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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第一章 「デイ・アフター・デイ」
11/22

第十一話 月曜日、悪魔の仕事

第一章の、はじまりはじまり〜!



年越しから大体1週間。

英雄達はまたそれぞれ、任務やバイトなどに出ていた。

残った連中は、だらだらとリビングで寝転がっていた。

薪の英雄は、主に都市災害の鎮圧や、被害者の救助を専門として活動している。

新年早々、都市災害が起こらない…訳がなかった。


「五十三番街でBランク相当の都市災害発生だって。

誰か、初めの仕事に付きたい人はいるか?」

僕、ソルはテレビを見ながら軽く呟く。正直、寒すぎて家から出たくないっていうのが本心だ。でも、そろそろ動かないと…という思いが混ざり合い、僕を悩ませる。


「ギュゥゥーン!」

唸り声の様な金属音が鳴る。

「スティーブがトップバッターになりたいらしい。」

機械怪獣のスティーブ唸り声と、その父ヘンリーが言う。


「はいはーい!私行きたい!」

栗色の髪をした少女、レヴェルがぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「なら、私も行こうかな。ヘンリーさんがいるとはいえ、子供達だけじゃ心配だもの。」

長い黒髪をさっとかきあげながら、ヘヴンは口を開いた。


「他はいないのか?」


皆が黙り込む。テレビのがやがやした音だけが、広々としたリビングに響き渡った。


「アタシは絶対に嫌。仕事したくないからね。」

半音低く、エイヤは声を小さく出した。


「俺も遠慮しておこう。今は怪盗の花形である道具を失った身だからな。まだ、舞台で踊る気はない。」

怪盗、ヴラドはコインを手の上に転がせる。


その他のメンツは、声を出しすらしなかった。


スマホを机に伏せ、手に持ったコーヒーを一口飲んだ後、一つだけ言った。


「帰りに歯磨き粉を買ってきてくれ。」


「いつものミントのやつでいいのかな?」


「あぁ。」




そう言うと、ヘヴンはすっと立ち上がり、壁に立てかけてあったライフルを手に持ち、コートを羽織った。

スティーブは大きな手で器用にウッドデッキに繋がる窓の取手を開け、外に出た。

階段からどたどたと降りてきたレヴェルは、一本の剣を持ち、リビングの皆へ手を振ってきた。


「それじゃ、行ってくるね。」


────────────────────────────────

五十三番街。

火の上がる通りの真ん中、1人の怪物が佇んでいた。

異様に肥大化したその身体の頭部だけは、人の姿を残している。

皮膚はぐちゃぐちゃに爛れ、あたりに血の匂いと、吐き気を催す腐臭が満ちる。

数分前に到着したはずの治安官たちは、バラバラの肉塊だけを残して皆姿を消していた。


「わぁ、結構な大物ね。それじゃ、行きましょうか。」


ヘヴンはパチンと指を鳴らす。

同時、空に暗い夕暮れが訪れた。

黄昏の森。それこそ、夜の結界を持つ彼女を象徴するべき名だ。

この黒夜の


黄昏れ(トワイライト)様の力を見せつけてやりましょう。」

ライフルを構え、ヘヴンは引き金を引く。

無音。

草木や風の音すら凪がれる。

あるのは、フクロウの鳴き声だけだった。


ぶちっという音と共に、怪物は血を噴き出す。

弾が飛んできた方向に向け、怪物は近くに落ちていた、壊れた車の部品を投げつける。

しかし、今度の狙撃は、背後からだった。

右、左、後ろ、前、四方から、無音で、弾丸が飛び交う。


怪物は堪え、叫び声を上げる。弾丸程度でくたばるほど怪物は弱くはない。しかし、確かな痛みと、叫び声(合図)を出させるのには、十分だ。

その声は、地下へこだました。

こだまが返る。

しかし、この怪物のものではなかった。

地面から、赤い機械の手が現れた。

その手は、とてつもない力で怪物の足首を掴み、地面へ引き摺り込んだ。


悲鳴を上げ、地上へ這い出そうとする怪物へ向かい、宙から無数の剣が襲いかかった。

まるで、各々が意思を持つように、剣たちは怪物の体を切り刻んで行った。


怪物は、動かなくなった。

その頭部を、ヘヴンが撃ち抜く。

地面からスティーブが、空中から、スケートボードの様に剣に乗ったレヴェルが現れる。


「意外と早く終わったね!」


3人はハイタッチを交わす。


勝利の後の余韻は、普段は5秒にも満たない。しかし、今日だけは、長く長く感じられる。辺りに、どこか嫌な気配が漂い始めた。

スティーブの体からけたたましいブザー音が鳴り響く。

「まずいぞ。レーダーに凄まじい程の反応が出ている。

なにか…やばいのが近づいてきている。

ソルやエリにも匹敵…いや、それ以上だ。」

ヘンリーの声だ。しかし、相当な焦りが見える。


3人に一気に緊張が走る。

我らが2トップを超える力を持つ者は、この都市でも相当限られる。

たった3人では、絶対に勝てない。

死ぬ、殺される。そう、皆に直感させた。


「どどど、どうする?」

