予選二日目―今日こそちゃんとやるぞと宣誓したたぬきは結局?
真っ白な部屋。
どこーここー……。
「ハイ!なんなんですか!起きて早々死んだんですか!どこで寝てるんですか!」
「あ。神様だー。」
「ハイ。神様ですよー。」
しばらくの沈黙。
神様の差し出す手を僕はそっと包み込んだ。人の暖かさが足りないんだね?僕が側にいてあげるよ。
「違うっ!」
「うわびっくりしたああっ!」
神様は腰に手を当てて言った。
「10万スター。」
「ぽえ?」
「一回死ぬごとに10万スターとることにしたんですよ。はい、お金出して。」
カツアゲだあ!
「持ってないよう……そんな大金……。」
「わかりました。」
わかってくれた!?
「えーっと、ドリーマー番号81−04−261、木隠来羽さん。」
「はい。」
「借金10万スター。」
「はい?」
神様は帳簿を閉じた。お金について書いてるんだから、たぶん帳簿だ。
「最近、むやみやたらに死ぬ輩が多くて困ってるんですよ。ま、冒険者というのは本来借金にまみれるものですし?こういうペナルティも悪くはないですよね。で、欲しいスキルは何ですか?」
そうなの!?皆?借金地獄なの!?えっ!?ほんと、に?
「……お金が無限に出るスキル……」
「むりです。私が気分じゃないので。」
やっぱり?
「じゃあ神獣たぬきがいいなー」
「は?」
……
「それでは、リターン、ドリーマーズワールド。」
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ブルームの、またあのへんなところに戻ってきた。
「はあ……」
「らいうちゃん!」
声がしたほうを見ると、サンクとルイが僕の方へ走ってきていた。
「たぬきさん、見つからなかったから、街にも、戻ってきてなかったから、ここかな~って。やっぱり死んでたんだね~。」
「ごめんね。僕昨日ぜんぜん働いてなくて……」
「いいわよ。いつものことじゃない。」
ルイもサンクもやさしい。あの神様とは大違いだ。
「でも、今日は、今日の僕はすごいよ!」
「??」
サンクもルイも首をかしげた。
「森に行こう!」
道中で、安売りしていたSPポーション小を買ってから、僕らは森へ行った。
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「スキルスイッチ〜[ライズ・フォーチュン]」
(スキル[ライズ・フォーチュン]
効果…運を15%アップする。(重複効果なし)
SP…35
取得…デスヘル神社で大吉を当てる。)
「ねえらいうちゃん……」
「しっ。サンクさ~ん。今たぬきさん集中してるから~。」
僕は胡坐をかき、全神経を集中させていた。
ルイによって、[ライズ・フォーチュン]をかけてもらい、運が上がった僕は、今16%の確率を当てようとしていた。
もともとは百分の一の確率を上げたのだ。
ここだ!僕は目を見開いた。
「スキルスイッチ![神獣たぬきは獰猛たぬき]!」
(神スキル[神獣たぬきは獰猛たぬき]
効果…百分の一以下の確率で最強のたぬきを呼び出す。神獣たぬきは獰猛で、辺のものをすべて喰らい尽くす。倒した戦利品は召喚者の懐に入る。尚、ブレッシング等の運上げスキルは意味をなさず、また、召喚者も喰われることがある。
SP…100
取得…死んで、ちょっと機嫌が悪い神様にもらう。)
巨大な光る円の中に、僕が描くたぬきの顔が浮かび上がる。その色は神々しく、全体が金色に光っていた。
「魔法陣…!?」
サンクの声が後ろでする。まほーじん。これのこと?うん。かっこよさそうだから使おう。
そして、そのまほーじん?魔法陣!がより一層強く光り……
ぱしゅんっとまの抜けた音がして光が消え、魔法陣が消えて、結果何も起きなかった。
SPだけが虚しく0になり、バタンと倒れる。
キューーーー……。
「はわわわわ〜!スキルスイッチ[青空駆け抜ける癒やしの風]〜」
(スキル[青空駆け抜ける癒やしの風]
効果…自分以外の味方のSPを半分回復する。
SP…30
取得条件…50回演奏する)
ポロロンという音色が耳元で聞こえた。
だんだん体が元気になってくる。
「ぷはあ!生き返ったああ!」
「大丈夫まだ死んでなかったわよー…ところで、何をしようとしていたの?私はらいうちゃんにお願いされて開けた草原を探してたから、らいうちゃんが何をしようとしているのかも知らずに、自分が探し出したこの草原で怪しい儀式を見てるしかなかったのだけれど。」
ルイがサンクに説明した。僕はもう一度スマホを開き、先程の神スキルを確認する。
「あのね〜、なんか、成功するとすっごいスキルなんだけど~、成功率が低いんだって〜100分の1なんだって〜」
「1%!?そんなの当たるわけが…でも、案外当たったりするのかしら?」
あ。と僕は小さく声を上げた。
やっば。
「それで〜私のスキル使って〜16%に確率を上げてたんだけど〜」
「ごめんルイ。」
僕はルイに謝った。
「ん〜?」
「運上げスキルは意味をなさないって書いてあった。」
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あぶばばばぶばばばば!
