魔界
魔界に降りたつ時にみた世界の全容は、
はたしてこの大地の記憶なのか?
とてもとても視点の高い位置から五つの光の玉が降り注ぐ。
他ならぬ勇者達が、この魔界に着床しようと降り立つ軌跡であるが、
意識とは異なる感覚が駆け巡り、魔界のあらましをまずは遠景から、
探ることが出来た。
この大地は枯れ果てているところと、
熟し切って腐った果実のようになったどろどろの土地、
うごめく肉塊があふれる飛び地、
酸の湖があふれる瘴気放つ魔界の密林、
赤い山の数々、
マグマ溢れる群島など、
数えきれないほどの悪意が顔を見せている。
そんな中を飛ぶ、恐竜型モンスターや、
猿のような魔物、
腐臭を放つ魔界植物、
目玉だらけの虫、
鼻が異様に発達した生命体。
果てのないほど魔界に適用した個体が数多く見受けられ、
そんな生き物をみると、
とてもここがもと人間界と同じ、人が住む大地だったとは思えない。
そして魔族にとっても住み心地が良い世界とは言えないだろう。
魔界とは生命が進化しすぎたのちに行きつく地獄である。
死んだものは亡者となる。
生きているものは果てしない進化の旅路につく、
生まれたものは死を覚悟する。
育むものは血と肉を渇望する。
淀んだ大気に稲光が光る。
誰がこのような世界にしてしまったのか?
理由も原因も全くの謎だ、
ただ言えることは、
大魔王が存在する限り、この地獄は延命を続けるということである。
それ故に勇者達はこの大地に旅に出ることを決めた、
そして無事に仲間と合流し、
敵の存在を至る所から抹殺していき、
やがて大魔王の喉元も掻っ切るつもりである。
大魔王の治世とはどのようなものだろうか?
生贄に捧げてきた人間の数幾知れず、
多すぎた魔族による人間の管理は今や、
完全に人間を家畜として扱うことを決めこんでいる。
ガス生命体が溢れる腐臭の森が人間が住まう地域を囲んで孤立させている。
今日も人間を乗せた魔界の馬車が動くとき、
上流魔族たちの玩具と化した人間という、
歪んだ世界の理が確実に露わになる。
転生者が死にまくった先は魔界につながるのだろうか?
あまりにも延命を続け過ぎた世界は淀んでいる。
悪魔が笛を吹く、
耳に心地の悪い感覚が残る。
道化師が笑う、魔界の醜態をさらして踊る。
魔族の女たちのハーレムはにおい立つ香水の香りでむせ返る。
血の匂いを消すために必要以上の香を焚く。
誰もが汚職に手を染めていて、
賄賂の無いところが珍しいくらいである。
魔界の通貨は質が悪く、不気味な大魔王の顔が刻印されている。
至る所に張り巡らされた道は血管の様に伸びて、
大魔王延命のために各地の特産品が持ち込まれる道である。
重い重い血税が決められ、ノルマが課せられ奪い合いが続く、
果てしない闘争が、魔族を戦いに掻き立て、
瀕発する殺し合いが戦争を引き起こし、
幾億もの民族が死に絶え、立ち上がることは無かった。
残酷な描写の数々は言葉に表すことは出来ず、
全て魔界の蛮習として書物に残るのみである。
魔界の識字率は魔王領の識字率と比較した時、
より一層落ち込む、なにより魔族よりもモンスターのほうが多い故に、
知性のないモンスターをカウントしない決定にしても、
それでも一割にも満たない数のものしか言葉を理解していない。
いや言葉を理解しない方がマシなのかもしれない、
この環境で言葉を理解したのなら発狂し、死を求めることだろう。
魔界には混沌が広がっていた。
勇者達は挑む、
腐れた大地に。




