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空は晴天に恵まれ、暖かな日射しが会場の空気を優しく包んでいた。
パーティーは滞りなく進められ、レティと東方伯の御子息であるカイル・ロブ・レスカーが雛壇で寄り添っていた。
「さあ、皆様!ここで、ご夫婦となられる新郎、新婦より、誓いの言葉を頂きたいと思います!皆様も、お見届け頂けますよう、壇上のお二人にご注目願います!」
司会の言葉に、会場に居た名だたる貴族達の注目が、壇上の二人に注がれる。
「とうとう、ここまで来たか……」
会場の皆が拍手で盛大に讃える中、雛壇の端に設けられた仲人の椅子から、メレルは人知れず溢した。
国王と言えども仲人として、主賓より目立たない様に質素に設えた椅子が引かれ、メレルも重たい腰を上げざるを得なかったのだ。
そして。
神父を勤める、ガレット枢機卿による口上が始まる。
「カイル・ロブ・レスカー殿。貴方は、いつ、いかなる時も、この者を愛し、支え合い、慈しみ合って、命尽きるまで添い遂げることを誓いますか?」
枢機卿の重く優しい言葉に、誓いの言葉が重みを増す。
「誓います」
カイルは、即座にそう応えた。
そして、ガレットはカイルを見て、微笑みながら頷く。
次はレティの番だ。
ここで誓えば、例え婚姻パーティーと言えども、結婚が決定されたも同然。
披露宴形式の、略式結婚式の様なものだ。
式と披露宴を別に執り行うのが一般的だが、何分忙しい身分ばかりを集めた国の重鎮だらけの式ゆえに、時間をあまり割けないからと配慮し、この形式で執り行う事になった。
ゆえに、届けこそ後日の申請となるが、これはもう事実上の結婚式なのだ。
そして、ガレットの視線がレティへと向けられた。
メレルは、レティの気持ちを理解しているからこそ、この瞬間、胸を捕まれた様な思いに表情が沈んだ。
そんなメレルが会場へと視線を移すと、一番遠くの席にグルゴの姿を捕らえた。
「……まさか!?」
カイルの誓いに拍手喝采の中、思わず声をあげてしまったが、誰にも気付かれる事はなく、驚いた顔を向けられたグルゴのみがメレルに笑顔を送っていた。
その時。
「……ちょぉっと待ったああぁぁぁーーーっ!!」
会場内に響く大声で、式を止める者が居た。
その者は、外から会場を囲む柵を飛び越えて、会場内の芝生に降り立つ。
「……な!?」
「なんだ、貴様は!!」
警備をしていた兵達が、侵入者に警戒する!
「その婚姻、待ってくれ!」
侵入者はそう言って、会場中央の花道に向かって走り出した!
「お前達!何してる!」
「その者を捕まえろ!」
どこからともなく警備兵達に指示が飛ぶ!
それを受けた兵は、その者を取り押さえるべく駆け出した!
しかし、侵入者は素早い動きでそれらをかわし、赤い絨毯の上を雛壇に向かって走る!
そして。
「レティ!愛してる!やっぱり俺は、レティじゃなきゃダメなんだ!」
「貴様!何を言ってる!!」
道半ばで声をあげて告白する侵入者に、警備兵が飛びかかる!
侵入者はそれをかわして、尚も続けた!
「俺、あの時から何度も諦めようとしたんだ!でも、諦められなかった!」
「このっ!!」
「……ふざけるなっ!!」
今度は二人がかりで飛びかかるが、それも難なく避けて。
「いつ、いかなる時も―――!」
次から次へと兵が飛びかかる中、それらをかわしながら侵入者は続けた!
「貴女を愛し、支え合い、慈しみ合って、生涯、添い遂げることを誓います!!」
「……くぉのォーッ!!」
「大人しく捕まれ!!」
オーリー・ヴァン・メルンの要職に就く重鎮達の目の前で、堂々と言い放った侵入者に、誰からともなく歓声が上がり始めた!
「俺はもう、地位も何も無い!だけど、俺はオーリーを出て、何とか仕事も見つけて必ず幸せにして見せる!だから!……だから、俺と来てくれ!!」
最後に十数人に及ぶ兵達をすり抜け、レティの目の前にたどり着いた侵入者は、真っ直ぐにレティを見つめ、手を差し伸べた!
その堂々たる覇気と、無茶苦茶な行動に、捕まえようとしていた兵達も呆気にとられ、動きが止まる!
「……なっ!?何なんだ貴様は!!レティシア殿は私の嫁だぞ!!」
横からカイルがそう言って詰め寄った!
しかし、侵入者がカイルを一瞥すると、詰め寄る足が止まる!
「……くっ!警備兵!何をやっている!早くこの侵入者を捕らえろ!!」
だが、負けじとカイルは兵達にそう怒鳴ると、兵達も我に返って動き出した!
「時間がない。俺の手を、とってくれないか?」
迫り来る十数人もの兵。
その威圧感にも負けず、落ち着いた声でレティに告げられた言葉。
レティの目の前に差し出された手の主である侵入者とは、あの、惜しまれつつも次期守護五天の座を逃した、セグ・セイダースだった。




