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高弟が規格外な理由

「はぁ・・・はぁ・・・」


もう何時間立ったかわからないが・・・

【秘伝】が全くうまくいかない。

自分の体から力を取り出すのと、自然から力を取り出すのでは全くやり方が異なる上に、取り出した氣が自分のものではないからか。

操作が難しく、気を抜くと取り込んだ氣に逆に肉体を侵食されてダメージを受ける。


最初は少量から練習するのだが、それでも難しい。

既に、取り込んだ氣が暴発して体中を痛めている。

なのに、休むことができない。

なぜなら・・・


「大丈夫だよ。何度でも失敗しても、俺が氣を分けてあげるからね。」


そんなことを笑顔でいう悪魔が目の前にいるからだ。

この悪魔は俺が氣を使い果たすと、自分の氣を俺に分け与えて来る。

しかも、なぜか俺の氣として調整を加えるという半端ない技術を使ってくるので俺はそれを使ってもう一度【秘伝】に挑戦せざるを得ない。マジでどんな超技術だよ。

既に肋骨とかいろいろ折れてたり、ヒビ入ってたりするから一回休憩したい。内臓や筋肉にもダメージは言ってるし・・・

いや、本来なら休憩するべきなのだろう。

だが、できない。

なぜならば痛いと言えば・・・


「回復魔法の練習にちょうどいいね。ほら、もう治ったよ。さ、頑張ってもう一回いってみようか。」


いや、体は治っても心の傷は治ってないんだが・・・

精神的に既に死にそうなんで少し休憩したいんですけど。


「ハハハ。それくらいの精神状態でも使えるようにならないと実践では役に立たないよ?」


悪魔が天使の笑みを浮かべていやがる。

信じられない。

もう何時間も修業してるんだ。

そろそろ一回休憩したいんだが・・・

というか、コーフィ。他の奴らのところにはいかなくてもいいのか?


「大丈夫。分身術を身に着けたおかげで、一対一の個人訓練ができるから心配しないで。」


くそう・・・

誰だよ。コーフィにこんな鬼畜な技を教えた奴は・・・

見つけ出してぜってーぶん殴ってやる。

俺は睨みつける気力を失った死んだ魚の目でコーフィを見上げる。


「自然の氣を取り込むとか。外の氣は扱いにくいとか考えちゃダメだよ。氣を自分のものにする。それだけに意識すればガイなら簡単に使えるようになれるよ。」


視線を向けられてアドバイスを求められたと勘違いした悪魔が何か語っているが、そんなことはどうでもいい。

俺は休みたいんだ。

ちょっと疲れた。

肉体に負ったダメージは魔法で回復できても、疲労まではそうはいかない。

精神的にも疲労が蓄積されているので、俺は休息を取りたい。

そう思って地面に倒れよとしたその時だった。


ドン!!


コーフィが俺に向かって一歩を踏み出した。

おまけに、威圧をたっぷりと乗せて来る。その重圧は魔の森でしか見られない強力な魔獣の放つ威圧とは比較にならない常軌を逸したものだ。

故に、俺は反射的に身構えて、足元に向けていた視線を上げてコーフィの顔を見る。

すると奴は、「まだ寝るには早いよ」と言いたげな視線を向けてきた。

どう考えてもこいつは悪魔だ。


修業時代。

≪散歩に行こう≫に入団した時からそうだ。

コーフィは温厚で優しく、その言動に裏表はない。

だが、修業時は冷酷で無慈悲。

死なない程度にまでは平気で追い込みをかけて来る。

おかげで何度も気を失った。

≪救世主≫がいなければ本当に死んでいたかもしれない。

いや、寧ろ≪救世主≫がいたからあれだけの無茶ができたのかもしれない。


実際問題として、今現在行われている修業は、気絶はしても死にはしないレベルのものだ。

そう考えると≪救世主≫がいなくてよかったのかもしれない。


(それにしても・・・)


