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「クソッ!待てーッ!」
後ろからは相変わらず追っ手が数十人来ていた。
そして、既に十メートルそこそこといった距離まで接近していた!
中の騒ぎに気を取られた門兵達を、リリーとマリウスが気付かれずに倒すという計画が成功しても、中の兵達に門を潜られたら、リリーやマリウスの顔が割れてしまう!
しかし、そこにもちゃんと段取りが成されていた。
「ああーーっ!ボクの売り物がぁ!!」
入り口付近に紛れ込んでいたグルゴが、手作りの装飾品をレッドカーペットにぶちまけたのだ!
数珠の様に金属の玉を繋げた腕輪やネックレスなどを大量にばら蒔き、兵達はそれを踏んでは転ぶ。
「グアッ!」
「ギャアッ!」
「痛ぇ!」
先頭を走っていた兵達が次々に転び、地べたで慌てて立とうとするも上手く立てずにもがいている。
後続の兵達もそれらに妨げられて、足止めを余儀なくされた。
持つべきものは、親友だ。
グルゴ救出から、このパーティーの十日前まで、身を隠す様に旅に出た俺は、レティの婚姻パーティーの事を戻るまで知らなかった。
戻った翌々日、グルゴの家を訪れた時に知り、それから計画を立てた。
グルゴは、計画を打ち明けてから約一週間、ほとんど寝ずにこれだけ大量のアクセサリーを作ってくれたのだ。
一つに幾つの玉が繋がっているのか解らないが、レッドカーペットを埋め尽くす程の玉の数は、数え切れない程の量だった。
そうして仲間達の助けを借りて、俺はレティと門を潜る。
「何やってんだ!」
「早く立て!」
「追うんだ!急げ!」
等と捲し立てる警備兵達を尻目に、スピードブーストで公園内を南へ駆け抜けた。
そして公園から出ると、直ぐに左に曲がる。
公園の壁のお陰で、警備兵達からは俺達の姿が見えなくなったそこには、ゴッツが馬を連れて待っていた。
「遅かったじゃねぇか!ホラ!急げよ!」
後から追ってくるグルゴの馬を残し、俺とレティで一頭の馬に跨がった。
そして。
「ありがとう、ゴッツ!」
「ああ!?礼なんか要らねぇよ。それより、早く行け!じゃねぇと俺まで仲間だとバレたらグルゴに馬を渡すまで待てねぇだろ」
そうだ。
そして、グルゴと共に、俺はレティを連れてオーリーを出る。
そういう計画だった。
「そうだな。じゃあ、行くよ!リリー達にも宜しく伝えてくれ!」
「ああ!解ったから、早く行けよ!」
「……じゃあ、またな!」
「おう!」
互いに手を挙げていつものように別れを告げると、俺は馬の腹を蹴った。
勢い良く走り出した馬は、俺の手綱に操られ、オーリーを後にしたのだった。
二日間の強行だった。
コルト・コーレリアの内海沿いの町で、ゴッツ達三人と、グルゴと落ち合う予定だった。
ムーアは公務でもない限り、首都を出ることはできない。
だから、数珠を回収した後にグルゴから事情だけ伝えてくれる様に頼んであった。
ムーアに関しては、レティの仲人をする事が解っていた。
パーティーの関係者となるムーアに、この事を事前に打ち明けるのは、例え口が固いムーアであっても、表情や言葉の端々に溢れないとも限らない。
それに、敵を欺くならまず味方から、という訳では無いが、味方で欺くなら、関係者であるムーアが適任だった。
まだ日は空にあるのだが、早いうちに宿を探して部屋をとり、待ち合わせの町の入り口に戻ると、リリー達三人が既に到着していた。
「おう!居ねぇから、何かあったかと心配しちまったじゃねぇか!」
とゴッツ。
「ああ、すまない。先に宿をとっていたんだ」
「それにしても、上手くやったねぇ!」
俺の弁解も余所に、リリーは計画が成功した事に盛り上がっていた。
「ああ、ホントに上出来だ!」
「皆、本当にありがとう!」
そんなやり取りをしている間に。
「皆ーっ!お待たせーっ!」
遠くから届いた声は、ようやく最後の一人、グルゴが到着したのだった。
それから、レティを含めた六人は、宿の酒場で食事と酒と談笑に耽っていった。
そして、昼間から飲み始めた三人組とグルゴは、日が落ちる頃には酔い潰れて部屋で休んでいた。
そんな折。
俺は、レティを連れ出して馬に跨がる。
そして、向かうは町の北側にある高台だった。
いつかレティに話した、夜景が綺麗な高台。
再び、二人で一頭の馬に跨がり、その高台へ向かった。
町の灯りはまだ沢山点いている。
そんな町並みを駆け抜け、馬は町を出て高台にたどり着いた。
「もう、目を開けて良いよ」
高台に上る前から、レティには目を閉じておく様に伝えていた。
「うわぁー……。ホントに、キレイ……」
目を開いたレティは、眼下に広がる無数の灯りの輝きに、感嘆の声をあげた。
ゆっくりとした時間が二人を包む。
隣で感動して嘆息するレティの息遣いが聞こえる様だ。
静まり返った高台の草原。
その草の上に二人で座り、町の灯りと夜空の月と星の煌めき、さらには海に反射する星達と月明りの輝きに、幻想的な光景を思わせる風景を眺めていた。
或いはたったの数秒だったのかもしれない。
経つ時が定かではない時間の中で、俺は改めてレティを見つめた。
すると、レティもこちらを見て微笑む。
そして、夜に輝く光の祝福に包まれて、二人は目を瞑り、そっと唇を重ねたのだった―――
―――完
こうして、セグの物語は完結を迎えますが、数々の旅の物語はまた別の機会にて、語らせて頂きます!
『小さき男』シリーズを、今後とも宜しくお願いします!




