第13話 反省会
「惜しかったですね」
「……はい、すみません」
それはなんとも重苦しい空気。
いつも明るい彼女が落ち込んでいると、暗くなってしまうのは必然であった。
「いえ、謝ることはないですよ!
最初のスペシャル、よく当てたじゃないですか!」
「……でも、あれは橙さんが教えてくれただけで、私は何も……」
んー……重症だ。
励ましの言葉が、全く届いている気がしない。
パンパンジー
・大丈夫?
Ram
・別に上手かったけどな〜
寒気タン
・なんか重力系能力者いる?()
トマトマァァ
・本当に堕ちちゃった?
このままだと、廃都倶楽部ごとやめてしまいそうな雰囲気。
……まあ別に、彼女は配信者だし他のゲームでやってはいけるだろうけど。
だけども、思ったより彼女は凹んでいた。
たかがゲーム……されどゲーム。
一週間とはいえ真面目に取り組んでボコボコにされた……もしかすると初めて味わったのかもしれない、挫折というものを。
このまま辞めたら、きっと今後関わることは無くなってしまうだろう。
そして引き止めなかったら……俺も後悔しそうだ。
とはいっても、励ましの言葉は届かない様子。
ならば……多少荒療治でいくしかない。
「ふぅ……では今まで優しく言ってきましたけど、嫌われるのを承知で5分だけ厳しく言いますね」
「……はい」
マルオ
・鬼畜?
Ram
・橙の鬼っ、悪魔!
ゴールドから抜け出し隊
・え〜っと、アンちゃん?
勇者マサヒロ
・アンちゃんは言い過ぎでしょ……橙に失礼だぞ!
アンラッキーガール
・……私も傷つく時あるんだよ?
「沙倉さんは、伸び代もありますし頑張ってはいます。
ですが、現状の実力はシルバーですよね?」
「……はい」
「各チームのリーダーはゴールド以上であり、大体のメンバーは沙倉さんと一緒のタイミングで始めた様ですね。
ですからまず、どれだけ頑張ったとしても……1人で勝たせられるほどの差はありません」
「〜〜っっっ!!」
「そもそもスペシャルを当てられないと、マグリスにそこまで出来ませんしね」
それはどこか夢見がちに楽しんでいた彼女に、酷な現実を突きつけていく作業。
いや、あの時の様に楽しんでいるならそれでも良かった。
だけども負けて、心が折れて、楽しめないなら決めなければならない。
負けても楽しむのを優先するか……強さにこだわり、勝利を目指すのかを。
「それで、どうでしたか?あの試合は」
「……勝てる気が、しませんでした。
一鉄にボコボコにされて、アイゼンは最初以外隙を全く見せてくれませんでしたし」
「あれだけ練習したスペシャルもっ、当たらなくて……」
「そうですね、実戦も百鬼夜光側が対策してきていましたし」
ずっと落ち込んだままだった彼女だが、少しずつ感情が露わとなっていく。
それは今にも涙が溢れそうなほどに。
「その対策された瞬間に勝てる気がしなくなる。
……それ、マグリスを使おうとした人なら、全員経験しますよ?」
「……えっ」
「コメント欄見てみてください。
そこに挑戦した人達がいっぱい、書いてくれてると思いますよ」
「……ぁ」
レイ
・いや、マグリス使えてる方っしょ!
ファイト、風音ちゃん!
トマトマァァ
・少しだけ周りより使ってたけど、辞めちゃった勢
対策されると途端に勝てなくなるんだよなぁ
ゾンビィ
・一週間で当たり前に屈伸野郎を抜けたら、橙より才能あるよ、ソレ()
楽土
・そうそう、ここで辞めちゃうの勿体無いよ!
あんなに頑張ってたんだし!
ナノ
・ランクより通話ある方が敵強いのは当たり前だしね
まだ頑張れるならやって欲しい!
アンラッキーガール
・スペシャルは絶対、風音ちゃんの方が私より上手い
廃都倶楽部全一として私が保証しますよ^^
それは励ましの言葉でもありながら、願いを託す様な言葉でもある。
全員が夢を持って挑んでも敗れていった、そんな扱いが難しすぎるキャラなのだから。
「それに1人で、壁を超えろって言ってる訳じゃないですから」
「ぇ……」
「いやいや、それを手助けするのがコーチング……ですよね?」
思ってもみない反応に、最後は疑問系になってしまった言葉。
だけども、
「………ぁ! はいっ!」
それには再び力を取り戻した様な、活力漲る返答が。
「そもそも沙倉さんは全く勝てないという状況から、一週間であそこまで成長しました。
なら、後三週間あれば……優勝できそうな気がしてきませんか?」
「!! はいっ、してきましたっっ!」
「ではもう、遠慮はしませんが……良いですね?」
「ぜひ、お願いしますっっ!!」
「ならキャラの座学、5時間からやっていきましょうか!」
「いや、それはちょっと……」
マルオ
・やっぱ鬼コーチです、この人
パンパンジー
・でも沙倉ちゃん、いつも以上に元気な気も?
粘々ギブアップ
・さす橙




