決着! 勝利の鍵は仲○と知○!!
更新遅くなって申し訳ない。
うまくまとめるのに手惑いまして。
では、どうぞ
「だぁ ぁああ、っぐぁぁぁあ!」
なんだなんだなんだなんだっ!?
身体中に沸騰した血が巡ってるみてぇだっ!?
痛い苦しい熱いっ!
視界が真っ赤に染まった目で腕を見ると、血管が何十本も浮き上がりうにょうにょ、うにょうにょと気持ち悪く蠢いている。
そのせいかピンッと力まれた指がビクンッビクンッと痙攣、皮膚からは黒い煙のようなものが蒸気のように立ち昇っている。
腕が、というより全身が思うように動かない。
「うぐっが、ガガっ! ガガガガガァァァァア!!」
俺が叫ぶたびに俺の体から巻き上がる黒い煙は勢いを増し、次第に俺の体に纏わりつき始めた。
『やれやれ、超速強制身体強化による超反動だ。もともと主のパラメーターは低かったからな。それをむやみに上げてみろ。なにもないわけなかろうが。安心せい、そう長くは続かん』
黒い煙は俺の体の周りをぐるぐると回り、ガシャァン ガシャァンと形を持っていく。
『今、主の体は作り変えられておる。貧弱なにんげ、貧弱な勇者の体から、龍の屈強なる勇者へと」
少しずつ痛みが引いていく。
マジか……俺が、屈強な勇者に? 強く、なれたのか……?
『しかしまぁ、制限時間付きだか、な』
「上げて落とすみたいなことするんじゃねえーーーー!!」
一瞬喜んじまったじゃねぇかこの野郎!
「ん?」
そしてふと気づく、周りの視線が妙なことに。
全ての視線は俺の向かい、さっきまでとは違ったように感じるのは気のせいだろうか?
そして自分を見下ろし、
「え?」
驚愕に目を剥く。
さっきまで着ていたロングコートの物より明らかに色が黒い袖。
妙に袖口が大きく、荒々しくワイルドにビリビリになっている。
襟が首後ろで直立し、そして長々しいことに、着丈が膝裏から少し上くらいまで来て、
前は豪快に開けられ、バサッと風で派手にたなびいている漆黒の服。
「が、学ラン?」
しかも、超大きめの番長クラスのものである。
異世界の書で見たことがあるが、ここにもあったのか。
『ふっ……我のセンスじゃ。これこそが男のロマンであろう。わかっておる。今急いで仕立て上げたのだ。拙いところもあるとは思うが、それは後ほど改善していくとしよう」
「ま、まさか……」
嫌な予感がしたので、背中を見ると
黄金に輝く刺繍で
『喧嘩上等』
と書いてあった。
しかもチャラチャラとキラついているのではなく、正しく漢の生き様を連想させる熱き思いが具現化し発光しているようだ。
格好いい。着る者が着れば、兄貴と呼びたくなるだろう。
着ているのが、俺でなければ。
「それで、あの竜。腰が引けてるようなんですけど、大丈夫ですかね」
『目の前にまだなりたてとはいえ龍格を持った人間がおるのだ。それは逃げ腰にもなろうよ」
テイクバックとか龍格とか、聞きたいことが満載なんですけど。
「今はそんな場合じゃないですかねぇ。師匠、制限時間ってどれぐらい持つもんなんですかね」
「さあの。主の魔力が尽きるまでじゃないか?」
今恐ろしいことを言ったなぁっ!?
ちょっと待って、怖いっ!
確認したいけど今俺の魔力がどうなっているのか確認するのがすごく怖いっ!
やだもー!
急ぐしか、ないよね!
「どっ、 畜生っぉお!」
ほぼ半泣きで俺は刀を振りかざし、ドラゴンへと特攻した。
今まで大事に大事に取っておいた魔力を、消費だってぇ?
冗談じゃあないぜ!?
やっぱり上手い話なんてこの世にはなかったんだっ!?
