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5月


目を覚ました。

なんだかすごく、奇妙な夢を見ていたような?

思い出そうとすると、体がぶるっと震えた。まだ春先だしね。


今の時刻は午前六時。

……今日は久しぶりに早起き。


結構なことで。


朝食にもやしを食べて、顔を洗って、歯を磨いて、制服に着替えて、私は家から出てきた。

学校に向かう。周りを見る余裕までできた。

コンビニとか、

薬局とか、

廃工場とかが、通学路には立ち並んでいる。

時計屋。

この周辺の街に似合わずお洒落だ。

なんだかどこかで見たことがあるような黒い扉に、お洒落な金のドアノックが付いている。窓は黒いカーテンが開いていて、中の時計の数々がよく見える。


もしかしたら、こんなにたくさんの時計があるなら、もやし柄の時計もあるかもしれない。


学校に着くと、教室はもう賑やかだった。こういう時、後ろ扉に一番近い席は便利だ。


「おはよう!らうっち!」


「あ。……おは、よ。」

恵がニコッと手を挙げた。


私が席に着くと、恵はマシンガントークを始めた。

「ねえらうっち、聞いてよ聞いて!玲子ちゃんが昨日テレビに出てたんだよモデルとして!ほらその証拠に今彼女囲まれてるでしょ?読モやってるなんて一言も言ってなかったからもう本当教室中がその話題で持ちきり!もうスーパーガーリーだったんだよ!」

恵が興奮しすぎて日本語がおかしくなっている。

ふむ。

教室はざわざわと。玲子を中心に。

どうしてそんな、目立つ様な職能に従事するのか。私には分からない。


ただ、どうやら私のバケツの件は、おかげで流れたみたいだ。感謝。

誰も何も言ってこない。

あー。良かった。面倒くさいもんね。まあ、バレてない…とは思うけど。


朝のホームルームが始まって、全員が席に着いた。

ところで、ホームルームって、なんでホームルームっていうんだろうか?



お昼休み。

恵にもらったから揚げを頬張りながら、私は恵と話していた。

すると、一行がこちらに向かって歩いてきた。あー。なんかあ……あれだ。すごく、ハロウィンの日にトラック倒しそうな人たちだ。

「アンタ、初日に私たちに水をかけたよね?」

「……」

私は目を逸らした。やっべ。ばれた。

「あー…えっと、ごめん!」

どうしてか、恵がそう言った。

「はあ?……ごめんで済むと思ってんの!?」

「まあまあ、謝ってるんだから許してあげなヨー?」

「……ふん。」

チャラさの中のチャラさに磨きがかかっているような男子高校生が、原宿にいそうな女子高校生をなだめた。

彼らはぞろぞろと帰っていった。

あーこわかった。

……なんで恵は私をかばったんだろう?



その日は、5時間目の数学で当てられそうで、嫌だった。あの先生、人に当てるタイプだと思ってなかった。ギリギリセーフ、当てられたのは恵だった。ああいうのは、パッと答えられないから、苦手。

明日は国語がある……難しい国語が。



翌日。

今日は国語があり、明日も国語がある。

家に帰り、国語の宿題をしている時、分からない問題があった。

ふむ。明日、当てられたら嫌だな。答えられなくて目立ちたくはない。

私はお父さんの書斎に行って、良さそうな本を探そうと決めた。

私の親は、写真家で、そして、だからたくさん本があるのだという知識が、私の頭の中にある。


お父さんの書斎は、とうぜん実家にある。

アパートから少し離れたところに、家があるのだ。

それが実家だ。


立派な家のくせに、鍵の管理はずさんなのだ。

植木鉢の下……に、ああ、あった、鍵だ。

最近は風水にでもハマっているのだろうか?塩が盛られている。

大層な苗字なのに、何に怯える必要があるのだ。

ドアを開ける。


確か、一番奥のはずだ。

少し、迷いながら、お父さんの書斎へ行く。お父さんの書斎は良い。なぜなら、私はそこに嫌な思い出がないからだ。好きだと、誰かに話した覚えがある……耳に残っている。


お父さんの書斎は広い。しかし、ほとんど本だ。まるで図書館だ。

私が該当しそうな品を探していると、「精神分析入門」というタイトルを見つけた。

私は全くこういうものには興味がないのだが、少しばかり気になり、手に取った。たまにはいいかもしれない。

パラパラめくっていくと、夢、の項目があった。

……ああ。難しいな。


その場で読むのはどうにも気が引けたので、アパートの、自分の部屋に戻って調べてみた。


「夢は、睡眠を妨げる願望を幻覚的な充足により解決する心理的作用……?」

つまり、明日の遊園地がワクワクすぎて眠れない人を夢で眠らせてるってこと?

分からない。もういいや。


私は宿題をスマホで調べてとっとと終わらせて、夕飯を食べて、歯磨きをしてベッドに寝転んだ。

宿題の調べた所は多分当たらないだろう。危なそうならば明日、恵に教えてもらおう。

見知った天井を見つめていると、だんだんまぶたが重くなってきた。

その日は、そのまま寝た。久しぶりに…ほんの数日ぶりに……ぐっすりと眠った気がした。



その日から、何でもない日が、二週間続いた。



眠りなさい。って言われた気がした。


そんな声が聞こえたような気がして、私はおちた。


ちょっと早めに来た現実

2章はまだまだ続きます


玲子ちゃんは生活費のために読モをしました。

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