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51,Q見つかりましたか?Aどうにか。

 ケートス入国2日目。

 私は差し込む朝日で目を覚ました。

 体を起こして周りを見渡す。

 はて、ここはどこだったか。

 ……あ、そうだ。ケートスの宿だ。


「あ、主。おはよう」

「おお、コガネ君。おはよう」

「ピィッ!」「チュン」

「サクラもモエギもおはよう」


 挨拶をしてから体を伸ばす。

 この宿のベッドは寝心地がいい。

 おかげでいい睡眠ができたようだ。

 すっかり目が覚めた。


「主、着替えて朝食を食べたらすぐに出るぞ」

「分かった〜」


 そういうコガネ君はもう食べ終わったようだ。

 机の上にはパンが1つしかない。

 サクラとモエギもコガネ君にブドウを貰ったようだ。

 机の上のブドウが昨日より減っている。

 そんなことを確認してからベッドを降りて、隣に置いておいた袋から着替えを取り出す。

 そしてモゾモゾと着替えて寝間着を袋に入れる。


「コガネ君、このパン美味しかった?」

「ああ。美味かった。今日の昼の分もあの店がいい」


 大絶賛だ。

 確かに昨日のパンも美味しかった。

 昨日の夕飯になったパンは、野菜と甘辛く煮た肉を固めのパンに挟んだものと、上には粉砂糖がかかっていて中にラズベリーやブルーベリーなどベリー系がたくさん入ったミックスベリーパンだった。

 美味しかった。両方すごく美味しかった。


「コガネ君、このパン何か入ってた?」

「いや、中は空洞だ。軽い感じだったぞ」

「なるほどね……朝に食べるにはありがたい」

「主、朝は眠気に負けて食欲が無いもんな」

「うん。ヒエンさん特製のパンだったらしっかり食べるけどね」


 でもたまにお米が恋しい……

 この世界お米無いんだよな……主食はパンだが、別に稲作くらいやっててもいいじゃないか。

 どっかの大陸でやって無いかな?稲作。

 東の方に行くとやってる気がするんだが。

 まあ、それはともかく頂くとしよう。


「いただきまーす」


 手を合わせてからパンを手に取る。確かに軽い。

 一口分をちぎって口に運ぶ。


「……ん!!」

「美味いだろ?」

「んー!」


 なんというか、クロワッサン的な食感なのだが、クロワッサンより甘くなく、どちらかと言うと塩味。

 美味しい。すごく美味しかった。


「ふう……ごちそうさまでした〜」

「珍しく早いな」

「美味しかったからね〜」


 いやぁ、満足満足。

 帰りも買っていこう。


「よし、主。出るぞ」

「あ、はーい」


 コガネ君に言われて立ちあがる。

 コガネ君は早々に準備を終わらせていたので、私が荷物を持ったら即出発だ。

 先にはしごを降りていたコガネ君に見守られつつはしごを降りてボートに乗り込む。

 そしてコガネ君から鍵を受け取り、ドアを開ける。


「主はそこで待っててくれ」

「はーい」


 宿の前に一旦ボートを止めてコガネ君が鍵を返しに行った。

 サクラは元気に私の周りを飛び回っている。

 モエギは若干眠そうだ。肩の上ではなく膝の上に乗っている。

 少しして、コガネ君が戻ってきた。


「おかえりー」

「ああ……主、朝市と入国審査所、どっち先に行きたい?」

「うーん……入国審査所!」


 結局昨日は行けなかったのだ。

 見たい。早く見たい。


「分かった。……サクラ、早く乗れ」

「ピッピーッ!(えー、飛びたい!)」

「駄目だ。主、サクラ捕まえて」

「分かった〜」

「ピィィ!(なんでー!)」


 両手でサクラを捕まえて抱え込むと、サクラが抗議の声と共に暴れ始める。

 ええい、バタバタするな!!揺れる!落ちる!!


「チュン、チュッチュー(サクラ、おとなしくしなさい)」

「……ピィ……(……うっす……)」


 鶴の一声ならぬモエギの一声……

 サクラがおとなしくなった。

 この2羽の上下関係がすごく気になるんだけど……

 まあ、何はともあれサクラがおとなしくなったので出発だ。目的地は入国審査所。


「コガネ君、入国審査所ってここからどのくらい?」

「約15分」

「そんなもんなのか」

「もっとかかると思ってたか?」

「うん。宿の周り観光客ほとんどいなかったから、奥まったところにあるもんだと思ってた」

「あの宿は通りを一本奥に入ったところにあったんだ。人通りは少ないが中央通りから遠くもない」

「へぇ〜そうなのか」


 ……今更だけど、なんでコガネ君はこんなにケートスの地理に詳しいんだろうか?

 前に来たこととかあったのかな?

