84,天使に連れられて最強パーティーを訪ねた。
エキナセアを出ると、少女が空に向かって「サクラ~」と叫んでいた。
少女が口元に当てていた手を下ろすのと同時に、空から薄いピンクのものが降ってくる。
先ほど見た小鳥の色違いだ。
小鳥を肩に乗せて歩き出した少女は、少ししてから話しかけてきた。
「私、アオイって言います。皆さんのお名前は……?」
「俺はケイ。こっちがゼラ」
「よろしく」
「私はリーラです。この寝かけている子がユリシアです。ほら、ユリシア」
「……ん……よろしく……」
「よろしくお願いします。で、あの列車に乗るので走ります!」
アオイが指さしたのは、ガルダ内を走っている列車で、間もなく出発するようだ。
彼女は走る宣言をしてすぐに走り出しており、それを追いかける形になった。
リーラは魔法でユリシアを浮かせて運んでいて、走る速度はいつもと変わりなかったが、それでも追いつけないほどアオイは足が速かった。
「速いな、あの子」
「ああ。身軽だな」
ゼラとそんな会話をしながら走り、列車に乗り込む。
アオイはすでに乗り込んでおり、急に走ったことを詫びてきた。
「ごめんなさい、急に走って」
「いや、気にしなくていい。それより……君は足が速いな」
「あー……いつもいろんなものに追いかけられるので」
まあ、この外見ならそうなるか。
そう思ったのだが、そういうことではないらしい。
「あなたは魔物に狙われやすいようですからね。大変でしょう?」
「なんかもう慣れました……」
「魔物に?」
「はい。なんか、そういう体質らしくて」
そんな体質の人がいるのか。
初めて知った。
ガルダから出たりするのも大変なんだろう、ということは予想できるが、普通の人とどのくらい差があるのだろうか。
「まあ、お供が強いからどうにかなるんですけどね」
「お供?」
「店に居た白髪の子です。コガネちゃんっていいます」
「……契約」
それまでリーラに寄りかかって舟をこいでいたユリシアが急に声を出したので、アオイは驚いて少し浮いた。
驚きすぎな気もするが、可愛らしかった。
「ふぇ!?」
「あの子……契約獣……」
「あ、そうです、はい」
ユリシアはゆっくりと目を開け、アオイに向き直る。
そして、右手の人差し指をアオイの唇に当てた。
「何で分かったの……って、顔……してる」
アオイはユリシアの指があるからか口を開けず、コクコクと頷いた。
「あの子……あなたの……魔力、感じた……」
言いながらユリシアは指を離し、アオイはユリシアに驚きの目を向ける。
「魔力とかって分かるんですか!?」
「あたり……まえ……」
「コガネちゃんから私の魔力感じるんですか!?」
「うん……感じた……」
「サクラとモエギ……この子と、さっき手紙を運んで行った子は!?」
「感じる……よ……」
アオイの顔が輝いた。
魔力を感知できるのがそんなに珍しいだろうか?
「それ、誰でも出来たりはしないですよね?」
「誰でも……は……無理……でも、あなたは……出来る」
「ほんとですか!?」
「ん……」
そんな会話をしているうちに、列車が目的の場所に着いたらしい。
アオイに促され、列車を降りる。
列車を降りてすぐ、アオイの肩に止まっていた小鳥が「ピィ!」と一声鳴いて飛び立った。
「アオイさん、あの鳥は……」
「あ、サクラには先にクリソベリルのところに行ってもらいました。サクラが行けば私が行くって伝わりますから」
アオイはクリソベリルと仲がいいのだろうか。
エキナセアの店主もアオイと行けば大丈夫だと言っていたが……
考えてみれば契約獣がいるというのも不思議な話だ。
アオイの契約方法は明らかに血力契約ではない。
「そろそろ着きますよ~」
考え事をしながら歩いていると、アオイが振り返りつつ声をかけてきた。
顔を上げると、かなり大きな建物があった。
ここだろうか?
「アーオイちゃーん!!」
「わあ、アヤメさん」
「いらっしゃい♪」
建物の前に1人の女性が立っていて、アオイを見るなり抱き着いた。
そして一拍置いてこちらを向く。
「あなたたちが勇者一行ね。サクラちゃんから聞いたわ。とりあえずお入りなさい」
アオイに抱き着いた時とは全く違う、落ち着いた大人の雰囲気だ。
先ほどのは何だったのか。
「あれ?アヤメさん、サクラの言葉分かるんですか?」
「私じゃないわ。うちのパーティーに分かる子がいるの。アオイちゃんはまだあったことなかったかしらね」
アオイとそんな会話をしながら建物の中に入った女性は、玄関ホールの中央まで歩いてから振り返った。
「さて……あなたたちは何をしたいのかしら?手合わせ?それともなにか習いたいの?」
「……オリジナルスキルの、顕現です」
「……なるほどね。ほかの人は?」
「俺は魔法の習得です」
「タイプは?」
「サポートです」
「あなたたちは?」
「私は攻撃魔法の習得を」
「わたしは……特に……なにも……」
「じゃあ私とお茶しましょうか」
「ん……」
女性はユリシアの頭を撫で、ホールの端にある何かの装置に話しかける。
「モクラン、ツルバミ、ムギさん。来てくれる?」
女性がそう言って少し待つと、1人の人が階段の手すりから身を乗り出して声をかけてきた。
「アヤメー。ムギさん動きたくないって」
「あら。じゃあ案内お願いしていいかしら?」
「もちろん」
そういって降りてきたのは背の高い男性で、なかなかかっこいい。
アオイはその人を見ると、なぜか女性の背中に隠れた。
「アオイちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです。コーラルさん」
「コーラル、アオイちゃんが嫌がってるじゃない。早く行きなさいよ」
「はーい……はあ……俺なんかしたかな……?」
「ごめんなさい、ただ苦手なだけなんです。申し訳ないです」
「アオイちゃんは悪くないのよ。あ、コーラル、この子よ」
女性はアオイの頭を撫でながら俺を手で示す。
……俺はもう「子」と呼ばれる年でもないのだが。
だがそんな反論をするわけにもいかず、コーラルと呼ばれていた男性についていく。
男性は移動しながら話しかけてきた。
「俺はコーラル。君の名前は?」
「ケイです」
「ケイ君だね。これから会う人は、少し特殊な人なんだ。驚くとこもあると思うけど、抵抗しないであげてほしい」
「特殊、ですか」
「うん。種族がね」
種族。人間ではないのだろうか。
まあ、今更人外にあったくらいでは驚かない自信がある。
「大丈夫です」
「そっか。良かった」
俺の返事を聞いて、コーラルは安心したように笑った。
そして、1番奥の扉を叩く。
「ムギさん、勇者を連れて来ましたよ」




