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名無し令嬢の身代わり聖女生活  作者: 音無砂月


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両親は国外追放になった。

私はなぜか王宮で手厚い看護を受けている。

薬の多用でかなり体が弱っているようで、食事は暫く消化にいいものになっている。

「かなり良くなっているようだな」

そして現在、与えられた部屋になぜか陛下が来ていた。私の様子を見に。

「あの、私の処罰は?私はどうなるのでしょうか?」

「命がけで職務にあたった者に与えるのは恩賞であり処罰ではない」

容赦のない冷たい王だと、恐ろしい人だと噂で聞いた。

確かに彼の目に見つめられると捕食者に捕えられてしまったような恐怖を感じる。

けれど実際の彼は理不尽に暴力を振るうことも権力に物を言わせることもしない。ほんの少ししか関わっていないけどそれでも十分すぎるぐらいに分かった。

「恩賞‥‥‥」

私は両親の言いなりになっただけだ。

死にたくない一心で僅かでも生き残れる可能性を模索した結果がそのように評価されているだけ。それでも良いと王は言う。

「エルピス」

「?」

「お前の名だ。アニスではないのだろう。名前はないと聞いた。今日からエルピスがお前の名だ。そう名乗るように」

「私の名前‥…」

唐突過ぎて何を言われているのか分からない。

与えられることなく屑籠に入れられる運命だと思っていた。そうなりたくて必死に足掻いたけど心のどこかで期待することを止めていた。

「気に入らないか?」

私は首をゆっくりと横に振った。

「そうか」

僅かに口元を綻ばせて王は言う。

「希望と言う意味だ」

「希望」

そんな大層な名前をつけてもらっていいのだろうか。それも国王陛下に。

私の戸惑いに気づいているのかは定かではないが陛下は安心させるように私の頭を撫でだ。

「王として、命がけで聖女の職務に励んでくれたことに感謝する。よくやった。お前の家は俺が潰したからもうない。だが聖女であるお前を市井に野放しはできない。窮屈な思いをさせて申し訳ないが、お前は今日から王宮に住むことになる。俺が後ろ盾となろう」

与えられた名前に、王宮と言う家を与えられ、更には国王陛下直々に後ろ盾となってくれると言う。

何から何まで急すぎて頭がついていけない。

「不便な思いはさせないと誓おう。取り敢えず今はゆっくりと休め」

それだけ言って陛下は部屋を出て行った。

残された私はぽすっと後ろに倒れる。天井を見上げ、先ほど陛下が言った言葉を何度も頭の中で再生させる。そうすることで私は初めて実感できたのだ。

足掻いたことは無駄ではなかったと。

足掻かなければ訪れなかった未来だと確信を持って言える。

自然と私の目から涙が零れ落ちた。

「エルピス。私の名前。えへへへ。私は今日からエルピス。私だけの名前。私の存在を表すもの」

名前をつけられて初めて私は道具から人になれた気がした。

これからはもう無理をして聖女の役目をする必要もない。

私はエルピスとして新しい人生を歩む。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] えぇ、、、 ディランが夜忍び込んで主人公の服脱がすとかないし 侯爵令嬢も良い心がけねって浄化してくれてる聖女で身分も上の人間に対してお前の態度こそ問題だわ [一言] 最後まで読んだけど…
[良い点] このお話は続きは無いのでしょうか。 改めて「エルピス」として生きる彼女を見てみたかったです。 エルピスとアニスの屑親は王には邪魔でも、世の中を知らないエルピスは、利用価値があって手元に置い…
[一言] 憂いがなくなって名前と希望が与えられて、ここから「エルピス」が「自分らしく」生きていくことが出来るのかな? というところでの完結。 ちょっと物足りない。 いやでも、これで良かったの? と葛藤…
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