侵入される王宮
『……ダガント』
「はい」
『お前、“俺の代わり”やろうとしてるだろ』
ダガントは一息吐いて、
「滝様、私は、最初からそのつもりでしたよ 影武者ですから」
滝は目を開く
「私は、最初から、滝様の影武者です」
「滝様が表に立てない時。
滝様へ敵意が集中した時。
滝様が守るべきものを守る時」
ダガントは目をキリッとして
「私は、そのために存在しています」
滝はゆっくり話す
『だとしても…俺のために、犠牲は増やしたくないんだ!』
「滝様… あなたは、お優しい」
『優しいとか、そういう話じゃない』
『俺は嫌なんだよ』
滝の声が少しはっきりになる
『俺を助けるために、誰かが傷付くのが』
ダガントの声は穏やか 長いポニーテールが揺れる
「私たちは、滝様のためだけに戦うのではありません」
『みんな大事だから』
ダガントは、静かに微笑んだ。
「やはり、お優しい そうでなければ、リーダーは務まりません」
「力だけなら、もっと強い者もいたでしょう」
トヴァースが静かに聞いている。
「判断力だけなら、もっと冷静な者もいたかもしれません」
仲間を見捨てないと、皆が知っていたからです」
滝は言葉を失う。
ダガントは少し笑った。
「だからこそ、智嬉様も、純様も、司令官様も皆、滝様の隣に立ったのでしょう」
滝は苦笑して
「そうかもしれないな でも、どうして俺の影武者なんかに?」
ダガントははっきり話す
「貴明様からの、遺言だからでございます」
「親父から?」
ダガントの回想
「"あの子"は必ず私を引き継ぐ」
「今生まれてくるお子様のことでしょうか」
「ああ」
貴明は優しく笑う。
「きっと強くなる」
貴明は静かに続けた
「強い者は、前に立たされる
皆を守れと言われる
そして、いつの間にか――」
少しだけ、声が低くなる
「自分が守られることを忘れる」
ダガントは、
「それは、優しいお子様ですね」
貴明は、少しだけ目を丸くする
「……優しい子、か」
ダガントは静かに頷く
「はい自分が守られることを忘れるほど、誰かを守ろうとするなら」
若いダガントは、真っ直ぐ貴明を見た
「きっと、とても優しいお子様です」
回想終わり
滝と智嬉がモニター前で黙って聞いていると
敵の反応があった
「……虫唾が走るよ!!」
智嬉は振り向く
「誰だ!!」
「私は滝様の代わりではない だが、滝様へ届く悪意は…、私が受け止める!」
担架を切ったその声は、エリーナの声だった
「あっははは! まさか影武者とはねえ…やるじゃない」
エリーナは肩を震わせながら笑う
「でも残念ねぇ 滝じゃないなら興味ないわ」
ダガントが大槍を構えた
「興味はなくとも、我が王宮に、無断侵入者なのには変わらん!!」
「へぇ……影武者ってだけじゃなく、王宮の番犬でもあるわけ?」
「番犬ではない!!」
ダガントは言い返しながら、大槍を構え直した
「私は王宮を守る兵だそして、滝様の仲間だ」
「面白いわね」
「何がだ」
「影武者っていうのは普通、自分を消すものよ」
ダカント再び大槍を構える
(今は訳あって国王ロダ様は手が空けん…ならば)
「私が動くしかないのだ」
トヴァースも敵陣に突っ込む
「行け。ただし深追いはするな」
「承知!」
ダガントは大槍を回す
「はああっ!! ゆくぞ!!」
エリーナは一瞬強ばるが、腕で顔をガードした
「!」
「――爆槍突き!!」
衝撃波がエリーナへ突き刺さる
「くっ……!!」
エリーナの腕を守る炎はじりじり揺れ動く
ダガントは一歩踏み込む
「はああああっ!!」
その戦闘を司令官室のモニターで見ていた俺たちは
「司令官、助太刀しなくていいんですか!?」
司令官は俺に向かって、
「陽仁 王宮が狙われたということは 我々側にも敵が来るぞ」
「じゃあ本拠地も危険ってことですか」
「そうだ今のうちに、防御を固めなくては」
司令官が能力心臓部へ向かうと
何やら異音がしてきた
ゴゴゴゴ…
地響きにも似た、なにかが来る音
「な、何奴!?」
智嬉が構える
「ここから先は通さねえ…!!」




