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78,Q勉強再開ですね。Aやりたくないです…

 ガルダに帰ってきた次の日、私はヒエンさんに大量の紙を渡された。

 朝から混乱させてくれるとは。さすがヒエンさんだね☆


「で、ヒエンさん。これは?」

「筆記試験の勉強用に。そろそろ本格的に勉強しないといけないでしょう?」

「あー……試験いつだっけ?」

「3か月後よ」

「近いような遠いような……」

「割とあっという間よ」


 それは確かに……

 うーん……勉強か……

 苦手なんだよなぁ~

 店番しながらだから完全に放り出すことができないのがエキナセアのいいところだね。

 これ自分の部屋でやってたら5分で飽きるわ。


「じゃ、頑張ってね」

「え~……」


 ヒエンさんは軽やかに去っていった。

 ……8時50分。開店準備……

 コガネちゃんはもう準備始めてるかな?


「コガネちゃーん」

「あ、主って、なにその紙の束……」

「勉強用……」

「ああ……頑張れ?」


 もはや疑問形ですか。

 ガッツポーズ可愛かったから頑張るけどさ……


「はあ……とりあえず開店しようか」

「うん。準備は終わってるよ」

「はーい。じゃあ開けるね」


 紙の束をカウンターに置いて扉に向かう。

 扉を開けたら看板を出し、札をopenにひっくり返す。


「よーし。あとは待つだけだね」

「主、今日の来店予想は?」

「うーん……お昼前が忙しくなるかな」

「なるほど。じゃあお昼はさっさと食べれる物にするね」


 私の勘に対するコガネちゃんの信頼度よ……

 確かに自分でも不思議なくらい当たるけどさ……

 本当、何で当たるんだろ?


「さて……やりますか……」

「主、頑張れ。私は外を掃除してるね」

「はーい」


 コガネちゃんは箒を持って外に行った。

 さて。さてさて。やりますか。

 セルフで気合を入れるの得意じゃないんだよな……

 テストも勉強しないから点数ひどくて、先生方に「お前やればできるのに……」と言われまくったんだよね。


「えーっと……」


 問1、毒系4種をすべて答えよ

 回答「麻痺毒、睡毒、出血毒、即死毒」


 問2、毒消し草の生息地を答えよ

 回答「木の陰などの太陽光が直接当たらない場所」


 問3……


 ひたすら問題を解いてどれくらいの時間が経ったのか、問16までいったところでチリリン♪と音をたてて扉が開いた。

 お客さんだ。


「いらっしゃいませ~」

「やっほー、アオイさん」

「あ、ルイ君。いらっしゃい」


 入ってきたのはエキナセアの常連の少年だ。

 といっても、ルイ君は冒険者ではない。

 ギルドの職員なのだ。

 ギルド内で売っているポーションなどはエキナセアで製作されたものである。

 ギルドに売るときは少しだけ高く買ってもらえる。


「今回はポーション1箱、ハイポーション30個、毒消し1箱、解熱剤20個おねがいします」

「はーい。いつも通り届けに行けばいいですか?」

「はい。お代はその時に」

「はーい」


 ルイ君はメモを置いて帰っていった。

 ポーションは作らないといけないかな?ハイポーションと毒消しは在庫が大量にあって、解熱剤は……

 考えながら作業部屋に向かう。


「ヒエンさーん」

「あら、アオイちゃん。どうかした?」

「ギルドから注文だよ~。ポーション作って~」

「ちょうど良かった。今作り始めたところよ」

「わあ、ベストタイミング。あ、あと、解熱剤ってどこにある?」

「解熱剤は棚の一番下よ。ほかの注文は?あと数も」

「ポーション1箱、ハイポーション30個、毒消し1箱、解熱剤20個」

「なるほどね。とりあえず作るのはポーションだけでよさそうね」


 ポーション作りはヒエンさんがやってくれるそうなので、ほかのものを箱に詰めてしまう。

 毒消しは1箱引っ張り出すだけでいいし、解熱剤はハイポーションの箱に入れてしまっていいだろう。

 ハイポーションは後で数えるとして、先に解熱剤を出そうかな。


「主、掃除終わったよ。……主?」

「あ、コガネちゃん。お疲れ様」

「あ、いた」


 コガネちゃんが中に入ってきて不思議そうな声を出した。

 カウンターの陰になってて見えなかったかな?

