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「来た!セグのヴォルドレイだわ!マリウス、宜しく!」
「おお!待ってたぜ!マリウス、ちゃんとセグから見えるように高く突き立てろよ!」
ゴブリンやコボルドの群れの中で、人間族が三人、自らの腕や足を鋼鉄化した巨漢を先頭に、小高い山の麓の洞窟へ向かっていた。
「ああ!任せろ!……スールドレイ!!」
リリーとゴッツの掛け声に応えて、一番後ろに居たマリウスが先頭を走るゴッツの左前方に氷の槍を突き立てる!
「グアーーッ!」
「ギャーーッ!」
数人のゴブリンやコボルドの悲鳴が上がるが、マリウスはそれらの隙間を狙って放った為、致命傷には至ってない。
「スールドレイ!……スールドレイ!」
続けて二発放つと、合わせて三本の氷の槍が空へ向かって突き立つ!
「マリウス、あとはセグが合流するまで、適当に等間隔でお願い!」
「あいよ!」
「セグ、早く来いよ!」
数で圧倒するゴブリン達は、多少術を受けたくらいでは怯まない。
まして、致命傷にもならない攻撃では尚更だった。
「アチッ!?……くそっ!オラァ!」
ゴッツが火の玉を肩に受けながらも、近くのゴブリンを鋼鉄の拳で弾き飛ばす。
マリウスがスールドレイを放ったところで、ゴブリン達には畏怖も与えられず、すぐに攻撃して来る状況だ。
三人は、それをかわしたり、鞘に入れたままの剣等の打撃で応戦しながら走っていた。
その後も等間隔で放たれる氷の槍は、三人の位置と進行方向を示し、いずれ合流するホビットの青年には良い目印となっていた。
「……あれか!」
俺は、三発放たれたスールドレイを見つけ、その矛先に三人が向かっている事を理解した。
「約一キロか……。待ってろよ!すぐ行くからな!」
そう言って、再び念力を込めて走り始める。
立ちはだかる邪魔なゴブリン達は、例によってタックルの様に弾き飛ばす。
左右から振り下ろされ、または横に薙ぐ武器は、しっかり避けながら突き進んだ。
「うおっと!」
時折、スレスレをかわす事がある。
大体は振り下ろされる頃には前に通りすぎてしまうのだが、希にピンポイントで当たりそうな攻撃があるのだ。
念力を込めた移動では判断してから避ける動作に至るまでに極めて危険な時がある。
そんな事も承知の上だったし、これまでにもこういった死地は幾つも掻い潜ってきた。
そんな俺にとっては、今のようなスレスレの攻撃も、軽く肝を冷やす程度でしかなかった。
「……あっぶなかったなぁ……」
そんな独り言をぼやきながら、仲間の元へひた走る。
マラソン並みの速さで人混みの中を駆け回るような状況に、集中は途切れさせてはならない。
余所見も出来ないから、先ほどのぼやきも前方を向きながら口をついていた。
「よし!もうすぐだ!」
マリウスのスールドレイが六発目を放たれた時、俺の位置から百メートルも無い事に気付く。
「おーい!リリー!ゴッツ!マリウス!」
俺は、そろそろ声も届くだろうと、名前を呼びながら走った。
が、一度目の呼び掛けには応答はなかった。
もう一度、同じように呼び掛けた。
すると。
「セグか!?」
「ここだ!!」
「もう目の前に洞窟が見えるわ!ゴブリン達が湧いて出てる!」
二度目の呼び掛けに、三人の思い思いの声が返ってきた。
「ああ!俺にも見えてる!入り口で落ち合おう!」
「ええ!」
「了解!」
「解った!」
俺の掛け声に、三人の返事があって間も無く、俺が一足先に洞窟の入り口に辿り着いた。
「セグ!」
「お前、速ぇなぁ!」
「うおっ!?もう着いてたのか!?」
間も無くして三人も辿り着き、俺達は見事合流したのだった。
「ああ!俺は一切応戦しないで駆け抜けてきただけだからな!」
「マジか!?」
「いや、アブねぇ時は防いだり、足止め喰らったりするだろーがよ!?」
俺の話に、男二人が驚く。
「何はともあれ、一仕事お疲れ様!」
「ああ!何とか説得は成功だ!」
リリーが俺を労ってくれた。
さすがに敵の本拠地の入り口だけあって、ゆっくりと話をしている暇は与えてくれないらしい。
さっきからも俺達は敵の攻撃をかわしながら会話をしていた。
だが、合流したら伝えなければならない事がある。
ノーズウェルとの交渉で、防戦を受ける代わりにこちらがやらなければならない条件だ。
「ただ、皆には申し訳ないが、時間は二時間だ。それが防戦をのむ条件だった」
俺からノーズウェルに伝えた言葉だが、近接交戦状態での防戦など、本来ならば何時間も時間をかけられるものではない。
例え一時間と言っても、ノーズウェルは簡単には首を縦には振らなかったはずなのだ。
それを解っていて、それでも尚、目一杯の時間を俺は提示したつもりだ。
つまり、もっと時間に余裕を持たせていたら、あの交渉は成せなかった。
こちらから言ったのは、向こうも最大限だといずれ解る事を先に示したに過ぎない。
そして、それを信じてくれたか、薄々気付いたかしたからこそ、ノーズウェルも時間以外の交換条件を訴えてきたのだ。
俺達は最低限二時間以上。
ノーズウェルは二時間以下を望み、互いに折り合いが付くのが二時間と言うピンポイントの交渉だった。
「解ったわ!何とかやりましょ!」
「やれるだけやってやるさ!」
「おう!俺がやってやるぜ!」
リリー、マリウス、ゴッツの三人が、頼もしく応えてくれる。
「ありがとう!」
俺は、三人に礼を伝えた。
すると。
「じゃ、こうしては居られないわ!速いとこ行きましょ!?」
時間制限が課された以上、俺達にのんびりする余裕は無い。
「ああ!」
「おうよ!」
「行くぜ!」
男三人は、其々にリリーに応え。
「「「「うぉりゃあああぁぁぁーーーッッ!!!」」」」
全員で意気を一つに、ゴブリン達が涌き出る洞窟へ入って行くのだった。