ヘヴンの声に、明らかな動揺が混じる。普段は冷静で、大人びた彼女でさえ、死への恐怖を前にしたら、緊張せざるを得ない。


「私たちじゃ、勝てないよ。」

レヴェルも、元気さを失っている。


「どうするって、逃げる以外ないだろう。スティーブの背に掴まれ。地下から脱出するぞ。」


2人はスティーブの背に捕まり、スティーブはドリルで地面を掘り進める。

しかし、ヘヴンは見てしまった。

遠くの路地からこちらに歩み寄る、男の姿を。

一瞬にして、彼女の脳裏には「死」の一文字でいっぱいになった。

心臓を吐き出してしまいそうになる。

まるで、飢えた狼に睨まれたウサギの様に。


男は足を止め、一言。しかし、ヘヴンたちには聞こえはしない。

「やれやれ、ちょっと顔を見せただけでこれか。

彼女らは、僕の視聴者ではなかったようだな。」

男は手に持つ杖を地面に軽く打ちつける。

地面が、白く腐り落ちていった。

腐った地面には、白い爪痕が残っていた。


────────────────────────────────

その頃。

家は、殺伐とした空気など一切なく、アンサーが菓子パンを齧っていたり、エリが同人誌を読んでキャッキャしていたり、いつも通りのメチャクチャ具合だった。


「この菓子パン、味が落ちましたね。製造工場が変わったからでしょうか。」


「やっぱり純愛ハッピーエンドは最高ね♪」


突然、地面を砕く音と共に、庭から、スティーブのドリルが顔を出す。


這い出たスティーブの背中から、少し土で汚れたレヴェルとヘヴンが現れた。

レヴェルの様子は、ほぼいつもと変わらないが、ヘヴンは明らかに違う。

明らかに息が浅い。

瞳孔が開き切って、震えている。

目には、薄く涙が滲む。

それに気づいたアンサーが窓を開ける。


「貴方たち…酷い汚れですね。風呂に入ってきなさい。」


「待って!アンサー、ヘヴンの様子がおかしいの!」


アンサーはヘヴンに近づき、彼女の様子を軽く診る。

ヘヴンは、無理に笑おうとするが、かえって嗚咽が止まらなくなり、よろめく。

それをアンサーが肩で軽く受け止める。


「…貴方たち、何かあったのですか?」

いつもより、少し強張った声で、彼は問う。

それについて、ヘンリーが事細かに説明をした。

異化した怪物を鎮圧した後、レーダーに異常反応が出た事。

ヘヴンが振り返って、何かを見てしまったと言う事。


「───そうですか。状況は理解しました。

とりあえず、ヘヴンが落ち着くまで見ておいてください。

彼女が話せる様になったら、私が調べます。」


アンサーはそう言い残し、二階へ上がっていった。

同時、コンビニに行っていたソルが帰宅。


「歯磨き粉…って場合じゃ無いな。」

僕はすぐに状況を理解し、ヘヴンの元へ行く。


「ゆっくりでいい、話せそうなら、話してほしい。」

彼女の肩にそっと触れる。

震えがはっきりと伝わってくる。

相当な事があったのだろう。

いつもニコニコしている彼女が、こんなになっているのは、初めてだ。

「ぁ…ソルく…ゔっ…ぉ"ぇ…」


「大丈夫だ、もういい、ゆっくり息を吸うんだ。」


さすがのエリも、純愛欲よりも心配が勝ったみたいだ。

命とも言える同人誌を置いて、こちらに来た。


「ヘヴン、大丈夫よ。あたしがいるから、ね?」

ヘヴンの横にぴったりとくっつき、優しく背中をさする。


「ソル、そこを退きなさい。私が見ます。」

階段から、アンサーの声が聞こえた。


彼は中々の荷物を持って階段を降りてきた。

彼は小さなケースの中から、一つの錠剤を取り出す。


「安定剤です。飲めば少し楽になれますよ。」

ヘヴンはそれを手に取り、一飲み。


少しずつだが、彼女の息遣いが元に戻ってきた。

しかし、手の震えは治らない。


「話せそうですか?」


「え……えぇ。」

その声はまだ弱々しい。まるで、蛇に睨まれたカエルってところだろう。


「貴方は何かを見た、そうですね?」


ヘヴンは軽く頷く。


「具体的に、何を見たか伝えてくれますか?

人間だったか、機械だった、とか。」


「…男の人よ。見た目だけなら、普通の人。ただ、杖を持ってた。」


アンサーは、カルテに何かを書き込む。

「そうですか。

ヘンリーのレーダーには、強い反応があったそうですが、

その者の能力の影響を受けた、そんな感じはしましたか?

あるいは、その者の能力を見た、なら教えてください。」


首を横に振る。

「…杖を地面に付けたら、そこが白く、腐っていってる感じだった。

腐ったところに、なにか、爪痕みたいなのもついてたの。」


アンサーがカルテを書く音が止まる。

「────その男は、私と同じくらいの長さの灰色の髪をしていて、赫い瞳をしていた、違いますか?」


頷く。


アンサーは目線を落とす。が、すぐにスティーブやレヴェルの方も見る。


「…単刀直入にいいます。貴方たちが出会ったのは、『ハレミチ』で間違い無いでしょう。」

コメント、反応等お待ちしています

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