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違和感

サルシャ姫の能力は、

どこまで人格に影響を与えるのだろうか?

「よう盗賊、遅かったな?」

「もう皆晩御飯終わっちゃったよ?」

「あ、盗賊さんの分は私が取っておきました」

「ありがとう」


盗賊は勇者達の部屋に入ると、

軽い食事を取って、

寝室にさっと入っていった。


「どうしたんだろう?

 そういや姫様の事も」

「あの調子じゃ、

 あんまり良いことなかったんじゃないかしら?」

「良いことって、そんな」

僧侶は自分が盗賊の事を心配しているのか、

盗賊と姫のことを心配しているのか自分で分かっていないが、


「あらそういう意味じゃないわよ?

 心配しないでってば! 大丈夫よ! っね?」

僧侶の背を叩く、

魔法使いの励ましはちょっといらぬ心配に近かった。


「そういうことでは!なくて!ですね!」


「んー? 何の話なんだ?」

「勇者さんは黙っててください!」

「ひぇーおっかね!

 おれも寝ちまおうかな!

 明日は休みだし!」

勇者はいそいそと自分の寝室に向かった。


「みんな休んじゃったわね?

 どうする? 話、訊くけど?」

魔法使いは穏やかそうに僧侶にうながしてみせた。

「話、話ですか?

 わたし、そんなつもりは」

「やーね、世間話みたいなもんじゃない、

 近頃、戦ってばっかだし、

 ここいらでちょっと積もる話もあるでしょ?」


「……そうですね」

僧侶は落ち着きを取り戻すと。


「魔法使いの里でのこと、

 あまりにも早く過ぎてしまって、

 魔法使いさんは不満に思うことは無かったですか?」

「不満? ねえ?

 でも旅って不平不満はつきものじゃない?

 わたしはそんなに気にしてないけど」

「でも、

 里の人達、

 みんな」


「わたし小さかったし、

 そんなに気にしてないよ、

 それより僧侶の話、訊きたいな」

魔法使いは僧侶のことに興味津々なようで、

顔を覗き込むようにして、返答を待っている。


「わたし、幼いころから、あまり記憶が無いんです」

「……記憶が?」

「ええ、気がついた時には僧侶として修行に入っていましたし」

「それは、あなたが真面目な証拠ね

 忙しくしてたから過去を振り返る暇が無かったのよ」


「それに、

 皆さんとの出会いもおぼろげで……」


「気付いたら、私たちといたっての?

 でも変ね?

 確かに僧侶との記憶ってそんなに」


魔法使いは改めて考えてみると、

僧侶との出会いや、接点が、

冒険の中で欠け落ちていることに、

そして今のパーティーになったいきさつに、

ついても大まかで大雑把だったことだけ、

記憶していた。


「そんな私が許せないんです、

 だってみんなと一緒に戦うって決めたのに、

 皆との記憶が曖昧だなんて」

「もう、考え過ぎよ?

 真面目なのはいいのだけれどね」

「それに…・・・」


僧侶には記憶がおかしいのは他でもなく、

自分が、自分で無い行いを平然としている。

そんなことがある、自分が二面性を持っていると。

偉く素気ないと思えば、急激に感情が変化する。

それはある種、自分自身の人間性が揺らいでいると、

異常を感じ取っていたのである。


「わたし、このままでいいんでしょうか?」

「わたしは今のままの僧侶が好きよ」

「……」


「パーティーでいるとその場のノリみたいのが、

 生まれちゃうじゃない? きっとその延長線で、

 今まで過ごしてきたことが不安になったのよ」

「そう、でしょうか」


もう夜も深い、


「休みましょ? ね?」

「……おやすみなさい」


二人はそれぞれの寝室に行くと、

その一日は終わった。

大きな力の前で、

人間は無力である。

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