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29,Q帰ってきましたか?Aはい。ご帰宅されました。

 今日、ヒエンさんが帰宅します。

 はい。今日です。本日です。

 いやあ、長かった。異世界に来てから一番長い1週間だったと言っても過言ではない。

 この微妙な緊張感も今日で終わりだ。ヒエンさん何時に帰ってくるのか分からないけど。


「主、ポーションの数、オーケーです」


 ピシッと敬礼してコガネちゃんが報告してくれる。


「りょーかいです。じゃあ開けようか」


 こちらも敬礼で返しながら言い、看板を持って外に出る。

 定位置に看板を置き、ドアノブの札をopenにひっくり返したら店内に戻る。

 そして昨日に引き続き、『勇者さんってなーに?』を話題に盛り上がる。


「そもそも何をもって勇者なの?」

「異常な程強い……とか?」

「あれ?コガネちゃん昨日、今回の勇者は弱いって言ってなかった?」

「そういえばそうだ」

「勇者の条件……」

「勇者……勇者……」

「勇気のある者……とか?」

「どんくらいの勇気?」

「魔王と対峙しても全く動じないくらいの……」

「それ最早ただのバカなんじゃ……」


 2人揃ってうーむ……と唸る。

 そのままウダウダ考えていると、チリリン♪の鈴がなった。


「いらっしゃいませ〜」


 会話をやめて入口に目を向けると、常連客の冒険者さんである。

 ちなみに2人組。


「本日は何をお買い上げで?」

「ポーション4本とハイポーション2本お願い」

「えーっと、合計で100ヤルになります」


 どうでもいいが、手元には計算用の紙が置いてある。

 これには走り書きの数字が散りばめられているだけなので、私じゃないと分からない1品になっている。


「はい、ちょうど頂きました」


 私がお金を受け取ったタイミングで、コガネちゃんが袋詰めを終えた。

 中身を見せて確認をとり、袋を手渡す。

 ……あ!もしかして、冒険者の方が勇者とかに詳しいんじゃね!?


「あの、つかぬ事をお尋ねしますが……」

「ん?どうした?」

「勇者の条件とかってあるんですかね?」

「勇者の……ああ、そういえばラミアから旅立ったんだったか」

「はい。それで、なにかあるのかな〜?と、思いまして」

「そういうのは、こいつの方が詳しいよ」


 冒険者さんは自分の相方を示して言う。

 でもこの相方さん、喋ってるの見たことない。

 過去10回くらい来店してるけど、ずっと黙ってた。


「……勇者はおもに、オリジナルスキルを持った者を示す」


 ……喋った!!

 バリトンボイス!イケボ!めっちゃイケボ!


「オリジナルスキル?」


 驚いて固まった私に代わってコガネちゃんが質問している。


「オリジナルスキルは、けして後付けされる事のないスキルだ。非常に珍しく、強い力を持っているため、勇者の条件と言われる事が多い」

「多いって事は、他にもあるの?」

「勇者の条件、なんてものは定義されていないんだ。オリジナルスキルが無くても、人々から認められれば勇者だろう」

「なるほど……つまり認められれば誰でも勇者っ!ってことですか」

「まあ、そういう事だ」


 私とコガネちゃんは揃ってポンッと手を叩き、手を振って店から出ていく冒険者さんたちに引き留めてしまったお詫びも込めて深〜くおじきをした。


「謎は解けたね。コガネちゃん」

「スッキリしたね。主」


 疑問は消えた。と思ったら、コガネちゃんはまたなにか考え出した。


「先代勇者さんのパーティーは、全員がオリジナルスキル持ちだったのかな?」

「……言われてみれば、気になるかも。先代勇者さんのパーティーって何人?」

「6人、かな」

「意外と少ないな」

「使い魔とか入れればもう少し多くなるかも。」

「使い魔かぁ……ところで先代勇者さんが居たのってどのくらい前?」

「250年くらい前だと思う」

「結構前だな?!」

「でもエルフとかは普通に生きてる年数だよ」

「あ、そっか。エルフさんが居たんだった」


 ということは、記録は残ってるのかな?

 見てみたいな。先代勇者さんの記録。

 のほほんと考えながら耳飾りをいじくっていると、チリリン♪と鈴がなった。

 お客さんかな?


「ただいま〜」

「……うおうっヒエンさん!」

「あ、店主。お帰り」


 ……ビックリしたのは私だけか。

 コガネちゃんは全然驚いてない。

 まあ、それは一旦置いといて、だ。


「ヒエンさーん!!どこ行ってたの?!」

「ちょっと素材の買出しに」

「どこまで!?」

「ラミアまで」


 ラミア?ヒエンさんラミア行ってたの?


「ねえねえ、ヒエンさん、ラミアに勇者さん居た?」

「あら、もうここまで伝わってるのね。残念ながら私が行った頃には出発した後だったわ」

「そっかぁ……」

「主、会いたいの?」

「いや、オリジナルスキル持ちなのかどうか本人に確認したいな〜って」

「勇者はオリジナルスキル持ちみたいよ」

「そうなの?」


 ところでヒエンさんはどこでその情報手に入れたの?

 ラミアで噂になってたりするのかな?

 なってそうだな。勇者だし。


「とりあえず、土産話はまた後で。どう?1週間店主不在で大丈夫だった?」

「まあ、なんとかね」

「あらそう。大丈夫だったのね。さすがはアオイちゃんコガネちゃんコンビ。これなら私は自由に動けそうだわ」

「えっ!?ちょっとヒエンさん、突然いなくなるのはご勘弁だよ!?」

「なら行く三日前に伝えるわ」

「そういう問題じゃないっ!」


 ノリが軽いっ!驚くほど軽い!まるで無重力!

 こんなに軽いノリで店主が店を空けるお店が他にあるでしょうか!?いやない!あっちゃいけない!


「店主、店主。店主なら、先代勇者さんパーティーのこと、なにか知ってる?」


 私が頭を抱えているのを尻目にコガネちゃんはヒエンさんになにやら質問している。


「あら、どうしたの?急に」

「今代勇者の話をしてたら気になってきた」

「なら、お店を閉めた後にその話をしましょうか」

「ヒエンさんなんか知ってるの?」

「まあ、昔語り程度はね」


 言いながら、ヒエンさんは奥に行ってしまう。

 着替えてくると言って。

 今日もこれからしっかり働くらしい。

 さっすがヒエンさん★働き者だねっ★(7割皮肉)


「なにはともあれ、ヒエンさん帰ってくると安心感が五割増だね〜」

「えっ……主、気付いてたの?」

「へ?なにが?」

「……ううん、なんでもない」


 特に意味の無い呟きにコガネちゃんが過剰反応したかと思ったら、なんでもないと言う。

 …………気になる。

 気づいてたって、なんだ?


「コガネちゃん、何に気づいてたって?」

「いや、なんでもないから」

「いやいや、なんでもなくないでしょ」

「いやいやいや、なんでもない」

「いやいやいやいや…………」


 このやり取り、ヒエンさんが降りてくるまで続きました。

ものすごくどうでもいい話。


この回書いてる時に、「勇」がゲシュタルト崩壊をおこしました。

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