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25,Qその子たちは誰ですか?Aいつぞやの獣人少女たちです。 1

 5メートル先から、二足歩行のトラがこちらに向かって走ってくる。

 いや、本当に二足歩行なんだって。

 トラを後ろ足のみで立たせて、前足と後ろ足の位置と形を人間っぽくした感じ。

 でもまあ、トラなわけで。

 普通に考えて、逃げないといけないわけで。

 ですが、今現在私は固まってしまったわけで。

 つまり……デットエンド?


「みゃあ!」

「やあ!」


 トラがいよいよ目の前にに迫り、腕を振り下ろす。死を覚悟した時、トラと私の間に小柄な影が2つほど割り込んだ。

 1人が振り下ろされたトラの腕を剣で受け止め、もう1人が両手から突風を出してトラを吹き飛ばす。


「大丈夫ですか!?」

「怪我、してませんか!?」


 トラを飛ばした2人組はクルリと振り返って地面にへたり込んだ私に目線を合わせるようにしゃがむ。

 ……あ、いつぞやの獣人少女たちか。


「うん、ありがと……」

「いえいえ」

「ご無事で何よりです」


 少女たちは言いながら立ち上がり、トラの飛んでいった方向を見る。

 つられて目を向けると、トラが瓦礫の中から立ち上がるところだった。

 おっふ。無事なのか。あいつ。


「クロちゃん、来るよ!」

「分かってる。シロ、結界お願い!」


 クロちゃん、と呼ばれた方の少女が、今しがたしまった剣を抜き放つ。

 この子は確か猫だったな。

 いや、尻尾しか見てないからネコ科の、それこそトラとかもあり得るわけだ。

 でも猫がいいな。

 ネコミミ美少女万歳。


「にゃあ!」


 そのクロちゃんは気合(なのかな?可愛いな。)と共にトラに切り掛かる。

 トラが攻撃のモーションに入るが、クロちゃんは気にせず直進する。

 ……危なくね?


 私の予想(?)を裏付けるように、トラが前足を振り下ろした。


「あっ!」


 思わず声を上げる。

 だがそれはクロちゃんの体に当たる前に弾かれた。

 一瞬、薄い膜みたいなのが出た気がする。

 なにはともあれクロちゃんは無事だ。

 ……クロちゃんっていうと、なんか異常に声の高いスキンヘッドの人が頭をよぎるがそれは無視だ。


「にゃぁぁぁ!!!」


 クロちゃんが懐の深い所からトラに切り掛かり、トラは呻いて体勢が崩れる。

 とはいえトラもただやられるだけではない。

 反撃しているのだか、小柄で素早いクロちゃんには当たらないのだ。

 当たりそうなものは、私の前にちょこんと立っているシロちゃんが弾いているらしい。

 この獣人少女コンビ強い。


 そうこうしているうちに、街の人が警備兵なる人物を連れて来たらしい。


「こぉぉらぁぁ!!トラごときがアオイちゃんに手を出してただで済むと思ったかぁぁ!!!」


 地に響くような声と共に、上から人が降ってきた。

 正確に言うと、クリソベリルのアヤメさんが降ってきた。

 クロちゃんがアヤメさんの声にびっくりしてこちらに戻って来ている。

 そんくらい怖い声だった。


「トラ、が、アオイ、ちゃん、の、可愛い、顔に、傷を、つけたり、したら、苦しんで、苦しんで、殺してくれと言わせてから、殺ってやるわよ!!」


 短く言葉を句切り、句切った所でそれぞれめちゃくちゃ重い一撃を喰らわせている。

 ……怖い。アヤメさん怖い。


「あーあ。だからアヤメが行かないほうがいいって言ったのに」


 今度は横から聞き覚えのある声がした。

 横を見ると、これまたクリソベリルの人。

 モクランさんだ。


「あ、モクランさん。お久しぶりです」

「そんなに日にち経ってないと思うけど、まあ、久しぶり」

「ところでモクランさん、あの鬼……ではなくアヤメさんは一体……?」

「あれね。君がトラに襲われかけたって報告が入った時からだよ」

「……なんかすいません」

「俺に謝られても困る」

「デスヨネ」


 鬼にはツッコまないらしい。

 それにしても、トラさん死にそうなんだけど。

 いいのかな、あれ。


「はぁ。アヤメ、殺しちゃ駄目だって。取り調べとか色々あるんだから」

「まだ死んでないわよ。モクランお願い。あと20発だけ殴らせて」

「それ確実に死ぬでしょ。駄目」

「だってこいつ……!」

「はいはい。行くよ。ほらこのトラ連れてって。引きずるでもなんでもいいから」

「引きずる……そうね。分かったわ」


 荒縄を渡されて生き生きしだすアヤメさん。

 怖い。めっちゃ笑顔だよ。


「君たちも、一緒に来て」


 モクランさんはアヤメさんが『叩く』ではなく『引きずる』に行動を変更したのを見届けて、獣人少女コンビに話しかけた。


「えっ、私たち、ですか?」

「そう」

「なんで……?」

「俺たちが到着するまでそのトラ抑えてたんだから、それなりの報酬があって然るべきでしょ」

「でも、私たちはなにも」

「その子守るくらいはしたでしょ。結果的にトラが取り調べの前に殺される事態も防いだわけだし、出る報酬は受け取っときなよ」


 2人は顔を見合わせ、そしてクロちゃんがモクランさんに向き直る。


「私が行きます。この子は、一緒じゃなくても良いですよね?」

「いいよ。攻撃してたのは君みたいだし。合流場所決めときな。いつまでかかるか分かんないから、屋根のあるところで」

「なら、エキナセアでどうでしょう」

「いいんじゃない?君たちもそれでいい?」


 モクランおにーさんのスムーズな進行により、クロちゃんがモクランさんに同行、シロちゃんは私と一緒にエキナセアで待機することになったのでした。

アヤメさんが腹式呼吸で出す低い声。

多分、めっちゃ怖いんでしょうね。

日本の不良高校生なんて目じゃないですよ。

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