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雨は相変わらず強く降り注いでいる。
空は分厚い雲が覆い被さり、所々で争いに怒りを示すかの如く、雷鳴を轟かせていた。
暗がりの地上では、地の混じる無数の赤い水溜まりが点在し、幾つもの骸がそれを隠すように敷き詰められている。
それでも尚、その上を戦場にして争うホビットとゴブリン、コボルドの亜人達。
その中で、一回り大きな人間族が三人。
それにホビットを一人加えた四人組が、戦乱の真ん中で剣舞を披露していた。
「……オラッ!喰らえ!」
マリウスは十メーター程離れた位置にいるゴブリンを中心に、雨を利用したイルズスレイ、所謂ウォータースラッシュを乱発する。
「グギャーッ!」
「グゾーッ!」
「ギザマーッ!」
ゴブリン達の断末魔を幾つ聞いただろうか。
この不毛な戦いが、一体何をもたらすの言うのだ。
いや、答えは解っている。
更なる怨恨しか生まれないのだ。
それを解っていても、突き進むしかない自分の無力さに奥歯を噛む。
「クソッ!こんなの間違ってる!」
「そうだね……。ゴブリンやコボルド達も、さっきの兵隊の話から察すると、その”なんとかって人“に焚き付けられただけなんでしょ?」
俺の苛立つ声に、リリーが応えた。
”なんとかって人“とは、もちろんブロンクスの事だ。
「しょうがねえだろ!今は殺らなきゃ俺達が殺られる!」
「そうだッ!だから、今は殺るしか……ウオッ!?あぶねぇ!」
ゴッツやマリウスの言うことも尤もだった。
「みんな!少しの間、三人で踏ん張れるか!?」
俺は、みんなの気持ちが同じことを確認すると、ある提案を持ちかける。
「なんだ!?」
「どうした!?」
「何かやる気!?」
俺の提案に、マリウス、ゴッツ、リリーの順で疑問が返ってきた。
「ああ!一先ず俺は、西方軍に行って防戦するように頼んでくる!」
「は!?」
「一人で!?」
俺の提案は、マリウスとリリーに更なる疑問を生ませた。
「ああ!ハッキリ言って、これだけの乱戦の中だとむしろ一人の方が動きやすい!」
「本気か!?」
俺の返答にゴッツが驚きを挟むが、俺は「ああ!」と頷いて、答えの続きを三人ともに伝える様に告げた。
「こんな不毛な戦い、双方ともに最小限の被害で押さえる為だ!何としてでもやらなきゃならない!そして、その後は、ゴッツ達三人にもお願いがあるんだが……!!」
ゴッツへの答えから、そのまま三人へのお願いに移ると。
「その後の事は想像がつく!そんなもん、頼まれなくてもやってやらぁ!!」
マリウスは俺の考えを察知し、頼もしい事を言ってくれる。
「そうよ!それより、本当に一人で大丈夫!?」
リリーも同様に理解してくれた上に、俺の身を案じてくれた。
「ああ!大丈夫だ!」
「じゃあ決まりだな!俺もとことん付き合ってやるぜ!」
俺の答えにゴッツが決断を下す。
「じゃあ、一、二の三!で、あたし達は右前方のゴブリンの穴の方へ!セグは軍を説得してから来て!こっちに向かえる様になったら、セグは小さいので良いから戦場の真ん中にヴォルドレイを撃って!それを確認したら、私達はマリウスにスールドレイを放ってもらって、位置の目印を作りながら進むから!」
リリーはこんな時にも合理的な判断力を失わない。
手っ取り早く、戦闘にも効果的な合流方法を合わせた的確な指示だった。
「解った!じゃあ、行くぞ!」
「「「「一、二の……三ッ!!!」」」」
四人でカウントダウンし、最後の一文字で俺は三人の元から飛び出し、軍へ向けて走った!
軍までの距離は約二百メートル!
目の前には未だ群れなすゴブリンやコボルドの群れ!
俺は、極力敵を切らずに軍へ向けて走り出すのだった。