「……スキルスイッチ[ファイアボール]」
後ろから迫り狂う無数の炎の球。
〈上級ボスです〉と書かれた旗を背負い、色々なスキルの猛襲から逃げる逃げる逃げる!ちなみにこの旗は街で買った紙とそこら辺の木の枝とサンクの意地で作りましたっ!
僕は、僕、は!上から氷が降ってきたり、足元を雷がかけめぐったり、風が横を通っていき、近くの木を薙ぎ払ったり、水の竜巻が迫ってきたり、炎の壁に囲まれかけたりした。
「くっ……!さすが上級ボスだ!全然攻撃が当たらねえ!」
僕を追う見知らぬドリーマーが悪態づく。
当たったら僕死にますからね!借金が二倍になっちゃうから!頼むから当てないで!当てようとしないでえええ!
「ぐああああああ!」
「タンクがやられたー!」
先程の炎の球が、おっきな板を持った人に後ろからぶつかってその人を霧にした!これで、なんか杖持ってた人と合わせて二人目だ!あと二人!!
そ、炎の球を出しているのはサンク。どこかの木の影に隠れているはずだ。
「らいうちゃん大丈夫かしら…?」
「このままじゃ本戦に進むこともできなくなっちゃうから〜しょうがないよ〜」
ルイのどす黒い笑み。
ルイが考えた作戦はこうだ。
初級モンスターや中級モンスターを狩るだけじゃもう到底間に合わない。一匹狩るにも僕らじゃ火力、も、人数、も、役職、も、足りないらしいからだ。
役職…パン屋さんとかがいるのかな……?ほら、えーっと、モンスターをおびき寄せるために。美味しいパンの香りで。少なくとも僕は吸い寄せられるタイプだね。
まあ、というわけで、ドリーマーキルをするしかないということになったらしい。まさかの僕らが悪い人になるとは……。
僕が囮、サンクが攻撃、ルイがサンクのSPを回復すると言う具合だ。
それで、僕はいんざへる、を味わっていた。分かってる!ルイ、怒ってるんだね!知ってる、知ってるよー!
ぎいいいいいい地獄ううううう!
「たああああああぬううううう!」
「弱ってそうだ!いけるぞ!一気に押す!」
弱ってない!弱ってないから!あっち行ってーー!
「タンクを殺ったからもういけるわね……スキルスイッチ![ファイアウォール]!」
(スキル[ファイアウォール]
効果…炎の壁で相手を包む。効果時間は20秒。狭めることも広げることもできる。
SP…20
取得条件…ファイアボールを複数回使用する。)
僕を追いかけていた人達が閉じ込められた。
「しまった!プリーストもいないのに!」
「ばか!なんで突っ込んだんだよ!」
その二人は消えた。
僕はたぬきからやーっと人になれた。
「ふぁあああ…これで何組目〜??」
僕は足と手が痛くて崩れるようにごろりと寝転んだ。ちょっと頭を打って鼻がツーンとする。
「え〜っと〜メダルは今やっと13枚かな〜。今の人達が3枚くらい持ってたから〜。たぬきさんには悪いんだけど〜、まだメダル足りないから〜まだまだ狩らないと〜。」
「多分、七組くらいじゃない?やっぱり、モンスターを倒している人たちはメダルを預けてることが多い気がするわ。」
え、誰に?
「なんかー、銀行とか、あるのー?」
「いいえ。そうじゃなくて、今の人達も四人だったでしょ?一人、安全なところでメダルを守っている人がいるのよ。多分。五人いっぱいまでパーティを組んでいたら、だけど。」
な、なるほど…?
「じゃあそっちを倒しに行ったらー?」
「ん〜見つかれば狩れるけど…どうしても〜見つからないところにみんな隠れてるから〜…。」
「自分の強さにすごく自信があって、絶対に負けないと思ってずうっと持ち歩いている人に当たったら楽なのだけれど……」
「もしくはパーティー組んでない人かな〜」
自信満々で、友達がいない人?
「……ししょーは?」
「やめてあげて。かわいそうでしょ。」
「たぬきさんの囮は〜上級モンスターには通じなさそうだったし〜やっぱこのまま狩るしかないかな〜」
僕らはちょっと前に上級モンスターにも挑んでみたが、死にそうになったので逃げたのだ。
……はっ!