 そんなことを考えてるうちに大通りに出た。

 本当に一本奥に入っただけだったようだ。


「チュン」

「お?どうしたモエギ」

「チュッ、チュンチュー(ちょっと、商船巡りしてきます)」

「いいけど……なぜに?」

「チューチュンチュッ(例のお知り合い、探して来ます)」

「なるほどね。じゃあお願いします」

「ピィ!ピッピーッ!(私も!私も行くー!)」

「分かった、分かったから暴れるな!……コガネ君、行かせていいよね?」

「ああ。サクラもモエギも、気をつけろ」

「ピィ!」「チュン」


 私の腕を抜け出したサクラが、先に飛び立っていたモエギに追いつく。

 そのまま横に並んで飛んでいく2羽を眺めて、コガネ君が一言呟いた。


「あれ、絶対モエギの方が立場上だな」


 と。とりあえず頷いて同意しておく。

 あれは絶対的にモエギの方が上だ。

 単純にモエギの方が年上らしいし。


「サクラが暴走したらモエギを呼んでくればいいわけか……」

「……主、モエギでも抑えきれてない感じもするぞ」

「だよね。近いうちに暴走癖を直さねば……」

「直せるのか?」

「わかんない」


 どことなく緩い会話をしながらボートに揺られること約10分。何か大きな建物が見えてきた。


「コガネ君、あれ?」

「ああ。そうだ」

「……でかくね?」

「あの中には約200人が生活できる設備が整ってるらしいぞ」

「え、なにそれすげぇ」


 近づくにつれ、建物の大きさはわかりやすくなっていく。

 どのくらい大きいかと言うと、見上げ過ぎて首が痛いくらい大きい。


「コガネ君、これ、近づいて大丈夫なの?」

「観光名所だからな。大丈夫だ」

「そっかぁ……観光名所かぁ……」


 そりゃそうだろうな……あのスケールなら嫌でも名所になるわ。

 ……嗚呼、首が痛い。


「……そろそろ行くか?」

「うん……そだね……」


 コガネ君がボートの向きを変え、入国審査所から遠ざかる。

 私が首をさすっていたからか、行きより早いスピードで大通りに戻っていく。

 いやあ、凄かった。凄かったが、次からは遠くで眺めるだけでいいな。


「……で、コガネ君」

「なんだ?」

「市で何買うの?」

「昼食と……水と……後は小腹を満たすなにか」

「食べ物ばっかだね」

「まあ、今日中にガルダに行こうと思ったら荷物は軽い方がいいからな」


 そうだった。今日ガルダに向けて出発して、今日ガルダに到着する予定だったんだ。


「ところで、ガルダまでどうやって移動するの?」

「馬」

「……馬?」


 頷くコガネ君。

 え?馬で移動すんの?

 ……あ、馬車?


「馬を1頭かりて、それでガルダまでひとっ走りだ」

「なんという強行軍」

「割と主流だぞ。この移動方法」

「……私、馬乗れないよ?」

「俺は乗れるから大丈夫だ」


 つまり、コガネ君にくっ付いてればいいわけか。

 ……これまでの移動とあんまり変わらないな。

 うん。まあ、なるようになるさ。


「どうした、主、目が死んでるぞ」

「ナンデモナイヨ……」

「そうか……」


 そんな死んだ目をした私のところにサクラとモエギが帰ってきた。


「ピィ!」「チュン」

「ア、オカエリ〜」

「ピィ!?」

「チュ、チュン……?」

「……うん、なんでもない。大丈夫」


 小鳥2羽に心配されるほどの死んだ目はヤバイな。

 とりあえず光を宿しておこう。


「サクラ、見つけたのか?」

「ピィッピーッ!」

「そうか。案内してくれ」


 コガネ君に指名されたのが嬉しいのか、サクラは機嫌よくボートを先導し始めた。

 モエギはまだ私を心配そうな目で見ている。

 そして肩に乗って、擦り寄ってくる。

 ……モフってもいいかな?



