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「リリー、ありがとな……」
ゴッツがようやくそう言うと。
「うん!」
「コレ、ホントにウマイよ」
「うん!ありがと!」
リリーの笑顔にゴッツも表情が明るくなる。
「さっきのは冗談よ!ちゃんと食べて、夜は夜でカレー楽しみにしててね!」
「……ああ!頑張って、生き残らねーとな!」
「うん!」「……ああ」
ゴッツの調子に、マリウスは凝りを残した様だが、長年コレで付き合ってきた仲なのだろう。マリウスもすぐに笑顔になり、食事を進めたのだった。
「……あそこから先には、フランドゲイルが何匹も居やがるんだよな……」
食事を終えて一息入れながら、数キロ先の岩場の途切れた辺りを見て、マリウスが呟く。
「ああ。タラックの人達を苦しめた、それどころかタラックへの行商達もわざわざルートを変えざるを得なかった元凶が、あそこの先にウヨウヨ居やがるはずだ」
「あたし達が、ここで終わらせるよ!」
「今回はセグも居る事だしな!」
三人の会話が始り、最後にゴッツが俺の肩を叩く。
「ああ。俺が根絶やしにしてやる」
そう返すと、リリーが少し頭を下げて。
「タラックに関係の無いあんたに、こんな事を頼んじゃって悪かったね。これはあたし達タラックの問題なんだけど……」
「いや、俺は別にあんたらに頼まれて来たんじゃない。ギルドはその町の近い地域で困っている問題を提示し、俺達旅人はそれを解決して収入を得ている。これは俺個人の、旅人としての生業を成す為の仕事の一つだ。それでもこうしてあんたらが来てくれただけでも、ありがたいと思うよ」
俺はリリーの詫びを遮って、感謝を述べる。
「……そう言ってくれると、こっちこそありがたいよ。お互い、自分達のために頑張ろう!」
「「「ああ!」」」
リリーの鼓舞に、俺を含めた三人が声を合わせた。
それから、皆の顔つきに真剣味が増す。
そして、皆で立ち上り、再び歩き始めた。
岩場はデコボコの岩のおかげで歩きにくいから、念力を込めたスピードは出せない。
普通に歩いて、凡そ四・五十分で岩場の東南端に着いた。
誰からともなく固唾を飲む音が聞こえる。
それは、俺だったかもしれないし、他の誰かだったのかもしれない。
「……さあて、行こうか!」
珍しくゴッツが掛け声をかける。
「ああ!」「ええ!」「おう!」
俺達の短い返事からも、俺自身も例外なく緊張しているのが互いに伝わる。
フランドゲイルは砂の中を主に移動している為、固い岩場には踏み込まない。
もちろん、ウシジゴクも同じだ。
だとすると、逃げる場合、ここまで逃げ切れればフランドゲイル達に追い打ちをかけられる事は無いワケだ。
ある意味、対フランドゲイルと牛ジゴク戦においては、岩場はバリケードとして活躍するだろう。
最初に足を踏み出したのは、ゴッツだった。
何だかんだ言っても、いざというときの勇気を一番持っているのがゴッツなのかな。
リリーもマリウスも、そんなゴッツを見て後に続いた。
「みんな、ヤバくなったらこの岩場に戻ろう」
「……えっ?」
最後にまだ岩場に居た俺が、そんな提案をして、リリーがそれに返す。
「この岩場なら、砂の中を移動するフランドゲイル等は追ってこれない。もし仮に追ってきたとしても岩の中は移動できないだろうから、砂から出て追ってくる事になる。そうなれば、地中から狙われるよりは幾らか楽に倒せるだろうからな」
「……なるほどな!よし、ソレで行こう!」
「「了解!」」
俺の説明に、マリウスが納得すると、ゴッツとリリーが応えた。
それを見て、俺はこの時、この三人の絶大な信頼に気付かされた。
声かけと応答が徹底されていて、臨機応変な対応にも柔軟。
そして何より、それぞれが自然に動いた結果が各々の役割も確立しているのだ。
基本、全員が対等である事が前提にある。
その中で、普段の動向をまとめるリーダーがリリー。
いざという時や決断をする時はゴッツ。
作戦や計算、手法を決定するのがマリウスという役割りが極めて自然に行われているのだ。
そして本来なら、事前に打ち合わせるべき事は三人で納得が行くまで綿密に話し合う。
今回は俺が挑んだ戦いで、その俺についてくる形になったから、昨日の酒場での俺の計画にも異論があったらしいマリウスも、俺の決定に深く追及する事は無かった。
だが、もしあれが三人だけで、俺の出した計画をリリーかゴッツが出していたら、マリウスに追及されていたのだろう。
三人は、元々一人で挑もうとしていた俺の意見を、俺がやり易くするための計画だと判断し、あまり追及をしなかったのだ。
本当に、互いを大切にしている三人が成せる、強い信頼があっての事だった。
俺は、そんな三人を正直羨ましく思いながら、彼らの後に続くのだった。




