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「時間通りだね。最初の時は一時間ぐらい早く来てたのに」
当然のようにカシムは先に着き、カクテルを一杯口にしていた。
小さなBARであり、席も六席。今はカシムとマスターの二人のみ。
二人で会う時はいつもそうで、貸切にしているのかもしれない。
彼女は年齢不詳であり、出身も分からない。日本人ではない事は確かだ。
金色の髪に小麦色の肌。緑色の瞳。日本語を流暢に話すが、多数の言語も話せる。
マスターも日本人ではなく、別の国の人間だ。銀髪に白い肌。目の鋭さを隠すように眼鏡を掛けている。細身の体ながらも、何かをしていた雰囲気を纏っている。
二人の関係に対して、何も聞いていない。知り合いではあるのだろう。でなければ、情報漏洩を防ぐため、第三者のいる場所は選ばない。
彼女はマスターを信用しているという事だ。
「急な誘いだからだろうが。それに追加情報を読む必要があったんだろ? ……頼んだのは俺なんだが」
「そういう律儀なところは変わらないね。お互い様ってところで」
今回はギリギリになったが、いつもは三十分前には着くようにしている。
カシムもそれが分かっていて、冗談交じりに言ってきているだけだ。
「当然、バイクなんか乗ってきてないよね?」
俺がカシムの隣に座ると、マスターがカクテルを置く。
「ブラッディマリーでございます」
トマトジュースとウオッカの真っ赤なカクテル。
【ロストワールド】だけでなく、メイデンの情報をカシムは持ち、血を連想させるカクテルを選んだ……わけじゃない。
俺が好きなカクテルでもなく、彼女の嫌がらせでもない。ただし、意味はある。
カクテルの色によって危険度を示す。
赤は危険度高。赤いカクテルの中でもブラッディマリーは最上位を意味する。
「ブラッディマリー……そこまで危険だと判断したのか?」
「未知な部分が多過ぎなの。赤を選んだのは私だけど、このカクテルにしたのはマスター。……こういう商売で利用出来る場でもあるから」
マスターはカシムの同僚、仲間……というわけじゃない。元情報屋という可能性。もしくは、俺達以外の同業者がこの場を利用しており、その中に今回の件の事があった……
マスターは基本喋らず、黙々と仕事をしている。俺はマスターと二人で話した事はない。
だが、提供者は教えなくとも、危険である事を教えてくれたのは、常連というのもあり、少しは気に許しているからだろうか。
とはいえ、それ以上の情報をマスターは口にしない。
こちらの情報も手にするため、耳を澄ましている事もあるが……危険を知らせたマスターを信用しておこう。




