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十年先も、また君と  作者: 深/深木
十年先も、また君と
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創国祭

 千人は収容できるであろう円状の広場を囲うように、大きな石柱が等間隔で空高くそびえ建つ。柱の下には水路が通り、その中をアクアブルーの水が流れている。サラサラ流れる水は秋晴れの太陽を柔らかく反射し、白亜の神殿に彩りを添えていた。床も柱も全てが白亜の石でつくられた白の神殿の最奥には、これまた純白の祭壇が置かれている。

 祭壇には普段以上に豪華な供物が捧げられていた。そしてまた、新たに供物を捧げ祭壇に祈るものが居る。きっと貴族であろう彼は、卵大の色鮮やかなガーネットの嵌った首飾りを捧げ、神に祈っていた。

 そう、今は【創国祭】真っ最中である。




 父上を訪ねたあの日から三日もしないうちに、【シュトラ】の詳細を綴った手紙が送られてきた。服装は平民の分は国が用意するが、豪商や貴族は礼節に則った服を自分で用意する事、供物は生き物以外なら詩でも歌でも何でもいいと書かれていた。ただし、詩や歌や踊りの類は実際に祭壇前で披露するとあった。

 そして、俺はヴァッサー国の最後だということ。

 今年の主催国はヴァッサーなので、午前にオープスト、シュピラーレ、エーアトボーデンの【シュトラ】が祈りを捧げる。そして昼食後、グルート、ヴァッサーとなる。つまり俺はこのメインイベントのラストを飾るという訳だ。今回の【創国祭】への俺意気込みと覚悟を受けて父上が気を利かせてくれたらしい。最後の祈りは大体三時頃となっており、神殿が最も美しく見える時間帯に合わせてある。

 神との対話を望む俺としては、願ったり叶ったりな状況ではあるのだが、瀬戸際に権力を使ってねじ込んで貰っておいて一番いい配役についた所為で、他の【シュトラ】達の目が痛い。


「なんだ、あの供物。やる気ないなら初めから【シュトラ】になるなよ」

「本当よね。だから貴族って嫌なのよ」


 とまぁ、さっきからこんな風に盛大に嫌味を言われている。俺の爵位を知っている高位の貴族は流石にあからさまな嫌味や嘲笑はしないが、目で文句を言っているのが分かる。 

 父上が気を利かせてくれたのも本当だろうが、多分こうなるのも分かっていて俺を最後にしたはずだ。権力を私事で使うとこういうことになると、身を持って体験させられているのだろう。正直、こんな奴らに何を言われても痛くも痒くも無いので放っておいている。そんな事よりも大事なことあるからな。むしろ先ほどから、その様子をキオが離れた場所からハラハラした様子で見ているのがとても気になっている。

 俺が【シュトラ】にねじ込んで貰ったのはキオには秘密にして貰っていたので、ヴァッサーの【シュトラ】が集められた時に、俺が動いたので驚いていた。他の者達の目もあり堪えたようだが、今にもこちらに駆け寄ってきそうなほど、はた目から見てソワソワしている。しかし、此処まで来たらどうしてやることも出来ないので、キオの物言いたげな視線を無視して、先ほど文句をつけられた供物に目をやる。

 俺が、供物に選んだのは二十本のシュネーの花だった。花弁の小さいシュネーは二十本では片手に収まる程度の花束にしかならなかった。しかし、市場にあるものとは違い俺の持つシュネーはこの神殿に負けないくらい真っ白だ。

 昨日の夜、【白銀の花畑】から自分で一本一本選んで摘んできた。供物を何にするかはとても悩んだが、贖罪を誓うにはキオと見たこの花が一番ふさわしいと思ったのだ。

 しかし、平民の【シュトラ】でさえも果物の籠盛りとか俺よりは見栄えのするものを持ってきている。シュネーの花を銀糸のリボンでまとめただけの俺は、他の国の参加者からも悪い意味で注目を集めていた。

 そんな俺に父上は一瞬だけ驚いた表情を見せた後、我関せずの態度を貫いている。先ほどキオに詰め寄られていたようだが、上手くあしらっていたのを見た。

 そうこうしているうちに、俺の前の者が祭壇に向かって行った。その際、俺に物言いたげな顔をしていた。本来ならば彼がラストの予定だったのだろう。しかし俺は、誰に何と言われようとも代わる気は無いので、無視しておいた。

 彼が供物を捧げ、祈り始めたのを見て、心臓に手を添える。ドクドクドクといつもより早く鼓動を刻んでいるのが分かる。空を見上げれば綺麗な青空だった。しかし、【シュネー祭】の時よりも何処か遠く感じた青に不安を感じ、見るのを止める。

 祭壇に目を向ければ、祭壇からほど近い場所に座るキオが目に入った。俺よりも不安そうな表情を浮かべるキオに、つい笑ってしまった。そんな俺の態度に怒った表情をつくって見せるキオに、不安だった気持ちも落ち着いていく。もう一度、キオを見れば何故だか凄く驚いた顔をしていた。

 その表情に首を傾げる。しかし、すぐに【シュトラ】の案内係に、祭壇に向かうよう声をかけられる。何時の間にか、前の者の祈りが終わっていたらしい。無人になった祭壇に早く行くよう促され、俺は歩き出す。一歩一歩、祭壇に近づいて行くたびに不思議と周りの音が無くなっていくのを感じた。

 

 もうすぐ、俺の【想告祭】始まる。



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