36,Q出発ですか?Aはい。ラミアを出ます。
私が誘拐犯のオッサンたちに囲まれた翌日、ラミアを出る事になった。
というか、最初からそういう予定だった。
ラミアを早朝に出て、馬車でキマイラを目指す。
その間、話題と言えば私の誘拐されかけ事件の事だ。
「本当にもう。こんな事二度とあってはならないわ」
アヤメさんは1日経ってもご立腹だ。
ちなみに今はモクランさん手綱、アヤメさん休憩、ジェードさん見張りだ。
「アオイちゃんは国宝に指定すべきなのよ!!」
「そんな事したら今みたいに簡単には会えなくなるけど、いいの?」
「それは困るわね……そうだ!クリソべリルの宝にしましょう!」
「アヤメさんアヤメさん、私はクリソべリルの子じゃないです。エキナセアの子です」
「なん……ですって……!?」
「なんでショック受けてんの?」
モクランさんとアヤメさんと3人で喋りながら足をプラプラさせて流れる景色を眺める。
その時、ガタンッと馬車が揺れた。
「うひゃあっ……な、ななななんですか?」
「落ち着いて。というか君、ビックリすると人に抱きつくのは癖?」
「アオイちゃん、抱きつくなら私に……」
私はビックリし過ぎだと思うが、2人はビックリしなさ過ぎだと思う。
モクランさんに抱きつきつつ、周りをキョロキョロと見渡す。
アヤメさんが手を広げてこっちを見ながらソワソワしてる。来いって事かな?じゃあそっちに行こう。
モクランさんから離れてアヤメさんに抱きつく。
それと同時に再び馬車が大きく揺れる。
「うみゃっ」
「あら可愛い」
「君、猫獣人の血でも入ってるの?」
「入ってないですぅ〜純人間ですぅ〜」
「おーい。3人共気をつけてね。デカイのが来るよ」
「主、生きてる?」
「死にそうだよコガネ〜」
上からジェードさんとコガネがひょこっと顔を出す。
ところで、デカイのって?
「確かに地面が揺れてる感じね」
「なんだろうな……土系の魔獣?」
「魔獣だろうね〜魔物でこの魔力量は多すぎる」
ヒラリと降りてきたジェードさんは、いいながらなにかを取り出す。
懐から取り出したのは、折りたたみ式の双眼鏡のようなもの。
それを覗きながらゆっくりと馬車の外を見渡す。
「主、こっち」
「あ、コガネ君」
コガネ君に手招きされて、そちらに歩いていく。
そのタイミングでまたまた馬車が揺れ、運動神経がよろしくない私は転びかける。そこをコガネ君に抱きとめられ、そのままくっついて周りを見る。
「おっ、いたよ。地竜の弱小型かな」
「弱小型ならどうにかなりそうね。邪魔だし狩りましょうか」
「言うと思った。ジェード、方向は?」
「馬車正面より10時の方向、距離約100メートルかな」
「近いわね」
なにやら物騒な会話が聞こえる。
竜っていうと、あれか?ドラゴンか?
ドラゴンにはいい思い出がない。全くない。
「コガネ君とアオイちゃんは馬車で待ってて」
「えっ……それは……でも……はい。了解です」
「ジェード、主がそれはそれで不安だって」
「そっか、じゃあ付いてきた方がいいかな?意外とその方が安全かもよ?」
「そうね〜一緒のほうがいいわね。いざとなったら私がアオイちゃんを守るわ。いいでしょ?モクラン」
「はいはい。別にいいよ」
やった。よかった。
……あれ?コガネ君はなんで私の言いたいことが分かったの?
というかジェードさんのこと呼び捨てなの?
めっちゃ仲良くなってるよね?
「主、行くよ」
「あ、はい。……うん。私は運ばれるんだね」
「その方が早いし安全だ」
「うん。知ってる」
あ、もう行くの?速くね?スピード速くね?
言ってる間にクリソべリルの御三方は各々武器を持って馬車を飛び出しているわけでして。
私を抱えたコガネ君も飛び出しているわけでして。
……なんか、ドラゴンに会う前に移動で死ぬ気がするでござります。




