2.ルーク・クランベルとして
今さら自分の振る舞いを後悔しても遅い。
孤独な学園生活は、辛く寂しかった。
それでも、将来カイン王子と結ばれることに変わりはない。
王妃となってから、過去の自分を清算すればいい。
反省を生かして、リーシャのような人望を持つ人間になればいい。
そう未来を描くも、エリナにその未来は訪れなかった。
リーシャを妬み、悪意を向ける者は何もエリナだけではない。
貴族は平民を見下す人種と言ってもいい。
人は確たる地位に立てば、その地位にいないものを見下ろす。
リーシャによって心変わりする者もいたが、変わらない者の方が多かった。
特に同性はそうだった。
その者たちは執拗にリーシャを陥れようとした。
命さえ失いそうになるほどに。
その行いが、カイン王子の耳に届いた時だった。
リーシャを陥れようとした者たちは、自身の身を守るため、エリナを首謀者に仕立て上げたのだ。
自分たちはエリナに従っただけに過ぎない。
カイン王子を奪われたエリナが、嫉妬に身を焦がし、自分たちの意に沿わない行動を取らせたのだと主張した。
元々、その者たちはエリナに付き、従っていた者たち。
普段のエリナの素行からも、疑う人間は誰もいなかった。
裁判にかけられ、エリナは全てを失う。
クランベルの名も、家も、土地も、そして、愛するカイン王子のことも。
全てを失ったエリナには、もはや生きる意味はない。
終わってしまえばいい。何もかも。
絶望し、破滅を望むエリナが手にしたのは、かつて自国セレナ王国を世界から消そうとした、〈災厄の魔女〉と呼ばれたアフロディーテの魂。
その魂を呪いとして身に受け、エリナは第二のアフロディーテとなってセレナ王国
に牙をむく。
そして、終わりを迎える。
後に勇者と呼ばれることになったカイン王子と、同じく聖女と呼ばれることになったリーシャによって。
最後は塵となり、この世から消えた。
これは、俺だけが知っている物語の結末。
だから、未来を変える。
エリナの兄、ルーク・クランベルとして。




