第四十五話 島娘!!
ここは《島海学園》。
海に沈んだ世界で、島娘たちが暮らし、人々を守るために戦う海上拠点だ。
五十年前。
世界を沈めた災厄。
深海王。
その正体は、失踪した最強の島娘・樺太島を核として利用して生まれた怪物だった。
そして今。
島々の魂の願いを受けた九州の島核が、かつてない輝きを放っていた。
「九州……!」
西表島が目を丸くする。
佐渡島も驚きで声を失っている。
九州の身体を包む光。
それは一つの島核の輝きではなかった。
九州。
北海道。
本州。
四国。
沖縄。
そして沈んでいった無数の島々。
その願いが、彼女の中へ集まっていく。
「これ……みんなの……」
九州の瞳から涙が零れる。
『お願い』
『守って』
『未来を』
優しい声。
暖かい想い。
その全てが九州の中に流れ込む。
ドォォォォォォ!!
空と海を繋ぐような巨大な光の柱。
深海王が恐怖に震える。
キィィィィィ!!
その時。
北四島が微笑んだ。
「そうか」
「君なんだね」
直島も静かに九州を見る。
「……綺麗」
九州の背中。
そこに無数の光が羽のように広がる。
そして。
彼女の島核。
それが虹色に輝いた。
「みんな」
「力を貸して」
「私……守りたい」
「この海も」
「島海学園も」
「みんなの笑顔も!」
「だから!」
「終わらせる!」
その瞬間。
全ての島娘の島核が共鳴した。
沖縄本島。
対馬。
種子島。
西表島。
佐渡島。
屋久島。
奄美大島。
淡路島。
壱岐島。
礼文島。
小豆島。
隠岐島。
与論島。
直島。
北四島。
そして。
島海学園にいる全ての島娘。
「九州!」
「行って!」
「やっちゃえー!」
「頑張って!」
みんなの声。
九州は笑った。
「うん!」
バシャァァァァッ!!
海面を駆ける。
いや。
飛んでいた。
一瞬で深海王の目前。
「!」
深海王が咆哮する。
無数の触腕。
漆黒の光。
津波。
全てが九州を襲う。
だが。
「負けない!」
虹色の光。
その輝きが全てを消し去る。
「すごい……」
西表島が目を輝かせる。
「九州ちゃん……」
佐渡島も涙ぐむ。
そして。
深海王の胸。
赤黒い核。
その奥。
閉じ込められている樺太島。
「助ける!」
九州が手を伸ばす。
すると。
樺太島が優しく笑った。
『ありがとう』
『小さな後輩さん』
『でも』
『もう大丈夫』
「え?」
その時。
樺太島の身体から光が溢れ始める。
北四島が目を見開く。
「お姉ちゃん!?」
『四島ちゃん』
『ごめんね』
『寂しい思いさせちゃった』
北四島の目から涙が零れる。
「嫌だ!」
「やっと会えたのに!」
『ふふ』
『泣き虫は変わらないね』
『でも』
『立派になった』
『ありがとう』
「やだ……」
『これで終わらせよう』
樺太島が優しく微笑む。
そして。
彼女は九州を見る。
『お願い』
『未来を守って』
九州は涙を流しながら頷いた。
「はい!」
樺太島の身体が光になる。
その光は九州の手へ。
そして。
ドォォォォォォォ!!
深海王の核。
そこから黒い闇が消えていく。
キィィィィィィィ!!
深海王が苦しみ始める。
巨大な身体。
触腕。
結晶。
全てが崩壊していく。
そして。
最後。
深海王の赤い瞳。
そこから一粒の涙が流れた。
まるで。
長い悪夢から解放されたように。
キィ……
静かな鳴き声。
そして。
深海王は光となって夜空へ消えていった。
静寂。
荒れていた海が穏やかになる。
雲が晴れる。
そして。
朝日。
五十年ぶりの平和。
誰も言葉を失っていた。
やがて。
西表島が飛びつく。
「九州ちゃーん!」
「わわっ!」
佐渡島も泣きながら抱きつく。
「よかったぁ……」
沖縄本島が笑う。
「勝ったな」
対馬も笑った。
「終わったか」
種子島も安堵する。
そして。
直島。
「お疲れ」
小さな笑顔。
九州も笑った。
「直島先輩!」
北四島は朝日を見上げていた。
その隣。
誰もいない。
けれど。
「ありがとう」
彼女は優しく微笑む。
きっと。
樺太島も笑っている。
それから数か月後。
島海学園。
今日も水の廊下を島娘たちが走っていく。
授業。
訓練。
笑い声。
騒がしい日常。
「九州ちゃーん!」
「早く早くー!」
「ま、待ってよ西表島ちゃん!」
「ふふ」
佐渡島も笑う。
教室では新しい島娘たちが配属されてきていた。
終わったわけではない。
海は広い。
まだ見ぬ島々もある。
新しい出会いも待っている。
校舎の上。
直島と北四島が海を眺めていた。
「平和だね」
「うん」
「悪くない」
朝日が海を照らす。
そして。
島海学園の少女たちの賑やかな声が響く。
これは。
世界を守る少女たちの物語。
島の魂を宿した少女たちの物語。
笑って。
泣いて。
戦って。
支え合って。
今日も海を駆けていく。
――島娘!!
~キラキラ波しぶき! みんなで守る、私たちの海!~
終わり。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




