『悪の組織につかまって』 RICE
僕は佐藤太一、少し前までは普通の学生だった。
友達と遊んだり、テスト前に勉強したり、女の子に告白し振られたりどこにでもいるな学生の一人として暮らしていたんだ。
本当だよ、家族から毎日罵倒されたり、クラスメイトから無視されたり、告白した子が号泣して嫌がったりが原因で引きこもって留年なんてしていないからな。
とにかく、僕は学校生活を送っていたんだ。
あの時までは。
「悪の組織が人さらいをしている。悪の組織が正義の味方っぽい人たちと戦っている」
ネットサーフィンをしていると、そんな書き込みがいたるところにあった。
ネットの書き込みだし、騒がれたい奴がやったのだと思った。
しかし、なぜか気になり最近は見ていないテレビのニュースを見ることにした。
ニュースでは悪の組織が行ったと思われる事件の被害、悪の組織と正義の味方が戦っている動画などが報道されていた。
アニメや漫画みたいだな。
つまり、僕には古代の英雄の血が流れていて、ヒロインと悪の組織が僕の前に現れて、僕が覚醒しそこから僕の物語が始まるかもしれない。
そんな妄想が実現するかもと、考えたけどすぐに自分のことがばからしいと思った。
主人公になれるはずがないじゃないか。
自分の過去を振り返りながらそう思った。
気分が落ち込んで、早めに寝ることにした。
目が覚め、久しぶりに学校に行こうとした。
僕が学校につくとみんなは僕に驚き、そして、挨拶の言葉を送ってきた。
僕も返事をして、いろいろ話そうとしたけど授業が始まってしまった。
休み時間に友達同士の会話を聞いて、悪の組織のことは話題に上がっていた。
授業を受け終わって家に帰る準備をしていると、友達から遊びに行こうと誘われた。
もちろんその誘いに乗って遊びに行くことにした。
僕たちは日が沈むまで遊んだ。
楽しかった、でも、懐は寒くなったが。
その日の夜、僕はコンビニにお菓子と読み物を買いに行った。
僕の家からコンビニに行く途中である女性が前から歩いてきた。
その女性はとてもきれいな金髪でスタイルもとてもすごかった。
僕はその女性に目が釘づけになった。
その女性は僕の方に微笑んできた。
僕は勇気を出してその女性に話しかけようとした。
その時、首に痛みを感じた。
首に手を当てると何かが刺さっていた。
それを取ろうと思ったら急に眠くなってきた。
目が閉じる直前に女性がこちらに近づいて、僕を抱きしめた。
女性のぬくもりを感じながら僕は意識を失った。
目が覚めたら知らない天井だった。
このセリフを実際に言うことになるとは。
とにかくここはどこなんだ。
周りを見渡しても入口のドアと豆電球しかなかった。
「やっと目を覚ましたか」
あの夜にすれ違ったきれいな女性がドアから入ってきた。
「あの僕はどうしてこんなところに」
「君は私たちに捕まったんだよ。私たち悪の組織によってね」
どうして僕なんだ。
僕は優秀でも何でもないのに、まさか。
「どうして僕をさらったんですか」
「あははは、なに、まさか自分が特別な人間だから連れてこられたと思っているの。そんなわけないじゃない。 あなたみたいな社会不適合者が」
女性は寝ている僕を見下ろし、笑みを浮かべながら罵ってきた。
期待した僕が馬鹿だった、やっぱり僕なんて。
「連れ去ったのはあなたが誰にも必要としていないからだよ。その方が世間に対して憎しみを持っている人が多いんだよ」
「確かに憎んでいるかもしれない。でもお前に協力する義理はない」
危険があるかもしれないし。
「義務はないけどかもしれないけど、強制的に改造されるよりはいい生活を送れるかもしれないわよ。どっち道死ぬかもしれないけど」
「改造ってどういうことだよ。それにいい生活と死ぬってどういうことだよ」
「悪の組織として正義の味方と戦うために強くなる必要があるだろう。手っ取り早く強くするために改造するんだ。改造後の姿は私にもわからない。モブ戦闘員かもしれないし、幹部クラスの力を持つかもしれない。それ以外になった例も存在している。でも戦闘員にさせることはできる。戦闘員は力が弱いから正義の味方に殺されやすい我が組織一番危険なところだよ。わかったかい」
そんなこと言われたら抵抗できないじゃないか。
「わかりました。僕のことを改造してください。いたくしないでね」
「うるさい、だまってろ。始めよう」
パチン
女が指を鳴らすと、僕の周りから機械が出てきて僕を固定した。
これから起こることを覚悟して目をつむった。
「目を開けてこれを見てごらん。このボタンを押してお前の運命を自分で決めろ」
目を開いて、目の前にあるボタンを押した。
緊張するかと思ったがそんなことはなく、体が動くままに押していた。
連れてこられた時と同じように首に痛みを感じた。
案の定、眠くなってきた。
目が覚めたら体が変わっていた。
身長が一五〇cm位になり、髪の毛も長くなっていた。
「こんな変化は初めてだよ。自分がどう変わったか鏡で見てみな」
鏡を見たら見慣れない顔があった。
アニメのヒロインみたいな顔した美少女が写っている。
僕は慌てて下を確認した。
よかった、ついてる。
「君は男の娘になったんだ。よかったね、君は戦わなくていいよ。君には戦うよりふさわしい仕事ができたからね」
「あの、それは何ですか」
彼女は微笑むだけで僕の質問には答えてくれない。
戦闘員よりいいかもって思ったけど、むしろこっちのほうが身の危険を感じる。
「また眠りなさい。次に起きた時には仕事場にいるから。指令はその時に伝えるわ。おやすみ」
誰か助けてくれ。




