貴方のために
「そうよ。ハンターを辞めたのも、そのためだから。振り向かせるための自分磨きもあったし、異界に行かせるわけにもいかないでしょ」
「そうだ!! 今思い出した!! 【妖艶】が」
「【妖艶】の呼び名は止めてよね。私も二つ名は封印してるから。【誘惑】もそうだけど、スキルも一切使ってないから。パッシブも制服が制御してるし」
「そうなのか? 確かに俺を見る時にスキルを発動させるとは思ったんだが」
「誰かに効果がなかったら意味がないからね。そもそも、スキルで強制的に好きになってもらうのも違うでしょ。貴方が言った事なんだけど」
「……そんな事を言った事までは覚えてないんだけど」
【妖艶】……マニー=バッドのハンターになった目的。
恋愛に興味ない人でも振り向く、魅力的な女性になる。異界の書物、文献を主に集めようとしてた理由も今なら分かる。
【妖艶】が言ってた人物はゴイゼン所長。
ゴイゼン所長が学者じゃなく、アキテール支部の所長になったから、商会を立ち上げて、組合のリーダーにまでなったわけだ。
ハンターとして協会と繋がりが持てるけど、所長とまでなったら厳しいのもある。
それは本人の口から聞くしかない。
俺を勧誘してきた時も、能力を買ったわけじゃなかった。
彼女の【誘惑】系のスキルが効かなかったのもあるが……俺も好意、恋愛に鈍感らしい。
そんなつもりはないが、【卑怯】【殺戮】【死天使】女性三人が一緒にいながら、何もない。召使いのような扱いをされてるのも。
ゴイゼン所長と似た風で、攻略のヒントとして観察したかったようだ。【犠牲】も【誘惑】の効果はなかったんだが……彼とは全然違うからな。
勧誘は【卑怯】達が阻止したが、今はそうは思ってないはず……
「これ以上の話は馬車でした方がいいでしょ。ギルドもある事だし、誰に聞かれるかも分からないから。アレを出さない方が良かったのもあるし」
『アレ』とは【道化師】と【妖艶】の二つ名だろう。ハンターだったら、その二つ名を知っていてもおかしくない。
朝が早く、周囲にハンター達がいなかったから良かったものの、囲まれる可能性もあったと思う。
【妖艶】に関しては、今の姿でも人の目を引いてしまう。スキルなしで、組合メンバーを増やすぐらいだからな。
「取り敢えず、キテールまで行くわ。外の方が安心して二人で話せるし。偽ハンター達に襲われる事もないはずだから。協会の職員なら知ってると思うけど」
「ああ……本部が動いてるんだろ。昨日、偽ハンター達に騙されて、助けられたから」
【審判】に助けられたのと同時に、情報も得ている。【妖艶】がオークションの主催をしているなら、本部も情報を通達してもおかしくはないか。
「はぁ!! 何してるのよ。貴方なら見破る事ぐらい出来るんじゃないの。しかも、偽ハンター相手に助けられたって……」
「……こっちもブランクがあるんだよ。それに……戦闘に向いてない事も分かってるだろ」
【妖艶】は呆れた顔をしてくるけど、仕方ない。こっちにはフレアがいたわけで、正体を知られるわけにもいかなかったからな。




