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転生したら冒険者1年目で国最強になってました~社会人1年目の一般人が世界を救うまでの話~  作者: 秋枝葉
アルテディズ国編

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幕間 ベラドンナの堕落

一部本編でも語っていますが、アルテディズ国の現状を把握してもらうために書きました。

読まなくても本編に影響はありません。

【アルテディズ国】


 アルテディズ国の地下に存在する洞窟を潜ると見えてくるのは、鬱蒼と茂る森と薄い雲がかかった空へ伸びる城の塔である。


 この洞窟は所謂ダンジョンと呼ばれるものの入り口だが、アルテディズ国とこの場所を繋ぐ洞窟は一本道となっており迷宮化していないためすぐに向こう岸へ辿り着くことができる。

 ダンジョンにしか出没しない魔物も現れないため、第二王妃ベラドンナが統治する以前からヴァンパイアはこの道を通りアルテディズ国と秘密裏に交易を結んでいた。


 洞窟が繋がる場所は魔界であるが、悪魔たちが棲む大陸とは異なり海が侵略を阻む孤島に存在している。そのため、現在の住人はヴァンパイアと魔人たちだけであり、悪魔の脅威は皆無と言ってよかった。


 この洞窟を見つけたのは偶然であったが、表世界の洞窟の上にアルテディズ城を建てたのは偶然ではない。

 当時のヴァンパイアロード、アイリスの祖父に当たる人物が若い商人と盟約を結んで建てさせたのだ。


 その商人こそがカイラスの父であり、村長を務めていた彼の後ろだてをヴァンパイアが担うことで普通では考えられないほどの急成長を遂げ、現在のアルテディズ国を創り上げたのである。


 裏世界では統治者をアイリスの父へ移してからもアルテディズ国との関係は続き、表世界も裏世界も豊かな国として繁栄していった。


 しかし、カイラスの父が亡くなり国主の座をカイラスが継ぐと徐々に表世界の統治に翳りが見える。


 それでもアイリスの父は強制的な政治的干渉をしなかった。当時から虐げられていた魔人や自分たちヴァンパイアが人間として平等に扱われるべきと掲げる大義を実践するため、助言はしても手は出さず統治者の手腕に任せていたのである。


 そして、更に時は過ぎ、ベラドンナが裏世界の統治者へ君臨すると表世界のアルテディズ国は完全にその統治をヴァンパイアに管理され傀儡国家となってしまう。

 アイリスがアルテディズ国へ到着したとき、魔人たちが虐げられていたのもカイラスが統治者として全く機能していないことが原因であった。





 ――――裏世界 ヴァンパイア城


「ママ?…ママぁ?……あ、いた。どうしたの、鼻歌なんか歌っちゃって。何かいい事でもあった?」


 ここは王妃が使う寝室。

 本来であれば所有者が許可するまで立ち入らないのがマナーであるが、この青年はズカズカと部屋の中へと入っていき広い寝室を探しながら進む。

 そして、目的の部屋の主が窓際でワインを片手に鼻歌を歌っているところを見つけると気さくに話しかけるのだった。


「あら、お帰りなさい。またエドガーとどこかへ行っていたの?あなたが居なくて寂しかったのよ?」


「ごめんごめん。それよりも城下町の治安が悪くなってるみたいだけど、叛乱分子でも暴れてるの?」


 青年が聞くと部屋の主は軽く溜め息を吐く。


「まったく、またそんな硬い話をして…。あれは政権批判をした奴隷を見せしめに殺したら他の奴隷たちが暴れ出しただけよ。大したことじゃないわ。」


 部屋の主はさもくだらない事のように話すが、実際には国民の大半が加わった一揆であるため城内は騒がしい。それでも女の機嫌が頗る良いのは表世界から戻ったホビットの報告を聞いたためであった。


「セグリットが珍しく報告に来たの。ついに()()()が見つかったそうよ。

 実験体をけしかけたから、もう死体になってるかもね。辛うじて命を拾ったとしてももう袋のネズミだわ。これで漸くこの国の全てが手に入る。」


「それはおめでとう、ママ。じゃあ僕はまた出掛けるけど、楽しんでね。」


「あら、もう行くの?来たばかりじゃない…。」


 女が不貞腐れたような表情を浮かべると青年は女の前まで進みそっと頬に手をやる。


「ごめんよ、ママ。だけど、僕も使命があるから行かなくちゃ。ママなら分かってくれるよね?」


 青年の所作や言葉に女はうっとりとした顔になる。


「仕方ないわね、あなたは自慢の息子だもの。早く仕事を終わらせて戻ってくるのよ。」


 そう言いながら頬に添えられた青年の手を握り愛おしい視線を青年へと向ける。

 それを見た青年は爽やかな笑顔を向けて女に答える。


「もちろんさ。次戻ってくるときにはママは念願の女王になってるね。応援してるよ、ベラドンナ。」


「あなたも気をつけて。困ったことがあればいつでも頼りなさい、ヴィクト。」


 そう言って手を離すと青年は出口へと向かっていく。


 背を向けた青年ヴィクトの表情が先ほどまでの好青年な笑顔から一転して、醜悪を好む悪魔の表情となっていたことをベラドンナは知らない。

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