「ギュル、ギュ、ギュルァァァァァァァァァァアァン!!!」
ドラゴンも覚悟を決めたかのように高らかに雄叫びを上げ、ズォォオッと辺り一帯の酸素を取り込んだ。
そして
「ガボボボボボッカボォンッ」
空気の大砲をマシンガンのように連射してきた。
ドラゴンの咆哮ってやつか!
飛び出した勢いを殺さず、体勢を地面に着けるレベルで低くする。
さらに、回転させるように腰をひねり向かってきた大砲に照準を合わせ、振り上げるように斬り捌いていく。
「おぅっらぁ!」
「ギュルゥワァ!」
懐に潜り込んだ直後、再び
決闘流剣術初級対重量型戦方式其之壱『水月』
を叩き込んだ。
◇◆◇
「凄ぇ……」
誰かが呟いたその言葉が、その場にいる生徒全員の思考を代表したものだった。
あの、鮮やかな翠の鱗を纏ったドラゴン。
頭部は小ぶりだが、その分体・足とドッシリとしている為より迫力が生まれている。
その体全体よりもでかい両の翼をはためかせ、何十発もの大砲クラスの弾丸を空から連射しているその姿に、見ているだけで死を実感できる。
そんな、そんな相手を前にして
跳躍で空を飛んでいる相手に立ち向かい、物凄いスピードの弾丸を
時に避け、時に捌き、時に迎撃し、
ドラゴンに一撃一撃を見舞っていく姿はまさに
『強者』の姿であった。
そしてその、『強者』の迫力を倍増させる物が、その風貌。
長い襟、口のでかい裾は両ともにワイルドに破れ、激しい歴戦のそれを醸し出し
背中に背負われた『喧嘩上等』という読めない文字。
読めない筈なのに、それは男なら必ずグッと心が掴まれるような漢らしさを感じさせられるものだった。
そして、不思議な曲を描いた紫の禍々しい剣。
鋼鉄よりも硬いと言われるドラゴンの鱗を、いとも簡単に斬り刻んでいる。
名のある名剣、宝剣なのは間違いないだろう。
それを自由自在に扱っている少年は、本当に自分と同じ新入生なのか。
皆同じことを考えていた。
それはいろいろな言葉であり、いろいろな心情もあったのであるけども
一言で表すならば、そう。
『凄い』
と。
だが、ドラゴンもボロボロに
あともう少しで少年の勝利と思われたその時、戦況はひっくり返った。
◇◆◇
こいつ、硬すぎるっ!?
こちらの攻撃は深く入っているし、身体中ボロボロのくせに、
なんで倒れないんだよ!
満身創痍といった姿になってなお、当初と変わらない殺気を放ち続けている目の前の竜に、改めて恐怖を感じる。
だが、もう一押しだ。
こうなったらジリ貧だっ!
