなく、ひとりの少女が紡いだ絆でした。




