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33,Q初めての国外はどうですか?Aめっちゃ楽しいです。

 ガルダを出てから1時間。

 私ははしゃぎにはしゃいでいた。

 開け放たれた窓から少しだけ身を乗り出し(あまり乗り出し過ぎるとコガネ君とモクランさんに注意されるので)流れる風景にきゃあきゃあ言っている。


「モクランさんモクランさん、あれ、なんですか?」

「あれは灯棒。夜になると明かりがついて、ガルダまでの道を旅人に教えるんだよ」

「へぇー。魔法とかですか?」

「魔石……魔法を封じ込めた石だよ」

「ほー……そんなものが……」


 感心しつつ、再び窓の外を見る。

 ちょうど灯棒が過ぎ去った。


「君さ、外を見てるのそんなに楽しい?」

「はいっ!なにぶん初めてなので!」

「……初めて?ガルダの生まれじゃないのに?」

「……あ」

「君、どうやってガルダに来たのさ」


 どうやって……ヒエンさんに巻き込まれて。

 でも、それを言うわけにはいくまいて。

 というか、考えてみればガルダで目が覚める直前の事を覚えていない。

 ……あれ?直前どころか、1日分の記憶がない……

 学校の事とか、家族の事とかは思い出せるのに、なにか大切な事が記憶から抜け落ちている気がする。


「……どうしたの?顔色、悪いけど」

「記憶、ない……というか、欠けてるみたいです」

「ふーん……記憶障害?」

「たぶん……」


 頷くと、モクランさんは納得した顔をする。


「道理で何にも知らない訳だ」

「うっ……私、そんなになにも知りませんか?」

「うん。子供みたい」

「うう……」

「ま、分からない事があれば人に聞くのが1番だよ」


 言いながら、私の頭をポスポスと撫でる。


「俺も答えられる範囲で答えてあげるからさ」

「モクランお兄ちゃん……」

「その呼び方はやめて」

「あだっ」


 ポスポスがボスッという強打に変化した。

 痛い……


「別に聞く相手は俺だけじゃなくて、アヤメでも君のお供でもいいわけだしね」


 さっさと話題を戻したモクランさんは、馬車の前方でジェードさんと話しているコガネ君に目を向ける。

 ちなみにアヤメさんは、今は馬車の上に上がって見張りをしてます。

 クリソベリルの3人の連携は完璧で、1人が馬車(馬)を操り、1人が見張りをし、1人が馬車の中で休憩する。

 これをローテーション、90分交替でやるらしい。

 なのであと30分くらいでジェードさん休憩、モクランさん見張り、アヤメさん手綱になる。

 そうしたら馬車の前方に行こうかな。


「……あっ!モクランさん、あれはなんですか?」

「あれは魔窟だね」

「なんですか……その物々しい名前……」

「魔力が溜まって出来た洞窟。今はもう安全だよ」

「安全なんですか?」

「魔窟の最奥にいるボスを倒すと、その魔窟は魔物を生み出さなくなるからね」

「え?魔物って魔窟から発生するんです?」

「大体はね」


 その後、モクランさんお兄ちゃんが丁寧に説明してくれた内容をまとめると、

 人界に現れる魔物のほとんどは、魔窟から自然発生したやつら。これは、比較的簡単に倒せる下級、中級種に類する。ちょっと違うのが上級種と呼ばれるやつらで、こいつらは魔界生まれで倒すのが難しい。

 ……と、言う事らしい。


「なるほど……ドラゴンは、どうなんですか?」

「ドラゴンは魔物じゃないよ」

「へ?」

「魔物じゃなくて魔獣」

「……それ、違いますか?」

「魔獣のほうが強い」

「ザックリだな~」


 とはいえ疑問はスッキリ解決だ。

 ちょうどそのタイミングで、アヤメさんがヒラリッと入ってきた。


「時間よ〜交替交替」

「はいはい」

「アヤメは見張り嫌いだから、この時間だけはしっかり計るよね」

「いいでしょ、別に時間を誤魔化してはいないんだから」


 クリソベリルの方々が動き始め、私がアヤメさんに、コガネ君がジェードさんにくっついて移動する。

 その間にモクランさんは上に上がっていた。


「アヤメさんアヤメさん、ここ座っていいですか?」

「もちろんよ。隣と言わず膝の上でもいいわよ?」


 その申し出は丁寧にお断りして、隣に座る。


「おお、風が気持ちいい」

「上はもっと風が強いわよ。アオイちゃんは飛ばされるかも知れないわね」

「アヤメさん、私そんなに軽くないよ?」

「軽いわよ。軽すぎるわよ」


 うーん……平均のはずなんだが、コガネ君といいアヤメさんといい、私を軽々持ち上げすぎな気がする。

 コガネ君はともかくアヤメさんは女性ですからね?


「アヤメさんって、力持ちですよね……」

「どうしたの?急に」

「いや、私のこと軽々持ち上げるし、こないだフツーにトラ、引きずってたし……」

「うーん……まあ、人よりは力が強いのは認めるけど、モクランとかのほうが強いわよ?力は」

「あれ?モクランさん力持ちなんですか?」

「ええ。というか、ハーフエルフなわけだから人より高スペックなのは当たり前なんだけれどね」


 そういえばそうだった。モクランさん、ハーフエルフだった。

 魔法とか使えるのかな?

 というかアヤメさんの武器ってなんだろう。


「アヤメさんって、どんな武器使ってるんですか?」

「そうね〜基本は剣とか、槍とかだけど……あ、時々だけど、弓とかも使うわね」

「接近から後衛、更には援護まで……」

「ふふふ。私もなかなか高スペックでしょう?」

「はいっ!すごいです」


 小さく拍手をつけておく。

 アヤメさんはそんな私を見てニコニコしている。

 いい笑顔だ。


「他の方……ジェードさんとかは?」

「ジェードは基本サポート役ね。中距離援護とか、索敵とかもするわ。あと、防御結界も張れるわね」

「み、皆ハイスペック……」

「まあ、一応は大陸最強パーティーだもの。うち」

「そんなすごい肩書きが?!」

「ふふふ。ビックリした?」

「ビックリしました」


 その後も他愛ないお喋りを続け、特にこれといった問題は起こらず(勝手に心配していた魔物襲撃とかもなかった。)馬車はグイグイ進んで行った。

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