 そんなことを考えている間に箒を置いたコガネちゃんがカウンターの裏に来た。

 そして目線を合わせるようにしゃがむ。

 しゃがむ瞬間前髪がフワッと上に上がった。可愛かった。


「ギルドからの注文?」

「うん。解熱剤引っ張り出したところ」

「へえ~……もしや私の午後は……」

「これの納品になる、かも」

「うーん……まあ、主に行かせるわけにもいかないし……」


 コガネちゃんはあごに手を当てながら呟く。

 そんな仕草すら可愛いとかもうなんなのこの生物は。


「何かすることある?」

「ハイポーションの数数えてくれる?30個」

「うん」


 しかもお手伝いしてくれるとか優秀すぎでは?

 コガネちゃん、本当に私なんかが主でいいの?

 もっといい人居るんじゃないかな?

 そっちに行かれたら泣くけど。


「はい、主。ハイポーション30個」

「はやっ」

「魔法超便利」

「うわ、ずるい。というかどこで覚えたのそんな言葉遣い」

「主と店主の会話」

「私かぁぁ!!!」


 思わず手で顔を覆って天を仰いでしまった。

 今度から言葉遣いに気を付けよう……


「で、主。それはこの中?」

「うん。入れたら蓋を……あれ?蓋どこに置いたっけ?」

「主の後ろに」

「あ、ほんとだ」


 コガネちゃん、たまたまだから。

 いつもこんなことしてるわけじゃないから。

 お願いだからそんな目で見ないで……

 さすがにつらいよ……


「よし、これであとはヒエンさん待ちだね」

「店主?」

「今ポーション作ってる」

「ああ、なるほど」


 そんなわけで、またのんびり店番ですな。

 勉強?後でやるって。



 午後1時。秋になったとはいえこの時間はまだ暑く、太陽を呪いたくなる。

 いい加減熱を弱めるべきだ。

 そんなことを考えてもどうにもならないので、何も言わないが。

 主は午後から作業部屋で何かを作るらしい。

 店主は店番。私は予想通り納品に行くことになり、こうして太陽に焼かれている。


「ピィ、ピッピ!」

「はーい、こっちは?」

「ピ!」


 箱を3つ重ねて持つとさすがに前が見えないので、サクラを連れ出してナビにしている。

 普段は落ち着きのないサクラだが、こういう時はしっかり仕事をこなしてくれる。

 危なっかしいことに変わりはないが。


「ピーッピ!」

「あ、本当だ」


 気が付くとギルドの前についていた。

 周りの人が私を凝視しているが、それは無視してギルドの中に入る。

 行くのはギルド内の売店だ。

 薬のほか、武器や防具も売っているし、魔物などの素材の鑑定、買い取りもしてくれる場所だ。

 街の店より値段は高いが、とにかく信用できるので駆け出し冒険者たちは信頼できる店が見つかるまでここで買い物をするのが一般的だ。

 エキナセアはそんなギルドに商品を卸している。

 主は分かっていないようだが、これは冒険者たちの信頼を得るのにとても大きなことなのだ。


「こんにちはー」

「あ、コガネさん。こんにちは」

「ご注文の品、お届けに上がりました」

「ありがとうございます。そこに置いてもらえますか」


 言われた場所に箱を下ろし、肩を回す。

 人間より筋力があり疲れにくくはあるが、肩は凝るのだ。


「コガネさん、これがお代です」

「はい、確かめさせてもらいます」


 ギルドがちょろまかすことなど無いと思うが、念のためだ。

 うん、ぴったり。

 顔を上げるとギルド側も確認を終わらせたところだった。

 お互いにミスはなく、笑顔で送り出してもらえた。


 受け取ったお代を内ポケットにいれ、サクラを回収して帰路を辿る。

 主はまだ作業部屋だろう。

 帰ったら1人で店番になりそうだ。

 店主はあれで、意外と忙しいのである。

 そんな風には見えないが。

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