根気よくじっくりと……
だがしかし。
この時の俺はすっかりと忘れていた。
ジリ貧? 無理だ。
今の俺の力は、限定的に引き上げられたというだけのものだったのだから。
唐突に俺の体から力が抜けていく
「! やっべっ……」
刀を突き刺した状態で力が抜けたせいで、斬りきることが出来ず静止してしまった。
勿論、そんな隙を見逃してくれるほど相手は優しくない。
好機とばかりに自分の背中、俺が突き刺さっている背中に銃口を向け
空気の咆哮を連射した。
「うぉぉおおおっ! ワード入力『盾』項目に保管されている武器、全開放っ!?」
スマホからガボッという音と共に、俺の目の前に巨大な黒い穴が出来る。
その穴から、俺が今まで『想像』で創ってはしまっていた、『盾』項目と設定しておいた中に入っていた物が一気にすべて放出された。
形が歪なもの・バランスが取れていないもの・途轍もなく重いもの・半分しか形状を保ってないもの・物凄く薄いもの・見た目だけ素晴らしいもの
と、ありとあらゆる盾が乱雑にスクラムを組み、行方を遮る壁となってブレスを迎え撃つ。
結果としては
盾はすべて弾け飛び、俺は無傷であるものの、その衝撃で空中に放り投げられた。
いやーくず鉄も数ありゃ中々やるもんだね。
って、そんなこと言ってる場合じゃ無いな。
さて。着地は辛うじて大丈夫なのだが。
問題はドラゴンが俺に追撃しようとしているとこなんだよなぁ……
せめて地面に着くまで攻撃しないでくれないかなぁ〜……
そんな考え虚しく、ドラゴンは小さく息を吸って速攻ブレスを撃ち放ってきた。
連射では無いし大きさこそ小さいが、速さが尋常では無い。コントロールも完璧だ。
どうしよう。もう防ぎようが無いんだが……
「世界一微力であり、世界一優しき光の精霊よ・我の呼びかけに応え、与える力を授けん・ここに魂を繋ぐ道を築く・我が献上の理よ・闇を滅ぼし明るく照らす光なれ! 『譲渡』!」
俺の真下から聞き慣れた、明るく凛とした声が響く。
その瞬間、俺の体に形容しがたい何かが流れ込み、力が湧いてくる。
気泡のようなものを放出しながら薄くなり始めていた学ランも、一気にテッカテカの新品となった。
魔力が、俺の体を巡ってる。
その初めての不思議な感覚に戸惑いながらも、自然と口元がつり上がった。
ありがとう。ハル。
今俺に力を取り戻させてくれた少女に心からのお礼をし。
「ど ぅらぁっ!」
目の前に迫ったブレスを斬り捨てる。
「へっ!?」
まだまだぁ! 勝負はこれからだ!
戦況は再びひっくり返る。
◇◆◇
図書館についた。
ちゃんと開いてくれていた。
「はぁっ! はぁっ! た、確か、この……辺りに……!」
昨日の夜、ユウマと別れたあと、実は『二冊』魔導書を見つけていた。
一冊目は、やけに簡単に見つかった。まるで引かれているかのように。
でも、その魔導書
「やっぱり、小さいよね……」
最早本ではなく、手帳といったレベルで小さい、お手頃サイズの魔導書だったのだ。
「明らかに見た目、ハズレだよね」
実際、小さかったからもう一冊見つかるまで頑張って、その後見つかった二冊目を寮に持ち帰ったんだけど。
「えぇいっ!そんなこと言ってる場合じゃ無いよ! それにこの小さいやつなら、ちゃんとした契約してなくても、大丈夫かもしれないし」
魔導書を握って、精一杯真剣に語りかけた。
「お願いっ! 今すぐ魔法が使えるようにならないといけないの! そうじゃ無いと、間に合わない。
だから、今だけでいい、今だけでいいから、貴方の魔法を頂戴!
今回の件が終わったら、正式に契約するから、今は、仮契約って事で。 お願い! 力を貸して!」
ピカッと魔導書が小さく光った。
まるで私の声に応えたみたいに。
そして、最初の一ページ、この魔導書の専用魔法が一つ読めるようになった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして戻ろうと思ったら、なんかユウマがグラウンドで叫んでました。
なんでいるのぉ!?
っていうか、大丈夫かな!
「ちょっ! ユウ……」
声をかけようとした瞬間、ユウマの周りにあった黒いオーラみたいなのが服になった。
真っ黒でユウマにとても似合っている。
いつものユウマより、男の子っぽい感じがした。
「格好いい……かも」
自分で無意識に呟いて、あわあわと取り乱す。
うぅ〜なんか顔が熱くなってきた……
直視できないよぉ〜
と、いうことでチラチラ、チラチラッと様子を見ていたけれど、
「え……嘘、でしょ……」
なんかユウマがすごく強くなってる。
えぇー! さっきまでの間になにがあったのー!?
