トライ、トライアンド、エラー?
「まったく……一人で突っ込むからそうなるんだ。しょうがないから今回は奢ってやる。どっかで返せよ?」
「いや、その必要はないよ!」
ジュンとサンクに事の顛末を話すと、ジュンにそう言われた。
でも、その必要は無いのだ。
なんてったってってってって!ふふふーん!
僕は巨大たぬきになれるんだからね!
「二人とも、僕に乗って、砂漠の街へ行けるよ!」
「え、え?」
「話がまったく見えてこないんだが。」
僕らはそんな話をしながら、乗合馬車の乗り場へ向かった。
街を少し出たところにそれはあって、馬が僕をじっと見ていた。
……[挑発]の効果、切れてるよね?そもそも、発動して、ないよね?
少しばかり、何かに見つめられると身構える僕であった。
僕はその馬車から離れて、叫んだ。
「スキルスイッチ![巨大化]!」
むくむくむく。
僕は大きくなりはじめた。お、おー!初めて、スキル、とゆーものを使ったっ!つかえたあ〜!
なんでこれは使えるんだーー!?
ま、いいや!そしてそして、完全に大きくなる前に、たあああああぬううううきいいいい変身!
「マジックオープン![たぬき変身]!」
「でけえ。」
「ひゃああ!?」
おお〜いつもより視界がすごーく高い……ぞよ!
「のおおねえいいいぬおお」
乗っていいよ〜!
「これならきっと、早く着くわよね!」
「早く…着く……のか?」
サンクとジュンは渋々、と言っても二人とも手のひらサイズだからうまく表情が読み取れないが、まあ、多分、喜んで乗った。
「たあああぬううううう!」
僕は元気よく遥か彼方へ遠吠えをして、大地を蹴った。
おお〜!速い速い!
「きゃーー!?」
「確かに。馬よりも早いな。」
妙に落ち着いているジュンと、ジェットコースターに乗っているみたいな声をあげるサンク。
「たあああぬううううたああああぬうううううう!」
もっと飛ばすよーー?
さらにスピードが上がった。
途中、何匹かモンスターを蹴散らして、僕は進む!
ゆけ〜♪我らの〜♪きょ〜だ〜い〜た〜ぬ〜♪
その結果、10分で砂漠の街の手前に着いた。
「普通は砂漠の街まで一時間かかるそうだ。」
「なんでそんなに平気なのよ……へう。」
今にも吐きそうなサンク。うーん。のりごごちが良くなるテクニックとか欲しいな。あと、もっとスピードが上がるのも欲しい。1秒で往復したい!
ちなみに僕はピンピンしている!
「ほら〜砂の街まであと少しだよ。がんばろーサンク!」
「らいうちゃん……それ、地面に寝転びながら言うセリフじゃないわよ……う……」
サンクはその辺の草むらに隠れた。
僕は元気だよー?ちょっと手と足が動かないだけで。いきなり人間の姿に戻っただけで。
ジュンはスマホを僕にかざした。なに?今僕ね、ピースする気力とかないよ?
「らいうは…HP40。SPが」
ジュンが固まった。
「0」
?SP0ってなんかまずいの?
「うっわまた減った!」
「な〜にが〜?」
ジュンは腫れ物を見るような目で僕を見て言った。
「HP、が。」
ええっと。HPって何だっけ?
「何かまずい〜?」
「死ぬぞ?」
わーお。
「まさか、お前、SPが10以下になったらHPが減ってくことを」
「しらな〜いっ」
僕が重い体をゴロゴロと動かしながら答えると、ばかだこいつとジュンの口が息を吐いた。
「飛ばしすぎだ。」
「ぷえ〜……」
あーあ。
「砂の街まであとちょっとなのにな〜……」
「砂、じゃなくて砂漠な。あとちょっと、じゃなくてあと大分な。歩いて行くのは……まあ、不可能に近いな……」
ジュンがスマホを見ながら言った。ブツブツと、SPポーションは持ってないし…という。
あ、あとそんなに……そんなに遠いの……?いいや、あとちょっとだよ!そうに決まってるよ!
僕は動かない手と足を無理やり動かして地面に這うようにして進み始めた。
「おい。それ……動いてるつもりなのか?乗合馬車を待ったほうがいいんじゃないか?」
「私も賛成〜……」
あれをもう一回は無理、と、草むらの向こうから気持ち悪そうなサンクの声。
「移動は別の方法のほうが良いのかなー」
「いつか、たぬきじゃなくて自家用ジェット機になれるようになってくれ。そしたら速いしかっこいいぞ。」
自家用ジェット機、かー……。
地面に寝っ転がっていると、遠くの音が良く聞こえる。
ガタガタガタ……
「おい!らいう!起きろ!」
いつの間にか僕は車道の中心へ躍り出ていたらしい。ま、踊ってないけど。
全身が痛い、けど、急かされるまま頑張って起き上がると、馬が土煙を上げて走ってきていた。
びゃーー!?
神スキルは神様がくれるスキルです。
神様のご愛嬌。神心のまま。
SP使用はMAXの100です。ある程度強力ですが制限も多い。
[たぬき変身]の制限に引っかからない、貴重な生き残り手段。




