第二話 エルバドの森
ノルド製薬株式会社。
表向きはノルドベルム国民の医療業務に全面的に協力する優良企業。
だが、新薬開発のために人体実験をしているとか、ノルドの薬は魔力が無くなるとか、挙句の果てに社長は実は魔物であるとか。様々な噂が流れている。
そのノルド製薬株式会社本社屋、社長室にて。
「よく来たネ。アサギ君。」
「あんたがアーノルドか。」
「いかにも。アーノルド・アーノルンです。よろしくネ。」
「早速本題に移ろう。ハイオークの出現場所は?」
「話が早いネ!…ここから南西に5kmほど行ったエルバドの森になるんだけド。場所、わかるかナ?」
「エルバドか。了解した。」
「あ、ちょっと待っテ。」
現場に向かおうとするアサギをアーノルドが呼び止める。
「実は娘が先に向かっててネ。向こうで会ったら元気か確認してきてヨ。」
「…覚えてたらな。」
本社を出たアサギは愛用のバイクに跨りエルバドの森に向かう。
「(娘が先にってことは俺の出番は無いと思うが…。)」
エルバドの森。
ノルドベルムの西から南西にかけて10kmにも及ぶ巨大な魔木の森だ。
魔導士が使う杖や家屋の建材など幅広くノルドベルムの生活を支えている、この国になくてはならない資源の宝庫だ。
しかし、魔物も蔓延っており不正に魔木を狩ろうとした密売人が凄惨な姿で発見されることも多い。
人の味を覚えたエルバドの魔物が周辺の集落を襲撃する事件も多発しており、ギルドへの討伐要請も後を絶たない。
そのエルバドの森、件のハイオーク目撃地点にて。
「クソッ、なんなんだコイツら!」
二丁の魔銃を駆使し、ハイオーク達を狩る女魔導士がいた。
ティアハルテ・アーノルン。アーノルドの実子でわずか18歳で一級魔導士になった天才である。
彼女がハイオーク討伐に向かってから、はや3日が過ぎた。
ハグレのはずの群れは、狩れども狩れども一向に数が減らない。
本来ハグレは15~25体程のはずなためこれは異常と言える。
ティアハルテは既に100体を優に超えるハイオークを討伐しているのだから。
「あのクソオヤジ騙したのか!よ!」
どんなに殺しても湧いてくるハイオークに対し、ついにティアハルテの魔力が切れる。
弾丸が出ない。
「魔力が切れた!?」
その隙をつき、一体のハイオークが手斧を振り下ろす。
「クッ…!」
死を覚悟し思わず目をつむったが、バギン!という金属がぶつかり合う音が鳴り響いた。
何者かが手斧を止めた。
「アンタがティアハルテか」
「お前は…?」
その魔導士は身の丈ほどもある大剣を振り、手斧のハイオークを屠る。
「アサギ・ニーベルハイム。アンタの親父の依頼でこいつらを狩りに来た。」




