4.取るべき行動
二つの器に対して、アフロディ―テの魂は一つ、自ずとどちらか片方は魔女となる運命から免れる。
だからエリナは魔法でリーシャを眠らせた。
何も言わせぬように。
何もさせないように。
自分が、アフロディ―テの器となれるように。
学園に入ってから、二人は親友として学園生活を送っていた。
外見は全く違うタイプだというのに、二人は、
「私たちって、似てるわね(よね)」
そう言い合うほど、お互いが似ていると感じていた。
現に、リーシャも魔法をエリナにかけようとしていた。
自分と同じことを考えていた。
数秒遅ければ、眠っていたのは自分だった。
そして、後悔していただろう。
「ごめんね」
リーシャの額に軽く手を触れ、覚悟を決めると、エリナは指示された台座へと足を運ぶ。
†
解放されたリーシャによって、エリナが災厄の魔女になったことを知った。
エリナは完全に自我が消え去る前に、リーシャを逃がしてくれたそうだ。
アフロディ―テとなったエリナは、覚醒したその日に、二つの町と三つの村を焼き尽くした。
もはや、セレナ王国はエリナを討伐対象としてしか見ていない。
すぐさまカイン王子の手によって討伐隊が編成された。
その討伐隊に俺は組まれていない。
大切な肉親を討たなくていいようにと、カインに配慮されたのだ。
それ以外にも、感情に流された俺が、隊の足を引っ張る可能性を考慮したのもあるだろう。
どちらにせよ、隊にとって俺の存在は邪魔でしかいない。
「ルーク、お前は自領に戻って待機していてくれ。わかっているとは思うが、勝手な真似はするなよ」
カインの念を入れた言葉に従うしかなかった。
言われた通り、俺は自領であるクランベル領に戻った。
そして、無力な自分を責める日々が続いた。
†
セレナ国とアフロディーテとなったエリナとの戦いが始まってから二週間が過ぎた。
風の噂では、エリナは戦いで徐々に傷を負い、力を失いつつあるそうだ。
もうすぐ決着が付くと、セレナ王国の民は安堵している。
エリナの死で国が喜ぶ。そう考えるだけで、やり場のない怒りがこみ上げた。
しかし、俺にできることは何もない。
俺はただ毎日、時が過ぎるのを待つだけだった。
……だが、日に日に増していく、悲しみ、怒り、絶望と希望が絡み合う感情が、俺を突き動かす。
月の光が雲に遮られることなくセレナ王国を照らす夜の世界に、俺はエリナと会うため、馬を走らせた。
エリナが今どこにいるのか俺にはわからない。
それでも馬を走らせずにはいられなかった。大人しく屋敷に閉じこもっていられなかった。




