第一話 三級魔導士アサギ・ニーベルハイム
再魔暦1058年。
国対一魔導士協定が制定された。
これにより、各国に1人雇われた魔導士が一対一で行う決闘で、企業間、果ては国同士で"話し合い"は行われるようになった。
彼らは専属魔道士と呼ばれ、数多いる魔導士の上位2%のみがなれる狭き門とされている。
そして、ここにまた1人。専属魔道士を目指す若き魔導士が居た。
「今日一番危険度の高い依頼は?」
三級魔道士アサギ・ニーベルハイム。18歳で魔道士になってから僅か2年で三級まで上り詰めた"勘の良い"青年だ。
彼は南方の国ノルドベルムの外れ、アルルム村の生まれで村初めての魔道士でもある。
12年前に起きた第8次世界大戦において両親を失っており、それからはとある魔道士に師事し、一人で生きてきた。
「今入っている依頼だとハイオークとその群れの討伐になりますね。」
「ハイオーク…?ここら辺にしては珍しいな。」
「隣国の大群から外れた"ハグレの群れ"だそうで。」
今彼がいるノルドベルム公式集会所は、国内で起きている魔獣魔物問題から村の畑の手伝いまで、「国民の問題全て解決!」をスローガンに活動している国直営の大型ギルドだ。
「なるほど。その依頼、俺が受ける。」
「かしこまりました。ではこちらにサインを。」
指された誓約書にサラサラと名前を書く。
これは万が一依頼をこなす間、魔道士に何かあった場合、規定期間から1週間が経った場合ギルドは一切の責任と支援を送らないという内容だ。
どのギルドにもある、恒例行事
「受理致しました。依頼主はノルド製薬会社社長アーノルド・アーノルン。指定ポイントは同会社の本社屋にて。」
「ノルド製薬…?」
そこまで聞いて、一つ疑問が浮かんだ。
「そこの会社、お抱えの魔道士がいなかったか?そいつは動かないのか?」
「さぁ…ギルドにはそこまでの情報は渡されておらず…。申し訳ありません。」
「いや、こちらこそすまん。ありがとう。」
「では、世界樹のご加護のあらんことを。」
「あぁ。」
ノルド製薬会社。名前の通りノルドベルムが国営している製薬会社で、この国の薬品の流通を一手に担っている。今回の依頼はおおかた何かしらの建設予定地にハイオークが滞在している、といった理由だろう。
だが、その程度の問題であれば先程アサギが訪ねたお抱えの魔導士「ティアハルテ・アーノルン」の実力であれば朝飯前のはず。
何故かギルドに依頼を送り、何故かティアハルテは対応していない。
どこか不安を感じながら、アサギはノルド製薬本社へと歩みを進めた。