俺は先ほどからこちらに視線を向けて来る≪雑魚狩り≫に視線を移す。

コーフィは何も言わない。

おそらくは俺が何らかのアドバイスを≪雑魚狩り≫に貰おうとでも思って黙っているのだろう。

氣の扱いにおいて、その操作感覚は人によって千差万別だ。

自分により合った方法を捜すために、より多くの情報を得ようとすることは間違いではない。

それを知っているからだろう。

コーフィは≪雑魚狩り≫の方を見た。

≪雑魚狩り≫はやれやれとでも言いたげな表情で、こちらにやってくると「なんだい?」と尋ねてきた。


「お前のやり方を見せてくれ。」


「それぐらいなら構わないよ。昔から説明下手でね。習うより慣れろ派なんだ。」


そういって≪雑魚狩り≫は俺の目が追い付ける速度で【秘伝】を行った。

氣の総量は俺の3倍程度。

【秘伝】を行う技術差で負けているだけでなく、単純な力量さでもこれほどの差があるのか。

と思う一方で、これが全力なのか疑問が残る。


「なぁ。あんたの全力はそんなもんなのか?」


「ん?そうだけど。何か変かい?」


俺の《五高弟》を舐め切ったかのような質問にも≪雑魚狩り≫は平然と答える。

コーフィみたいに馬鹿みたいに氣が大きいとどの程度の力量さがあるのかはわからないが、≪雑魚狩り≫のレベルならば俺にもなんとなくわかる。

≪雑魚狩り≫の氣の総量は俺の3倍よりやや少ない程度だ。

人体で取れる最大氣量の3倍なのだから、常軌を逸した力量を持っていることは間違いない。

ここまでの力の差がある現状では、俺がどう立ち回っても勝てる気がしない。だが・・・


「≪雑魚狩り≫よぉ。お前はどうやってあの戦いを制したんだ?」


「ふふ。そこに気づくとは流石だね。君なら【秘伝】の体得もそう難しくないかもね。」


俺の言う『あの戦い』とは、あの《五高弟》がその名を世界に轟かせた。

ベルン共和国の反乱である。

あの戦いにおいて、5人の高弟達はたった1人で6万の軍を足止めしたのだ。

だが、それをこの目の前にいる≪雑魚狩り≫ができたかどうかは怪しい。


旧世代と新世代の実力差は15倍とされる。

これは旧世代が旧式の魔法術式しか知らず、新世代がオールド=ヴィルターの新魔法術式に闘氣術の【中伝】まで修めていることを条件にしたものだ。

俺はそこからさらに【上伝】を覚えて免許皆伝に至っているので、さらに10倍は強い。

単純計算で旧世代の150倍。

さらにそこから、個人の技能や経験、チープクラスの武器を入れれば・・・

俺なら3000の軍勢を相手にしても勝てる。

4000で互角。5000だときついぐらいだと思われる。


力の総量だけが全てじゃない。

それは理解できている。

だが、俺の3倍の力で6万の軍隊にそうそう勝てるとは思えない。

3000の3倍は9000だ。

そのことから≪雑魚狩り≫が万の軍勢を相手にできることは理解できる。


だが、その6倍の軍勢を相手にして勝てるのかと聞かれれば怪しい。

俺の3倍程度の力では6万の軍勢を相手に戦えば、必ず力尽きる。

魔力も気も多ければ多いほど戦局は有利になるし、多くの敵を倒すことができるが、その分、回復には時間がかかる。

故に、≪雑魚狩り≫がたった一人で6万の軍勢を相手にしただなんてことは信じられない。


「まぁ、君の常識で見ればそうなるんだろうね。でもね。そんな生物としての常識に囚われている様では高弟になることはできないよ?」


俺の言いたいことを悟ったのか。

雑魚狩りが氣を一気に消費した。

特に何かを破壊するでもなく、ただ力を無為に消費した。

そして、気の量が半分になったところで、また【秘伝】を使って気の量を元に戻した。


「は・・・?」


その行為が、俺には一瞬理解できなかった。

頭の中が真っ白になって脳が理解するのを放棄した。

しばらくの間、時が止まったかのように停止していた俺の時間がゆっくりと動き出す。

そして、先程起こったことをゆっくりと反芻して、吟味して結論に辿り着く。

結果を端的に言えば、【秘伝】を使った。

ただそれだけのことだった。

だが、普通のそれと違ったのは≪雑魚狩り≫が【秘伝】を使った時の氣は世界から取り込んだものだった。

自分のものではない。

世界から抽出した氣をあたかも自分のものだとでもいうように、彼は自然に使って見せた。


「まぁ、つまりこういうことだよ。氣の総量はコントロールできる範囲が限界だけど。取り出しは人体限界状態まで減らしても、また取り出せる。これが【秘伝】を体得するということだよ。」


それは今までの常識を突き破る行いだった。

戦いにおいて、自分の力と相手の力。

これから先の戦いのために残しておくべき力など。

戦闘において、自身の力の現状と回復力、その後の行動は常に頭に入れておかなければならない。

そうでなければ、いざという時に力を使えなかったり、必要でない時に無駄に力を浪費することになるからだ。


だが、【秘伝】はそんなこれまでの悩みを一気に解決することができる。

コントロールできる最大の力を、好きな時にいつでも取り出せる。

それは、戦場に立つ者にとって大きなアドバンテージだ。

否、アドバンテージだなんてものじゃない。

この技を会得すれば、常に全力の一撃を放つことも可能になる。


本来は、『ここぞ』という時にしか使えない大技を連発する所か。

通常攻撃として使用できる。

もしそんなことができるようになれば・・・

万の軍勢だろうと10万の軍勢だろうと100万の軍勢だろうと・・・

敵ではない。

いや、敵にすらならない。

目の前に並べば、それはただのゴミでしかない。

消し飛ばして掃除するかしないか。

ただそれを実行するかしないかを選択するだけの行為でしかない。


それほどのことができる強者が6人。

俺が見ていた遥かなる高見。

その頂が少しだけ見えた気がした。

ツイッターを見ていて自分がなぜ、最近書かなくなったのかに気づいた。

誰がつぶやいていたかは忘れましたが、作者が自分の作品は面白いのだろうか?と疑問を持つと手が止まるらしい。これ、わかるわぁ~。

他の作品描いた方がいいんじゃないのかと思ってしまう。

まぁ、面白いか面白くないかは自分が決めることじゃないというのわかってるんですがね。

私の作品は結構更新してないのが多いから『よくエタる作者』として有名になりそうだなぁ~。

そうならないためにどうすればいいのか。

真面目に考えた方がいいのか。暇つぶしに書いているからとあきらめたらいいのか。決めかねてます。

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