お互い様
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「ここまで走らせたら、誰にも聞かれる事はないだろ」
「そうね。後ろからの追手もいなさそうだし」
「……楽しそうに言うなよ。帰るのが億劫になるだろ。ご機嫌を取るのを一苦労なんだからな」
キテールに行く事自体面倒なのに、寮に戻ってきた時もキツイのが待ってるのが分かってるのが辛い。
「帰る時にはお土産を用意しておくわよ。その分、色々と聞かせて貰うのあるし、頼みたい事もあるから」
「それはお互い様だな」
【妖艶】は商人組合として本部との繋がりがある。俺の場合、イズン支部の職員ではあるが、本部とは別。
互いにこの仕事についた理由を知りたいわけだ。
だが、頼みたい事が何かは分からない。オークションに参加させるつもりか? だとしても、フレアの従者と予想は出来そうなものなんだが……
「まずは私から聞くわね。一つ目、【無法者】が解散したと噂が流れているようだけど、事実なわけ?」
【無法者】メンバーが各自で別々で動いている事は、本部はおろか、ハンター達も知っている。解散という噂が立つのも仕方がない話だ。
しかも、その中で【道化師】だけが姿を消している事も謎になっているらしい。
「解散はしてないぞ。今は各自がやりたい事をしてるだけだな」
「そうよね。貴方達を知る人間からすれば、解散するのはないわ。異世界への執着心が半端ないから」
俺はそんな話を【妖艶】にした事はなかったが、【卑怯】が勢い余って口を滑らせたのか。
もしくは、【死天使】が【妖艶】を俺から引き離すために伝えたのか。
はたまた……【妖艶】が普通にメンバーへ尋ねたのかもしれない。
【無法者】は異世界を目指している。其々の目標はあるが、目的は同じ。その理由までは誰も言ってないはず。
「協会の職員になったのも、異世界の情報が入るかもしれないからでしょ。しかも、本部所属じゃない。本部なら、私の耳に入るからね」
【妖艶】は自身と本部との繋がりを示唆するが、それを教える時点で、良い関係とは言えないのではないか。そんな風な言動はあった。
「それもあるな。【妖艶】も人の事は言えないだろ? 商人組合を組織するのもそうだが、本部との繋がりを持つのはどうなんだ? お前の目的とは反してる気がするぞ」
【妖艶】も本部を善しとは思っていなかった。だからこそ、【無法者】と行動出来たのもある。
今は本部の軍門に降っている。それが彼女の目的、目標でもあるゴイゼン所長との恋愛を成就させるとは思えない。