「僕巨大化してここらへん一帯を根絶やしに…!」
「昨日それをした跡が森に残っているけれど、らいうちゃんを回復させて落としたメダル探している間に他の人に取られてしまうか、らいうちゃんがどこかにやっちゃうかのどちらかじゃない?巨大らいうちゃんの一歩と私達の一歩は違うんだから、効率が下がりそうよ。」
うぐぐぐぐ……。ぐうの音しか出ない。
僕はため息を吐いた。
「いっそのこと、ルイのスキルでみんなぐーすか眠ってくれたらなあ。一箇所に集まって楽なのにー。」
「ルイちゃんのスキルでそんなのがあるの?」
「う〜ん。高い星のモンスターになるほど効きづらくなるから〜、たぶん上級ボスになんてもう全然効かないんだけど〜…初級モンスターに〜ちゃんと効くくらいのだったらあるよ〜」
サンクが嬉しそうに声を上げた。
「それよ!さっきの草原に行きましょう!」
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先程、僕が神獣たぬきの召喚に失敗したところに来ると、サンクは真ん中にルイを座らせて、自分は赤と緑の珠がついた杖を構えた。
「ルイちゃんが演奏する。私がルイちゃんをいろいろなものから守る。らいうちゃんが巨大化してルイちゃんの周りに集まってきたやつを倒す!」
「でも〜ほんとに初級ボスさえ来てくれるかどうか〜怪しいよ〜?」
不安そうなルイに、サンクがウインクをした。
「狙いはボスじゃないわ。初級モンスターが一斉に、惹き付けられるように一箇所に集まって来たら、少なくとも誰かは来るはずだわ。ドリーマー狙いよ。」
バレそうだけど…僕だったらでかいたぬきを見つけたら逃げるけど……。
とりあえず、やってみよう、だ!
「サンク達は僕の背中に乗るでしょ?」
「え、いや、ううん。乗らないわ。下で、演奏してるわよ…?」
「遠慮しないで!ね!ね!ね!!」
「え、ええ……」
「スキルスイッチ[歌を乗せゆく風]〜スキルスイッチ[眠りの調べ]〜!」
ぽろろろんっとごきげんな音が僕の上でなった。
僕は中腰でかがみ、その上にサンクとルイが乗っている。というか、僕をまたいでいる。
しばらくして、わらわらといろんな種類のモンスターが集まってきた。
「行っきまーーす……スキルうスイッチ![巨大化]からのマジックオープン![たぬき変身]!」
「うう〜…」
サンクがうなると同時に、でかいたぬきが君臨した!なんでうなった?
どーん!
サンクとルイが震えている気がする。大丈夫大丈夫。多分落とさないから。
ズシーンズシーンとプチプチと前足で、後ろ足で、小さなモンスターたちを潰していく。
しばらくすると、どこからか音が聞こえた。
《スキル[蹂躙]がテクニック[蹂躙]へと変化しました。》
(テクニック[蹂躙]
効果…敵一体を倒したとき、その半径2メートル以内の敵にダメージが入る。
取得条件…スキル[蹂躙]と同じ効果をスキルを使わずに発生させること。)
へー。
よくわかんないけど、いっぱい倒せええ……ということだね!
「たああああああああぬうぬうぬうぬうぬうぬう」
どしんどしんと地面が揺れる。
「きゃー!」
「よ、酔いそう〜!」
「しっかりして…ルイちゃんー!ここが踏ん張りどころよう!」
何か聞こえるような気がするけど全く気にしない!
どっかんどっかん何かが僕に当たってきた。
水鉄砲だ。
さっきまではあんなに大きかった気がするが、今はシャワーを浴びてるくらいにしか感じない。助かる〜大きくなると体温上がるんだよね〜。
僕はそっちの方向に向かってどたどたと走っていった。
「ぎゃーーー!」
全員霧になって消えたようだ。踏んだところから白い煙が出てきたから。
そして足をどけると、キラリと光るものがあった。
「あ!らいうちゃん!やったわ!大成功よ!」
サンクが周りを確認して、僕から一時的に降りてメダルを回収した。
もう一回サンクを乗っけて、次に行く。
次はあっちだああ!!!
「らいうちゃーん!らいうちゃーん!もういいのよー!?らいうちゃーん!?」
どかあああああああん!!!!
僕は前足を天高くあげて、振り下ろした。
「ぎゃああああ!」
なんか集団に突っ込んだらしい。
いやっほい!体が大きくなると、なんだか心もダイナミックなことをしたくなるのだ!
逃げ惑ううごめく影に今度は体当たりをした。
「たははははははははははははは!」
「うぎゃああああ」
「ひんぎゃあああ」
「もうだめ〜…きゅー…」
「らいうちゃーん!お願いらいうちゃーん!らいうちゃーん!らいうちゃーん!!!ストップ!止めて止めて止めてええええ!」
僕はぴたっと止まった。
「たぬう?」
「もう…おえっぷ…集まった、か、ら、えっぷ…いい、わ、よ…おろして…おろして…」
僕はサンクをおろした。ついでにルイもおろした。
二人とも、草の影に行き、
「うえええええ…えう〜う〜う〜…」
「ふぇえええ…え〜…」
と悶絶しているような声が聞こえた。
僕はしゅわしゅわしたSPポーションを口に含む。おいしい。甘い。
その日、その二人が元気に復活することはなかった。
……僕は悪くな〜い!
メダル足りました!