 私がモエギを全力でモフっている間に、ボートは中央通りから少し外れた通りに入っていた。

 サクラは通りに浮かぶ少し大きめの商船の前で止まっている。

 あれが、ヒエンさんのお知り合いの店のようだ。


「お?鳥だ。小鳥だ。魔力持ちってことは、誰かのお使いかな?」


 商船に近づくと、中から女の人の声が聞こえて来た。

 そして手が伸びて来て、指にサクラを止まらせる。


「綺麗な毛並みだね〜お前、どこの子だ〜?」


 商船の前にボートを止めて中を覗くと、そこには赤色が肩からオレンジ色に変わる特徴的な髪と、黄色と緑色という特徴的な目をした人がいた。

 ……この人で間違いないだろう。

 というか、間違えられるわけがない。


「あの……リーンさん、ですか?」

「ん〜?……あ、君かな?ヒエンが言ってたアオイちゃんは」


 質問に質問で返された。

 でもまあ、ヒエンさんのこと知ってるならこの人で間違いないだろう。

 ……私、さっきからこればっかり考えてるな……


「はい。アオイです」

「なるほど……確かに間違えられない外見だねぇ。これだけ見事な黒髪は久々に見た」

「……あなた様もなかなか間違えられない外見だと思いますが……」

「あはは。確かに〜ま、それはお互い様ってことで」


 失礼な物言いだったので内心焦ったのだが、リーンさんは全く気にしていないようだ。

 おおらかな人だな……


「さて。注文はヒエンから聞いてるから、代金と引き換えで商品を渡すね」

「え、ヒエンさんそんなことしてたんですか……」

「あれ?聞いてない?アオイちゃん用の魔道具ってことで承ったんだけど」

「……全く聞いてないです」


 また、ヒエンさんの謎のサプライズ精神が発動していたらしい。

 でも、私用の魔道具なら一言言って欲しかった。


「代金は175ヤルね〜。で、これが魔道具。腕に着けてね」


 コガネ君が代金を払っているタイミングで渡されたのは、腕輪だった。

 細身で、綺麗な装飾が施されている。

 中心に有色透明な青い宝石がはめ込まれていて、それを支えるためなのか中心だけ太めだ。

 ……どうやって着けるのだろうか。


「この突起押すと開くよ」

「これ、ですか?」

「うん。押してみ」


 言われた通りに側面に着いた小さな突起を押すと、カパッと小気味のいい音がして、開いた。

 どう開いたかと言うと、真ん中で割れるようにして、半円が2つ繋がった状態になった。

 真ん中に腕を置いて、押して元の形に戻すと、カチッとこれまた小気味のいい音がして元の形に戻った。


「あ、太さとか大丈夫?きつくない?」

「大丈夫です」


 少しゆとりはあるが回るほど緩くもない。

 ちょうどいい感じだ。


「……ちなみにこれ、なんの魔道具なんですか?」

「防御だよ。自動防御装置」

「良かったな、主。これで安心」

「そうだね……これで少しはコガネ君にも迷惑かける回数が減るかな……」

「あ、そうだ。それね、真ん中の魔法石の色が無くなったら魔力切れだから補充しないといけないんだ」

「……どうすればいいんですか?」

「一番は私のところに持ってきて貰うことだけど……私普段は第六大陸の店にいるからな〜」


 第六大陸……遠いことだけは分かる。

 どうしたらいいんだろうか……詰んでる気がする。


「ピィ」

「ん?」

「ピィピィ」

「……サクラ、それ、大丈夫なん?」

「チュン」

「……マジで?」


 サクラとモエギが言うには、第三大陸から第六大陸の間を軽い腕輪1つ抱えて飛ぶくらいは造作もないらしい。

 1羽だけでも、5日くらいあれば普通に往復できるそうだ。


「ねえ、あれさ、会話出来てるの?」

「ああ。主は動物と会話出来るから」

「へぇ〜獣人じゃないよね?」

「普通の人間だ」

「あの2羽は契約獣?」

「そうだ」

「君も?」

「ああ」

「魔力契約?」

「ああ」

「すごいね〜」


 なら問題ないかな?

 リーンさんとコガネ君の会話にも終わりが見えてきたし、大丈夫そうだと言うことを伝えておこう。


「えっと、サクラとモエギ……この2羽が腕輪運んでくれるそうなので、魔力の補充は大丈夫そうです」

「そんな内容の会話だったのか〜まあ、大丈夫ならそれでいい。これから帰るんでしょ?気をつけてね〜。ヒエンによろしく」

「はい。ありがとうございました」


 手を振ってリーンさんと別れる。

 いい人だったな。魔力の補充まで面倒見る義務はないだろうに、当然のように心配してたし。

 あれか?私がヒエンさんの保護下にいるからか?

 そうだとしてもいい人には変わりないか。


「うん。綺麗」

「そうだな。銀ってところがいい」

「だよね。金より銀の方がなんかいいよね」


 コガネとはなんだかんだ趣味が合う。

 ……そういえば、この旅の中でコガネちゃん見たのってレヨンさんのところにいる時だけだな。

 なんか懐かしくなってきた。

 早く帰ってコガネちゃんになってもらおう。


「さてと。主、パン買ったら出発だ」

「了解だぜ!」


 現在時刻は午前9時。

 昨日のパン屋さんを見つけて出発するまで、長くかかっても40分くらいだろう。

 今度はゆっくり買い物しに来たいな。

 そんなことを考える私を乗せたボートは、昨日と同じように賑わっている市場に入ったのだった。

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