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第八章 テウトブルクの森 場面三 ゲルマニア(三)

「このような土地に住む蛮族を完全に制圧したいならば、軍全体を多くの小部隊に分け、山の斜面から谷あいから、そのどこにも隙間がないように埋めつくして、それによって敵を撃破しながらの前進しかない。反対に、ローマ軍伝統の、軍団旗を先頭にしての堂々たる行軍方式を続けるならば、ゲルマニアの地勢は、彼ら蛮族の味方であり続けるだろう」



 ティベリウスは文巻を置いた。神君ユリウス・カエサルが記した、『ガリア戦記』。彼の記した数々の著作を、ティベリウスは幾度紐解いただろう。天才的な武将であり政治家でもあり、なおかつ稀有の文筆家でもあった神君の書物は、生きた知識の宝庫だった。ティベリウスは、神君暗殺の二年後に生を享けている。

 ああ、時空を超え、彼に教えを乞うことが出来たなら!

 あの広大なゲルマニアの地を、「どこにも隙間がないように埋めつくして進軍する」ことなど、絶対に出来ない。だからこそ神君は、ゲルマニアへの深入りを断念したのだ。かつてスキピオ・アフリカヌスは、カルタゴの街を徹底的に破壊し、焼き尽くした上で、地を全て均して塩を撒いた。カルタゴはそれから百年を経て、神君とアウグストゥスの下で、ローマ人の入植によって、ローマ人の町として再生したのだ。そして今、ローマの覇権の下で繁栄を謳歌している。

 ゲルマニアをローマのものとするのなら、それを全ゲルマニア規模で行わなければならない。森を焼き払い、全てのゲルマン人を白日の下に引きずり出し、そこに一からローマ人の国を築く以外にない。そんなことが、一体誰に可能だろうか?


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