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幕間 世界の裏の常闇にて

 闇がすべてを包む。

 真っ直ぐに伸ばした己の手が見えず、月明かりすらなく、星すらない世界。

 人が暮らす世界の裏側。

 常闇の世界に、人影が2つ。


「どうしたの?珍しいね。ウィル」

「そうね。確かに珍しい。私が来るなんて」

「何かあったの?」

「少し、忠告をしておこうかと思って、ね」


 満月のような色をした髪の女と、男にも女にも見える中性的な容姿の人物。

 なにも見えない常闇の中、互いの姿を認識しているかのように向かい合い、お茶を飲みながらしゃべる。


「忠告か。ますます珍しい」

「昔の仲間の危機には忠告くらいするよ。私も」

「ははは。懐かしい。その口調。すっかり変わったからね。ウィルは」

「あの口調のほうが、何かと楽なの」


 満月の髪の女は言いながらお茶を飲み、目の前に座る人物を睨む。


「睨まないでよ」

「睨んでないよ」

「睨んでるでしょ?見えるんだよ。人じゃないから」

「知ってるよ。私たち、みんな人じゃない」

「そうだったね」

「そうだよ」


 2つの人影は、同時に悲しげな顔をして、同時に微笑んだ。


「最近ね、自分は人なんじゃないかって、思う時があるよ」

「そっか。でも、間違ってはいないよね」

「そうかな?今は違うけど」

「昔はみんな、人だったじゃん」

「そうだね。昔は」

「あの頃が一番楽しかった」

「私は、今もなかなか楽しいけど」

「そうなの?」

「そうだよ」


 満月の髪の女は笑って、目の前の人物に尋ねる。


「あなたは、楽しくないの?」

「うーん。昔の方が楽しいな」


 2人は再び、悲しげな顔をする。

 そして、どこか諦めの混じった笑顔を見せる。


「ウィルが楽しいならよかったよ」

「なあに?それ」

「ウィルは向こう側に残った数少ない仲間だからね。こうして向こう側のことを教えに来てくれるし、楽しいに越したことはない」

「あなたも、楽しみ方を見つけなよ」


 そう言った時、常闇に赤い炎が灯った。

 それでも常闇は暗く、相変わらずなにも見えない。

 満月の髪の女はその炎を見て立ち上がった。


「時間だね」

「そうみたいだ」

「最後に、忠告」

「そうだった。聞いてなかったね」

「ラミアから、勇者が旅立ったらしいよ」

「そう。勇者が」

「うん。そう。気をつけてね。魔王さん」


 女は常闇に消えていき、残された人影はポツリとつぶやく。


「……魔王、か。皮肉だね」

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