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「みんな無事か。」

「はっ。神城以下艦橋要員は負傷、欠員なしであります。司令もよくご無事で。」

彰子が敬礼と共に全員無事を伝える。張り詰めていた緊張が解け、艦橋にほっとした雰囲気が漂う。

「無事で何よりだ。艦内及び全艦に本艦が私の指揮下に戻ったことを通告。」

楢橋が了解しましたと電信機に向かい直し、送信を始める。

「いや。私は、砲弾の降り注ぐ海は航海してきましたが、直接、銃を向けられるのは怖いものですな。」

南郷が肩を下ろしながらそう呟いた。金沢がそれに応じる。

「確かにそうですね。しかし、艦長も丸腰で、あのアンとかいう女と渡り合ってましたから、お2人はさすがに胆力が違いますな。」

多田野は銃を司令官席に置いた。

「皆のお陰だな。これらの兵は二階堂艦長から応援だ。ありがとう。君たちは帰ってくれ。」

アヤセ乗組の陸戦隊が敬礼して帰っていく。

「通信、二階堂艦長に伝わったんですね。」

彰子がほっとしたように独り呟いた。

「そうか。これは神城艦長の発案か。」

多田野の言葉に彰子が恥ずかしそうに頷いた。

「発案という程のものではありませんが…。思いつきです。」

「ありがとう。兵力不足で困っていたところだった。」

多田野は素直に彰子に頭を下げた。彰子が慌てて敬礼で応じる。

「司令。艦長。ミズホから入電です。水雷原の切れ目を発見したとの事です。」

と楢崎が少し弾んだ声でそう告げる。

「そうか。では、後はアーイさん次第だな。」

作戦の肝であった報告に多田野は目下の懸案事項である爆弾の様子を聞こうと機関室への伝声管に手を伸ばした。すると逆に伝声管から機関長のほっとした声が聞こえてきた。

「機関室、上村です。たった今、爆弾の解除に成功しました。捕虜は営巣に戻します。」

「こちら、多田野。よくやってくれた。アーイさんにもよくお礼を言ってほしい。この作戦が落ち着き次第、お礼には行くが。」

「かしこまりました。尚、機関はすべて正常に動作中。作戦遂行に支障なし。」

矢次早に別の伝声管から日野と井上の報告が入ってくる。

「日野です。左舷甲板より報告致します。敵の離艦を確認。爆発物も持っていきました。」

「司令室、井上麻里奈伍長より報告致します。司令が確保なさった敵兵は隠し持っていた毒を飲み、死亡しました。今、三上先生に見ていただきました。」

と報告した井上の声は少し涙声だった。きっとあの敵兵の死ぬところを見てしまったのだろうと多田野は察し、できるだけ優しい声を心がける。

「ありがとう。井上くん。三上先生に艦内の死傷者と敵方の死傷者をまとめて検死と報告するように伝えてくれるかな。」

「かしこまりました。」

「司令、検死と負傷者の治療には時間がかかるものと思われます。遠藤艦隊の負担を減らすためにも上陸作戦遂行が急務と具申致します。」

「そうだな。では、ゼン島上陸作戦を開始する。手筈通り、連絡機を飛ばして遠藤艦隊に連絡を。」

多田野の宣言に艦橋はまた一気に引き締まった空間となっていった。

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