悲劇!!それを二度と味あわぬために!!
「はぁっ、はぁっ」
少年は、一人走っていた。
闇に目立つ、ライトグリーンの髪と、瞳、その両方を輝かせて。
そう・・・・・・燃え上がる炎に輝かせて
少年は、ハーフエルフだった。
エルフの母、人間の父の間に生まれた、紛い無い愛の結晶だった。
この土地では、亜人狩りが盛んで、エルフと人間は対立して生きていた。
そんな中でもやはり男と女、種族を超えた愛を持つ者もいたのである。
しかし、他のエルフと他の人間はそうはいかなかった。
それ故、父は町に住み、母は森に住んだ。
間に生まれた子は、何処に住めば良かったのだろうか・・・。
結局、子は母と共に森に住んだ。
忌まわしき人間の血を持つ、子は阻害され、他の者から虐待を受け、苛めも受けた。
「私の父は、人間に殺された、貴方に流れる半分の血と同じ血を持つ人間に」
石を投げられた・・・・。
「俺の妻は、人間に犯され、殺された、お前に流れる半分の血と同じ血を持つ人間に」
棍棒で、殴られた・・・・。
「ワシの、息子も、嫁も、孫も、皆、人間に、殺された貴様に流れる、半分の血と同じ血を持つ人間に」
ナイフで、背中を切り裂かれた・・・・。
「どうしてなんだろう、僕の半分はエルフなのに・・・・・」
少年は母の胸で泣くしかなかった・・・・・・。
そんな少年が、10歳になった頃の事である。
人間に、隠れ里の場所が漏れた・・・・。
エルフ達は、真っ先に少年の父を疑った。
エルフ達が、母子の家を囲む、松明を持って・・・・・。
エルフ達は、里を捨てる、森を焼き払って・・・・・・。
エルフ達は、炎灯す、何も知らない母子が眠る家に・・・。
「死ね、忌まわしき者よ、貴様達のせいで、我らは里を失う」
聞こえる。
「焼け死ね、出来る事なら、出来るだけ苦しんで」
エルフ達の、罵声が聞こえる。
母が、異変に気づき子を連れ逃げる。
エルフ達が、松明を投げる、石を投げる。
子を連れ、母は、全てを掻い潜る。
エルフ達が、道を塞ぐ、剣を構えて首を狩ろうと。
「逃がすか、裏切り者!!」
母が、呪をつむぎ、道をこじ開けようと。
「母なる大地よ、今この時わが子を守る、力を」
爆する大地が、道を塞ぐエルフを吹き飛ばす、母は子の手を引き、走る、二人は走る。
森を抜ければ、人がいた。人間が、エルフを狩る人間が!!
「獲物だ、獲物がいたぜ?」
「しかも、上物だな、たまんねぇぜ・・・」
逃げた、更に逃げた、隠れた、森のハズレの洞窟に・・・・。
でも、時間の問題、追っては直ぐ傍で、くまなく探し回っている。
「母さん・・・・どうしてなの、どうして、皆僕たちを苛めるの?僕の血の半分が、人間のだから?」
流す涙は、枯れたのだろうか?悲しい顔で、少年は尋ねた。
「ごめんね、母さんがいけないのよ・・・、里の掟を破って、あの人を愛したから、ごめんね、ごめんね」
母は、泣きながら、子を抱きしめ答えた。
「母さんは、悪くない!!悪いのは、皆だ!!」
少年は叫んだ、叫ばずにはいられなかった、世界で唯一、自分を愛してくれる存在が、泣いているのだから。
「ダメ、静かにして、そして、母さんの言う事を聞いて、此処の洞窟を抜けて西に行けば、港町があるわ、その港町では、国交が激しいから、亜人狩りは、禁止されているの、遠いけど、行けるわよね?貴方は強い子だから・・・」
「母さんは、一緒に来てくれないの?」
「ごめんね、母さんは、もう貴方とは居られないわ」
今生の別れ、それを理解するには、少年は幼すぎた。
「僕の、半分が人間だから?」
枯れたと思った、涙が少年の頬に伝う・・・・・・。
母は子を、泣きながら、強く!!強く抱きしめ言う。否、わめいた・・・。
「違うの!!違うのよ!!私は、何があっても、貴方を愛してる・・・・だから、逃げて!!貴方は生きて!!」
「おい、こっちに足跡があるぞ!!」
追っ手の声がする、別れ時が、迫り来る。
「ほら、早く逃げて!!」
少年は、走った!!洞窟の奥へと向かって・・・・・、泣きながら、泣きながら、今度こそ、本当に枯れて
仕舞うほど、泣きながら・・・。
「母なる、大地よ、アース家の名を持って、今愛する者を守る為に、最後の力を・・・・・・生きてアクシズ・・・・私の愛しい子供・・・。」
「母さん・・・・・母さん・・・・・母さん、グスッ・・・・かぁっ・・・・さん・・・・・かあーーーーさーーーーん!!!!」
泣き喚きながら、走る少年の声が、洞窟に悲しく響いた。
どれくらい走ったのだろうか・・・・・少年・・・・アクシズは、洞窟を抜けても、何キロも、走り続けていた、涙も枯れ・・・・・喉も枯れ、泣き叫ぶ声もでない・・・。
ついに、体力の限界か、草ッパラに、倒れこけてしまう。
元々、引きこもり勝ちで体力に自信があるわけでもないので、此れだけ、走り続けたのも初めての事だろう。
「母さん・・・・・・」
その呟きと共に、少年の意識は、闇に堕ちる・・・。
これから、先様々な生活を送りそして、野望へと至ります、つまりコレは、主人公が魔王になりたかった本当の理由と言う奴です。
この後の生活は、また語られる事があるでしょう。




