白馬の
「……普通の馬車で良かった。白鳩の……組合のマークも付けてるし。専用とか言ったから、派手な馬車かと思ったぞ」
【妖艶】が乗ってきた馬車が置いてある場所にやってきた。隣には俺達が乗ってきた馬車もちゃんとあったのは安心だ。
それに馬車が盗まれないように組合メンバー二人が待機していた。
この馬車も本来は俺達のじゃないから、使用はアキテール支部に任せても良いと思ってる。
「馬車じゃなく、馬よ。白馬を私は好んで使ってるわけ。私は先に帰るけど、この馬車を元の場所まで戻すまでは警備をしたままでお願いね」
「分かりました」
この二人は俺を敵視せず、素直に【妖艶】の指示に従い、頭を下げる。服装は組合の制服だが、アキテール支部にいたメンバーと毛色が違っている。
「……彼等は商人じゃなく、護衛担当よ。協会本部じゃなく、私が選んでるから問題ないわ。勿論、勧誘したわけじゃなくね」
俺が何かを言う前に、【妖艶】が先に答えた。
「仮面がない分、表情が分かりやすいのよ。お互いに気になってる事があるわけだし、さっさと行くわよ」
俺は御者として前から馬車に乗り、【妖艶】は後ろからに乗り込んだ。馬車の中を覗いてみると、振動を和らげるマット等が置かれている。外側は普通でも、中は快適にはなってるようだ。
「はぁ……俺が行く羽目になるのか」
「何か言った?」
「俺が道を覚えてるかどうかって事だ」
「大丈夫でしょ。街道も整備されてるし、方向は分かってよね?」
「そうだな。馬車を動かすぞ」
俺が溜め息を吐いたのは、キテールの場所が分からないのではなく、ジルオールに対してだ。
商人組合、バッド組合を調べるように言ったが、俺自身が行く事になると、フレアの護衛をさせるべきだったと後悔。
バッド組合のリーダーが【妖艶】だと知っていたら、ジルオールを向かわせる事もなかった。
彼女の目なら、ジルオールを見つけてしまう。そうなる前に止める必要が出てきた。それが面倒で仕方がない。
【妖艶】から情報を得るか。組合の中から引き抜くか。前者の方が有用な気がする。
「誰かが付けてる気がしてたんだけど」
馬車の後ろの垂れ幕は開けた状態になっていて、【妖艶】はそれを確認している。しかも、少しニヤけた声で、俺に話し掛けてくる。
「……俺も途中で気付いたけど、気にしなくていいと思うぞ」
「気にしなさいよ。後で何かしてあげてよね」
【妖艶】だけじゃなく、俺も尾行に気付いていた。アキテール支部から少し離れてからだと思う。
「レイさんの馬鹿!!」
尾行してたのはフレア。自分を置いて、【妖艶】に付いて行く事に腹を立てた結果だ。
流石に馬車に乗り込むのは無理で、叫ぶ事しか出来なかったんだろうな。
戻ってきてからも面倒な事間違いない。流石に【道化師】の話までは聞かれてないとは思うんだが……




