結婚式前日
ヴェルデの唇がローラの唇に優しく触れると、すぐに唇は離れて熱のこもったヴェルデの瞳がローラをジッと見つめる。そして、またすぐ唇が重なる。
最初は優しく愛おしむようなキスが繰り返され、ローラは胸がいっぱいになっていた。
(ヴェルデ様に、キスされてる……)
柔らかくあたたかい感触、それがヴェルデの物だと思うとローラは心臓がドキドキと大きく鳴り響き、身体中の血液がものすごい速さで駆け巡るのを感じる。
ローラが心地よさと激しい胸の高鳴りで戸惑っていると、次第にキスは濃厚なものへと変わっていく。ヴェルデの唇がローラの唇を何度も食み、舌先で唇が舐められる。
(息が、苦しくなってきた……)
「はあっ」
思わずローラが吐息を漏らすと、ヴェルデは見逃さないと言わんばかりに舌を唇の隙間から捩じ込んでくる。ローラは驚いて身を引きそうになるが、ヴェルデの手がそれを拒み、ローラの後頭部と体を固定した。
ヴェルデの舌はローラの歯をなぞり、ローラの舌をからめとって口の中を好き勝手に動いている。まるでローラ自身を乱していくような舌先に、ローラの体はどうしようもなく疼いた。
艶めかしい吐息が室内に何度も響き渡り、ようやくヴェルデの唇がローラから離れると、ローラはかくんと力が抜けてヴェルデの腕に支えられる。
「大丈夫ですか?……って、大丈夫じゃないですよね、すみません。俺のせいだ」
ヴェルデがローラの顔を覗き込むと、ローラは蕩けた目をして頬を赤らめぼんやりとしてヴェルデを見ている。その無防備さに、ヴェルデはたまらず喉を鳴らしてローラを抱きしめた。
「そんな顔されたら止まれなくなってしまう」
ローラは頭がはっきりせず、何を言われているのかわかっていない。そんなローラを愛おしそうに抱きしめたまま、ヴェルデは大きく息を吐いた。
「このまま抱き潰してしまいたい……でもここは王城内だ。それに、お互いの気持ちを確認し合ったばかりですからね、まだ我慢します。落ち着いたら、屋敷へ戻りましょう」
そう言ってヴェルデは体を離すと、ローラの顔を覗き込んだ。少しずつ頭がはっきりしてきたローラの瞳には、甘さを煮詰めたような目でローラを見るヴェルデの顔が映っていた。
*
ローラ誘拐事件が無事終焉し数か月が経った。その間、ヴェルデからのローラへのスキンシップは以前よりも強くなり、キスをすることも増えた。だが、キスをしながら愛撫されることもあるのに、体を重ねることはまだだった。
(……まだ婚約者だから?)
ローラはもどかしい気持ちを抱えていたが、それをヴェルデに伝える勇気がない。自分から求めてしまうようで、ヴェルデに淫乱な女だと思われ嫌われてしまったらと思うと言い出せない。
そんな日々を送りながら、ついに結婚式前日になった。それまでドレス選びや参列客の確認、式の段取りなど色々なことを決めなければならず、ヴェルデと二人で忙しく動き回っていた。
ローラのことがあるので、式はなるべく少人数で行いたいとヴェルデは考えていたが、なにせヴェルデはこの国の筆頭魔術師。王家の人間が参加するのは当然決まっている上に、隣国のメイナードも招待することになっているので錚々たる参列者だ。
「ローラ様、疲れていませんか?」
夜になり、寝る支度を済ませたベッドサイドで一息ついていたローラの横に、ヴェルデが座る。
「大丈夫です。ヴェルデ様も疲れていませんか?」
「俺は問題ありません。……いよいよ明日ですね」
そう言って、ヴェルデは優しくローラの手を取った。
「あなたを幸せにすると決めたあの日から、この日をずっと待ち焦がれていました。あなたと夫婦になれるのが嬉しい。あの日の誓いは今でもこれからも変わりません。俺があなたを絶対に幸せにしてみせます」
そう言って、ヴェルデはローラの手にキスを落す。
「……ありがとうございます。こうしてこの国で何不自由なく生きていられるのは、ヴェルデ様のおかげです。私の辛さも悲しみも、全てを受け止めてくださった。あなたの愛があったから、私は生きて来れました。ヴェルデ様に出会えて、本当によかった」
ローラはそう言って微笑む。その言葉を聞いて、ヴェルデ様はほんのりと頬を赤らめ、ローラを抱きしめた。
「俺も、ローラ様に出会えてよかったです。俺の初恋の人。俺の大切なたった一人の愛する人」
そっと体を離すと、ヴェルデはローラの顔を覗き込む。瞳は部屋の光を受けてキラキラと輝いているが、その奥には激しく熱い愛と欲が入り混じりふつふつと沸き上がっている。その瞳に、ローラは身体中が熱くなった。
静かにヴェルデの顔が近づき、唇が触れる。そのままヴェルデの熱い口づけが始まり、ローラはキスだけでどうしようもなくなってしまう。
唇が離れ、ヴェルデはローラを優しく抱きしめる。そして、そっと体を離した。
「俺は明日の最終確認を行うので、先に寝ていてください」
そう言って優しく微笑みローラの頬を撫でると、ヴェルデは立ち上がろうとする。ローラは思わず、ヴェルデの手を掴んだ。
「……ローラ様?」
ヴェルデが振り返ると、ローラは潤んだ瞳で頬を赤らめ、上目遣いでヴェルデを見つめている。その光景があまりに煽情的で、ヴェルデは思わず喉を鳴らす。
「もう、行ってしまうのですか?」
お読みいただきありがとうございます。楽しんでいただけましたら、ブックマークや感想、いいね、☆☆☆☆☆等で応援していただけると今後の執筆の励みになります。よろしくお願いします。




