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セリアとアリスはフォガンタム子爵家の双子の姉妹だ。
二人は揃ってバターを溶かしたような金髪と焼きたてのパンのような茶色の瞳を持っている。
「セリア! カーティスが来たわ」
「今行くわ!」
アリスに呼ばれ、セリアは読んでいた本に栞を挟んでから中庭に向かった。
中庭にはお茶の用意が整えられていて、既にアリスとカーティスが着席している。
「遅くなってごめんなさい」
「そんなに待ってないよ」
カーティスはセリアの到着に合わせて立ち上がり、自然な動作で椅子を引いた。
これは幼少期から染みついた当然の流れであって、これがアリスであってもカーティスは同じことをする。
「でも、もうクッキーが2枚減ったわ」
「カーティスったら。お腹が空いていたの?」
「ちがう、俺は1枚しか食べてない」
「アリス?」
「だってとっても美味しそうだったんだもの」
アリスはまったく悪びれた様子もなく、軽く肩をすくめた。
セリアはそんなアリスが愛おしく、小さく笑う。
そして自分の割り当てを1枚譲ってやった。
「おい、セリアの分が減るだろ」
「いいのよ。次にローズマリーのクッキーが出たときに1枚もらうわ」
「任せて! 絶対に忘れないわ」
セリアだって甘いクッキーは好きだ。
でも、アリスの方がもっと好きだから。
より好きな方が多く食べればいい。
セリアはそういう考え方をする少女だった。
幼馴染のカーティスは街道を進んだ先にある他領の三男で、双子より一つ上の19歳。
短く切り揃えた栗色の髪と瞳を持つ、健康的な若者だ。
家同士の約束で、将来は双子のどちらかと結婚し、婿入りして家を継ぐことが決まっている。
セリアとアリスには見た目も含め、ほとんど違いがない。
それでも一応セリアが姉であるからか、長女として振る舞う場面が多かった。
その影響か、いつしか周囲は自然と家に残るのは姉で、妹はいつか他家に嫁に行くのだろうと考えるようになっていった。
そして子供たちもまた、どうやらそういうことらしいと察していた。
だからカーティスはセリアを大切にしたし、アリスを仲間外れにして寂しい思いをさせるようなことはしなかった。
姉妹もまた同様に、三人で過ごす時間を殊更に大切にしていた。
その日、姉妹が父に呼ばれるまでは。




