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第八章 テウトブルクの森 場面一 ウァルスの悲劇(二)

「ロリウス」

 ティベリウスは使者を見つめる。

「アウグストゥスには当然同じ内容が報告されているな?」

「はい。同時に軍団基地を発ちました」

「判った。遠路ご苦労だった」

 ティベリウスはロリウスに休息を与えるよう命じてから、アプロニウスに言った。

「書記官を呼んでくれ。アウグストゥスに宛てて書簡を(したた)める。それを持って早馬を走らせろ。わたしはすぐにローマに戻る」

 馬を換えながら走るローマの連絡網は、街道を使い、一日に約百マイル(一四八キロ)を走る。それに対し、騎兵を率いてローマに向かえば、いかに小隊で急いでも、移動距離はせいぜい一日七〇マイル(百キロ)だった。

「ゲルマニクスはわたしと共にローマに帰還する。ここの撤退は予定通り行ってくれ。ゲルマニクス、護衛兵に帰都の準備をさせよ」

「養父上」

 ゲルマニクスは何かを尋ねたそうな表情を見せる。だが、ティベリウスは「行け」と命じた。ゲルマニクスは天幕を出て行く。ティベリウスはアプロニウスの肩を軽く叩いた。

「後は頼んだぞ」

「はい」

アプロニウスは真剣な表情で答えてから、わずかに苦笑する。

「お戻りになるときは、凱旋式のはずでしたのに」

 ティベリウスもちょっと苦笑いした。とてもそれどころではなくなってしまった。

「バトが降伏していただけでも幸運と思おう」

「………全くですね」

 アプロニウスは頷く。それだけが唯一つの慰めだったかもしれない。ゲルマン人はダルマティアの降伏を知らずに攻撃を決行したのか、あるいは知って決行を急いだのか。それは判らなかった。とにかく平和な日々は、再びティベリウスから遠ざかったのだ。



          ※




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