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第七章 イムペラトル 場面七 イムペラトル(九)

 戦争終結の知らせは、ただちに早馬で首都と、イリュリクムの各軍団基地にもたらされた。

 誰もが、喜びに沸いた。

 首都では元老院が召集され、戦役の功労者たちに、それに見合う数々の名誉が議決された。

 ティベリウスには凱旋式の挙行が許可され、アウグストゥスとティベリウス、それぞれに対し、パンノニアに二基の凱旋門が建立されることが決まった。ティベリウスは、ゲルマニクス、アエミリウス・レピドゥス、ルキウス・アプロニウス、シルウァヌス・プラウティウスなど、功績のあった指揮官に対しては凱旋将軍顕彰を要請した。ゲルマニクスは法務官を経験することなく執政官になることを認められ、いまだ財務官を経たばかりだったにもかかわらず、元老院議会での採決の際、執政官経験者たちのすぐ後に投票を許されるという名誉も獲得した。

 戦役には参加していなかったドゥルーススも、この機に元老院への参加を正式に認められ、ゲルマニクス同様、財務官就任後は法務官を経ずに執政官に就任することが認められた。実際に戦闘に参加することなく与えられたこれらの特権は、ティベリウスやゲルマニクスに対する配慮だった。ゲルマニクスとドゥルーススは、いわば車輪の両輪のように、ある程度のバランスを維持することが求められていたからだった。だがドゥルーススはそれゆえに、多少の風当たりは覚悟しなければならなかったろう。

 陣営でも、見張りなどある程度やむを得ない人員を除き、ほとんどの兵士たちに休息が許された。外地ゆえに限られた食糧事情ではあったが、簡単ながら宴が持たれ、司令官の天幕も開放されて、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。ティベリウスは総司令官として皆を労い、指揮官たちや兵士たちと語らい、祝福を受けた。いつもより少し上質のワインを快く味わってから、喧騒を離れ、降るような星空の下、間もなく見納めとなるはずのディナリデス山脈の黒々とした山並みを遠く見つめた。

 これが嵐の中の束の間の晴れ間に過ぎなかったと、誰が予想しえただろうか。

 一人の使者がゲルマニアからやってきたのは、戦役集結から、わずか五日後のことだった。

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