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第九章 白鳥の歌 場面二 孫との対面(一)

 修祓式が滞りなく終わった二日後、ティベリウスはアウグストゥスの小さな仕事部屋に呼び出された。ティベリウスは養父の願いを容れ、話を合わせることを約束してその場を退出した。

 アウグストゥスは翌日、海沿いの友人の別荘に行くと言ってローマを発った。十日目に戻ってきたとき、ティベリウスに礼を言った。彼は努めて陽気に振る舞っていたが、どこか沈んだ様子は隠せなかった。

 ティベリウスはアウグストゥスの真の行き先を誰にも語らなかった。ドゥルーススやアントニアにも、友人にも一切口にせず、ただ淡々とアウグストゥスの代理を務めた。

 だが、どんなに慎重に進めたとしても、秘密は必ず漏れるものだ。ましてそれが、自分の妻に対してであれば、隠し通すのは容易なことではない。ティベリウスは少ししてリウィアの突然の訪問を受け、激しい言葉で「国家への背信と母への裏切り」を詰られた。

「お前、知っていたのね」

 リウィアの眸は怒りに燃えていた。

「アウグストゥスがプラナシア(ピアノーザ)島へ渡ったことを。知らなかったとは言わせないわ。もうみんなバレてるのよ」

 プラナシア島は、ポストゥムスの流刑先だ。

「一体、何を考えているの。何もかもぶち壊すつもり?」

 ティベリウスはその時、アウグストゥスが逝去すれば必ず手がけなければならない神殿の建立について調べるために、以前にも参考にしたことがある文巻を再び紐解いていた。リウィアは、それを机に置く間さえティベリウスに与えなかった。リウィアはつかつかとティベリウスに歩み寄ると、息子の腕を強く掴む。ティベリウスは軽く息を吐き出した。

「その話は初耳です」

「嘘をおっしゃい」

 間髪いれずにリウィアは言う。

「わたしの耳に入らないと思って? マルキアが何もかも告白したわ」

「だとすれば、それはマルキアの誤解です。わたしはアウグストゥスに留守を頼まれて、役目を果たしたに過ぎません」

 マルキアは、アウグストゥスの「隠密行」に同行した彼の友人、ファビウス・マクシムスの妻だ。大体、アウグストゥスの友人の妻はほとんど一人残らずリウィアの友人といってよかったから、友人など伴うべきではなかったのだ。外出の言い訳上、やむを得なかったのかもしれないが。

「アウグストゥスは、ポストゥムスを呼び戻すつもりね。後継者を取り替える気なのよ」

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