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第七章 イムペラトル 場面六 夜明けの海(九)

 十日間をアリミヌムで過ごした後、ティベリウスは再び戦場へと戻った。アウグストゥスはティベリウスを抱擁し、「どうか幸運を」と言った。

 ティベリウスはリウィッラに「身体を大事に」とだけ言った。どうか無事に身二つになって欲しい。アントニアによると「中々のじゃじゃ馬」であるというリウィッラ。ドゥルーススを振り回しているのだろうか。リウィッラとアグリッピナの仲の悪さは周知のことではあるし、気が優しいドゥルーススには苦労も多い事だろうと思うが、何とかうまくやってくれるよう願う。夫同士が仲がよいのがせめてもの幸いだ。

 アントニアはティベリウスとゲルマニクスとを順に抱擁した。

「お気をつけて」

 義妹は言い、それから小声で囁いた。

「海を見せてくれてありがとう」

 感謝の言葉を、ティベリウスは口に出来なかった。どれほど言葉を費やしても、とても今抱いている思いを言い表すことが出来なかったからかもしれない。アントニアは、どこまでも凪いだ明け方の海の風景と共に、ティベリウスの心の奥深くに住んだ。決して帰ることが出来ない故郷のような、痛いほどの懐かしさと共に。

 ティベリウスは義妹に軽くキスだけして、馬に跨った。

 再び戦いが始まる。この愛しい者たちのために。



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