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空は曇りに見舞われた。
何処と無く陰鬱な空気を気合いで弾き飛ばし、迎えに来たレティと共に家を出た。
ネルは後から来るらしく、まだ仕度が間に合わないと言って俺達だけ先に会場に向かったのだった。
「ほら!早くしないと始まっちゃうよ!」
「だあーっ!わーってるよ!」
「ゴッツが寝坊なんかするからだ……ぞって、あれ、セグじゃねーか!」
市街区を抜けようかと言うところで、ゴッツ達三人組とはち会わせる。
マリウスが俺を見て驚いていた。
「そんなに急がなくても、まだ始まらないよ。選手の俺でも集合時間は九時半だからな」
どうやらゴッツが寝坊したと思って、慌てて宿を出てきたらしい。
それを察知して、ゴッツのフォローをしてやる。
「あれ?九時から試合が始まるんじゃなかったの?」
リリーが不思議そうな顔をして聞いてきた。
「いや、準決は試合数も少ないから、試合は十時半からだ」
「あ、そーだったんだ!あたしてっきり昨日と同じ時間からだとばかり思ってたから……」
リリーが頭を掻きながら、バツが悪そうに言ってきた。
「ああ、そうか。そう言えば、昨日のバーベキューの時も今日の時間については触れてなかったもんな」
「なんだよ。だったらもう少し寝れたじゃねーか」
「バカゴッツ!セグと一緒に会場に行けるんだから、つべこべ言わないの!」
「そうだぜゴッツ。お前の場合、一時間多く寝ても『まだ、もう少し』とか言ってさらに寝坊するだけだろ。昨日はセグの試合があるから早めに切り上げたんだ。さっき起きた時点でお前も充分に寝たはずなんだから、シャキッとしろ」
ゴッツの言葉にリリーとマリウスが親のように叱る。
「あいあい、わーったよ」
「席とったら試合が始まるまで寝てりゃいいじゃん」
しょんぼりするゴッツに、思わず助け舟を出してしまう。
「おお!そりゃ名案だ!」
「もう好きにして……」
心底喜ぶゴッツの反応に、リリーがお手上げの仕草で呟いた。
そんなやり取りをしていた所へ、会場の方からこちらに走ってくる人影に気付く。
「……あ?」
「何だあれ?」
「何か叫んでるわ」
三人組もそれに気付くと、素の声が溢れた。
「あれ、騎士団の人じゃない?」
レティが俺の腕を掴んで小さく確認する。
「……みたいだな。俺達に向かって来てるのか?」
俺がレティに返すと、質問に答えたのはリリーだった。
「そうみたいよ……」
――セグ殿ぉーー!!―――
微かに前方からそんな叫び声が聞こえた。
「……ほら」
リリーも声を確認して、『どうする?』とでも言いたげな顔を向ける。
「用件は何なんだ?」
「解らねぇな。とりあえずこっちも歩いて近付こう」
俺の疑問はゴッツの主導的提案に引っ張られる。
「……ありゃだいぶ慌ててるなぁ」
小石に爪突く騎士を見て、マリウスが思った事を溢す。
「セグ殿ーっ!!」
距離もかなり近付いて、ハッキリとその声が届いた。
「なんだ!?何があった!?」
こちらもまだ距離がある騎士に同じ声量で返すが、あっという間に十五メートル、十メートルと距離を詰めた騎士が、俺達の前で止まって荒い呼吸を繰り返す。
「ゴホッ!……はあっ、はぁっ!はあっ、せ、セグ殿!」
「どうした!?」
やっとの事で言葉を振り絞る騎士の姿が、必死に何かを伝えに来た事を物語る。
「そ、それが……!……あっ!申し遅れました!私はノーズウェル西方守護隊所属のビトワーズと申します!」
「ああ!それは良いから何があったのか答えてくれ!」
丁寧にも自己紹介から入るビトワーズだが身分を確認するかどうかは用件による。
そんな事より、慌てている理由の方が俺には気になった。
「は、はい!それが、ノーズウェル様より伝令なのですが、セグ殿の御友人であるグルゴ殿が、ブロンクス率いる半端者の集団と見られる団体に拉致された模様!」
「「……なっ!?」」
突然の報せに、俺とレティの声が重なる。
二人は驚き、次の言葉が出なかった。