そういった驚きと
「……す、凄い」
という驚きで、立ち尽くしてしまった。
なんか、冷水を被せられたような気持ちになった。
私がいなくても、大丈夫なんじゃ無いか。
魔法が使えるようになれば、追いつけないまでも、少しは近づけるんじゃないかと思ったのに。
一気に差をつけられちゃった。
私がいても、逆に迷惑にしかならないんじゃ。
その時、ユウマがいきなり止まってしまって、ピンチになった。
「え?」
グリンッと、首をひねったドラゴンは小さく口を開いた。
「い、いや」
ユウマが殺されてしまう。
そう直感した私は、ユウマの元に向かって直ぐに走り出した。
ユウマはドラゴンの攻撃を防いだけど、空に放り出された。
私は直ぐに詠唱を始めた。
私の魔導書『恩恵』の専用魔法、『譲渡』は、自分の決定した対象に、自分の何か一つを与えることができる。
体力もないし、攻撃力もないし、そんなないものばっかりの私が、唯一助けになるものを与えられるとしたら、それは。
「お母さん譲りの、この魔力しかないっ!」
ユウマに魔力を与えたところで意味がない可能性だって十分あるけど、でも、私が十分に与えられるような物は、これしかないから。
どうかこれが、ユウマの手助けになりますように。
そう願って、魔力をユウマに譲渡した。
◇◆◇
なんとか、戦えるようになった。
だが、どうする。
ハルからもらえる魔力も無限じゃない。
どこかで途切れる時が来る。
それまでに倒さないと。
だけど硬いんだよねーこいつ!
今も斬り続けてんのにまだ耐えてやがる。
ほんと、どうするかなぁ〜……
もうスマホの中には使えるアイテムとか入ってないし、せめてそこらへんの木でも吸い込んで、保険にしとくか?
ん?
スマホの、中? 木? 入れる。
蛇? 魔物?
・・・・・・・
おぉっ!!
良いこと思いついたぁっ!?
思い切って、ドラゴンの顔面の目の前に跳躍する。
ドラゴンは即座に口を開け、ブレスを打ち込んできた。
そのブレスを師匠のアシストも貰い捌ききる。
勘違いしてたよ。制限とかないんだな、そのブレス。
でも、一回打ったらほんの少しだがクールタイムを必要とする。
その一瞬を狙うっ!?
開けられた口が閉じようとした瞬間。
「ワード入力! 『剣』項目に保管されている武器、全開放っ!?」
目の前に突き出したスマホの画面から出現する巨大な黒い穴から、スドドドドドドドドドドという音を奏でながら剣が次々とドラゴンの口の中へと放り込まれていく。
それを余さず飲み込んだドラゴンは、キョトンとしたような表情となり。
地面に着地した俺は、に や ぁあ と非常に悪どい笑みを浮かべた。
「一定範囲から離れた『剣』。全回収。ポチッとな」
ぎゅるぅぅぅぅぅぅううああああん!!
大気がうねるような音が辺り全体を支配し、
バシュゥンっ!
という音を残し、すべての音が消え去った。
いや、ただ一つ。
カッカッカッといった、スマホを叩く音だけは鳴っていた。
そして
「よっしゃぁぁぁぁ!勝ったぁあ!!」
次元の歪みに連れ去られたかのように忽然とその場から消滅したドラゴンと。
高らかにスマホを掲げ、勝利の雄叫びをあげる俺を見て。
周りでその現場を目撃していた者たちから、ワッと割れんばかりの拍手喝采が巻き起こった。
その場では。
俺に涙目で突っ込んできたハル。
俺たちを囲んでワーワーと叫ぶ声。
そして、スマホの画面で貯蓄魔力メーターに記されている 502365 という数字となった、元ドラゴンの存在が、魔力メーターの青白い輝きとなって太陽の光を反射していた。
ふぃ〜。取り敢えずドラゴンとの戦い、魔導学院の受験はこれにて終了です。
さて、今後のユウマとハルに待ち受けるものとは……
今後とも『魔力を持たない俺は』を宜しくお願いします!




